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無能と呼ばれた俺、4つの力を得る  作者: 松村道彦
第5章:それぞれの戦場で

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第247話:通信

 

「はぁッ……はぁッ……! ふー……な、なんとか逃げられ……あっ」


 逃げるのに必死で今まで目に入らなかったが、少し落ち着いた瞬間にそれが見えた。

 白く荘厳な……かつて見たままのギリシア城が。


「よかった……直ったんだな」


 あの城はギリシアの象徴だ。

 あれがあれば、きっとギリシアの人達も……。


「……よし、急ごう」


 そのまま走り続けてさっきの場所まで戻ると、レヴィがじっと城を見つめていた。

 そこにマルテの姿はなく、レヴィの手にはエクスカリバーが握られている。

 どうやら魔力を使い果たし、つるぎの姿に戻ってしまったようだ。


「あ、ロード様!」


 俺が声を掛けるよりも先に、レヴィがこちらに気付いて手を振っていた。

 なんか嬉しい。


「レヴィ、お待たせ。城が戻ってよかった」


「ええ、本当に……あ、エクスカリバー様は魔力を使い果たしてしまったようです。どうぞ」


「ん、ありがとう」


 彼女から聖剣を受け取り手帳に戻す。

 また後で力を貸してもらおう。


「しかし……みんな集まってきちゃったな」


 周りを見ると、大勢の人達が城を囲うようにしてそれを見上げていた。


「ふふっ……そうですね。でも、皆様が嬉しそうでよかったです」


「……だな。そういやマルテは?」


「まだ働くそうです。褒められたのが嬉しかったご様子で、かなり張り切っておられました」


「そっか……助かるな。あ、実はさっきスパルタクスさんが来てさ、なんかフリードリッヒ様が呼んでいるらしいんだ。レヴィも一緒に来てくれないか?」


「あ、はい。かしこまりました」


「ん、じゃあ行こう」



 ――――――――――――――――――――――



「失礼します」


「失礼致します」


「お、ロード、レヴィ。いきなり呼びつけてすまなかったな。まぁ掛けてくれ」


 今現在仮の本部となっているは、かつてのギリシア王立図書館。

 ここは町の中心部から少し離れた位置にあり、ギリギリ崩壊を逃れていた。

 俺達はフリードリッヒ様に促され、部屋の中央にあるソファーへと腰掛ける。


「まずは礼を言わねばならんな。窓から見ていたよ……ギリシア城が元の姿を取り戻していくのを。ありがとう」


「いえ、少しでもお役に立てていればよいのですが……」


「フッ……君らには感謝してもしきれん。このセリフも聞き飽きたかとは思うがね。だが、皆同じ気持ちだ」


「そう言っていただけて嬉しいです。あの、それでご用件は?」


「うむ。君らはこれからどうするのかと思ってな。君らには君らでやるべきことがあるだろうし、あまり縛り付けたくはないのだ。ギリシアなら大丈夫。必ず元の姿に……いや、それ以上にしてみせる。だから、君らは君らの旅を続けて構わないのだよ?」


「そういうことでしたか……お気持ちは嬉しいのですが、出来ればもう少しギリシアにいさせて下さい。確かにやるべきことはありますが、これはそれと同じくらい大切なことですから」


 俺の手が届く限り、やれることは全てやる。

 そう決めたから。


「……そうか。なら、無理のない範囲でお願いするとしよう。旅立つ時は言ってくれ。我らはいつでも……笑顔で君達を送り出そう」


「ありがとうございます……では、やれる限りのことをやらせてもらいます」


「うむ……あ、それともう一つ。城の瓦礫の中から発見された通信魔石だが、あれは元々冒険者ギルドにあったものだった。偶然あそこにあったというのは……やはりどう考えても不自然だろう」


 城の残骸から見つかったという通信魔石。

 爆風か何かで城近くに転がったという可能性もあったが、それ以外に冒険者ギルドの残骸が城付近にない以上、誰かによって城へと運ばれたと考えた方が自然だろう。


「で、持ち帰って調べた結果、最後の通信は北の方角からである、ということだけは分かった」


「北……ですか?」


「ああ。そして……その通信はギリシアが崩壊した後に行われている」


「え? じゃあ……」


「そうだ。使用したのは竜族ということになる」


 つまり、相手は――――


「ティタノマキアは……北にいる……」


「その可能性が高い。まず君に話した。これからオーランドとアディード様には伝えるつもりだ。だが、下手に探りを入れないでほしい。それに、これはあくまで可能性の話だ。それを忘れないように」


「……分かりました。今はまだ胸に秘めておきます。俺達だけで探ったりもしません」


「うむ。もしやるなら万全を期すべきだ。確実にな」


「はい……」


 初めて触れたかもしれないティタノマキアの尻尾。

 けど、まだ駄目だ。

 無意味に突っ走ることだけは避けなければならない。

 俺が1人でも奴らを捕まえられれば……。


「ん、入れ」


「失礼致します!」


 その時扉がノックされ、フリードリッヒ様がそれに応えると、扉越しに聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 そうして現れたのは……。


「あ、やはりジル様でしたか」


「こんにちは」


「ああ。2人とも元気そうだな。あ、申し訳ありません陛下!」


「よい。で、何用だ?」


「はっ! 実は、2人に通信が入っておりまして、お話中に失礼かとも思いましたが……」


「む、そうか。なら、丁度話が終わったところだ。早く行くがよい。ではなロード、レヴィ。また会おう」


「はい。では、失礼します陛下」


「失礼致します」


 俺達はジルさんに続いて部屋を後にする。

 それにしても俺達に通信か……いったい誰からだろう?

 ここにいることを知ってる人は限られてるし……。


「ジル様、因みにどなた様からでしょうか?」


 レヴィが代わりに聞いてくれていた。

 さすが。


「ああ。イストの冒険者ギルドからだ」


「イストの……じゃあ、ガガンさんか」


「でしょうね。ですが、1週間前に連絡は入れましたし、また何かあったんですかね?」


 戦が終わった後、ガガンさんにはすぐ連絡を入れてある。

 記憶を失ったことなんかも一応話したし、これからどうするかも伝えた筈だけど……。


「要件はまだ聞いていないそうだが、慌てた様子ではなかったらしい」


「そうですか……あれ? そういえばなんでジルさんが? というか、通信魔石ってここにあるんですか?」


「ああ……冒険者ギルドは壊れてしまったから、政府と同じくここを間借りしているのだ。で、たまたま2人に通信が入ったのを聞いたのだが、お話中の陛下の元へ部下を行かせるのは酷だと思ってな。そこで私が出向いた訳だ」


 なるほど。

 やっぱり優しい人だな。

 最初は怖かったけど。


「こっちだ。おい、連れてきたぞ」


「あ! ジル様ありがとうございます! ささ、こちらへ!」


 受付嬢の人に案内され、魔石がある部屋へと通される。

 壁一面にぎっしりと本が並べられたその部屋の中央に、大きな魔石が輝きを放ちながら浮かんでいた。


「お待たせ致しましたガガン様! お2人に今代わりますので! ささ、どうぞ!」


「ありがとうございます。あの、ガガンさん?」


『おう。あ、この間は連絡ありがとな。安心したぜ』


「あ、いえいえ。ご心配をおかけしましたから……それで、何かありました?」


『ああ。お前らに伝言を預かってる』


「……伝言? 誰からですか?」


『ティアとアスナからだ』


 えっ!?


「レ、レヴィ!」


「ええ! ガガン様レヴィです! そ、それで2人は今どこに!?」


『お、落ち着けって……とりあえず、連絡があったのは昨日だ。んで、録音したもんをそのまま流すからよ。それを聞いてくれや。じゃ、いくぜ?』


「は、はい!」


『ん? も、もういいのかなこれ……ロ、ロードさん! レヴィ! ティアです! お久しぶりです!』


『ロード、レヴィ? アスナだよ。久しぶり』


「ティア、アスナ……」


 当然気にはなっていたが、連絡も取れないしどうしようもなかった。

 とりあえず声を聞く限りは元気そうだ。


『今私達は北の方にいます! えっと……寒いです!』


『はは……緊張してるのは分かるけど、それじゃ伝わらないってば。私達ね、今はコールドシューズって町にいるの。無事だから心配しないで大丈夫。強い味方もいるし』


『そうそう! とにかく無事なんで! やることやったら会いに行きます!』


『まだちょっとかかりそうなんだ。今は北の町を転々としている感じかな。もうちょっとで見つかりそうなんだけどね。ただ、助けてもらったお礼もしなきゃ……え? ああ、はいはい。分かりました。じゃ、そろそろ行かなきゃ。またね……ロード、レヴィ』


『も、もう終わりかぁ……じゃ、ロードさん、レヴィ……また!』


『ん、以上だ』


「え? も、もう終わりですか?」


『ああ。なんか急いでるみたいだったな』


「ったく……こっちの気も知らないで……」


「ふふっ……ですね。でも、元気そうでよかったです。それにしても何故2人は北に……ガガン様は何か聞かれてますか?」


『いや、今の内容と大して変わらないな。とにかくやることがあって北にいるってのと、2人の他に旅の仲間がいるってことしか分からん。あんまり話したくないような感じはしたな。多分、余計な心配をかけたくないんだろうよ。もう十分心配なんだがな』


 確かに。


「そうですか……まぁ、声が聞けただけよかったかな。ガガンさん、ありがとうございました」


『ああ。んじゃ、お前らも忙しいだろうしもう切るぜ。またな!』


「ガガンさんまた!」


「失礼致します。ガガン様」


 通信が切れ、俺達は受付嬢の人に礼を言ってからジルさんと共に部屋を後にする。

 うーん……2人が北に行った理由はなんなんだろう?

 それに強い味方か……全く分からん。


「レヴィ、コールドシューズってどのへんか分かる?」


「申し訳ありません……私も初めて聞きました」


「知ってるぞ。首都ニーベルグから真っ直ぐ北に行くとある町だ」


「ジルさん……行ったことあるんですか?」


「いや、たまたま知っているだけだ。以前はニーベルグとティーターンを繋ぐ町だったのだが、もっといいルートが開拓されてな。その所為で寂れた田舎町になってしまった……と、何かで読んだ覚えがある」


「うーん……なんでそんな町に……」


 しかも町から町を転々としてるって言ってたし、もう少しで見つかりそうとも言ってたな。

 いったい2人は……何を探してるんだ?


「さぁな……あ、すまん。私はこれで」


「あ、お忙しいのにすいません。ありがとうございました」


「ジル様、失礼致します。グラウディ様にもよろしくお伝え下さい」


「うむ……またな」


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