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病弱令嬢のスキルクラフト!  作者: 鏡石渚
第3章

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44 生徒会長選挙①

 生徒会長選挙一日目。この日は手探りの一日だった。


 わたしと手伝ってくれる補佐の三人+一匹で、時間を見つけては選挙演説を行なった。とにかく露出を増やし知ってもらう作戦だ。

 掲げるマニフェストは、学園変革。わたし(・・・)が変えるのではなく、みんな(・・・)で変えるというのがポイントである。

 選挙なんて初めてだし、補佐のみんなも馴染みがない。カヌレたちも、学園の生徒たちだってそうだ。

 みんな手探りの中、選挙運動は進行した。


 演説に集まってくれたのは予想通り平民ばかり。

 物珍しさや黒猫に惹かれ貴族が立ち寄ることもあったが、それでも数人程度だった。

 不平等ルールを考えるともっと貴族の注目を集めないと。とはいえ平民のみんなも疎かにはできない。

 数字で言えば、全生徒のうち九割近くの票を集めなければならない。どう考えても無茶だ。

 しかしこの劣勢からわたしが勝てば、カヌレは全生徒の前で敗北を認めざるを得ない。こんなルールをわざわざ飲んであげたのはあいつを完璧に負かすため。

 今後どうなるかはわからないが、とっておきの秘策を用意してある。成功すればきっとかなりの支持を集められるはずだ。

 この選挙、絶対に勝つ!


 選挙二日目。わたしたちに光明が差した。


 どうやらカヌレたちは選挙運動をしていないらしい。

 貴族がカヌレに投票したら五票になるし、貴族票は勝手に集まる。何もしなくても勝てると踏んだのだろう。

 カヌレが動かないなら好都合。残り五日間、存分に支持者を増やさせていただく。


 この日、クレープちゃんの発案で馬車を選挙カーに見立て、学園の敷地内で遊説を行なった。

 貴族に注目されるよう模索した結果、とにかく目立ちそうな馬車演説に辿り着いたのだ。

 これがバカ受けだった。平民に加え、貴族たちも大勢集まり、効果抜群だ。


 ただ、貴族が集まった理由は「面白いから」であり、わたしの言葉は響いていなかった。

 とにかく興味を持ってもらえただけありがたいと思い、話を聞いてもらうのは明日からの課題として片付けようとしていたところ、貴族の一人が馬車に乗り込んできた。

 その子の名はマカロン・ラヴィ。シューに婚姻の決闘を申し込んでいるうちの一人だ。

 聴衆に見守られる中、わたしとマカロンさんの舌戦が繰り広げられた。


 彼女はわたしの主張を認めた上で、学園変革の必要性に疑問を呈した。

 マカロンさんの発言に平民たちは非難轟々でまさに学園の現状がよく表れていた。改革を望む平民に対し、今の在り方に何も感じない貴族の図そのものだ。

 しかし貴族側の意見もわかる。自分たちに損失がないのであればわざわざ変革派に乗る必要はなく、今のまま現政権を応援した方がいい。

 貴族を取り込む政策にする案もあったのだが、カヌレを超える政策とはつまり今以上の暗黒世界(ディストピア)を作るということ。

 そんなの本末転倒だ、なんのために会長を目指すのかわからなくなってくる。

 貴族に媚びたり、耳障りのいい言葉を唱える必要はない。わたしは地に足をつけて、学園を変えるんだ。


 議論は30分ほど続いた。意外なことに、聴衆はほとんどその場に残り、平民側と貴族側の考えの対立の行末に注目していた。

 結果としてはわたしの完敗だった。「学園卒業後のド・ボルドー家との繋がりを捨ててまで平民を支持する利点」を挙げられず、苦し紛れの論点ずらしで誤魔化すしかなかったのだ。

 しかしマカロンさんはわたしを支持すると表明してくれた。さっきまでの議論なんだったの。

 支持する理由は「名前を呼んでくれたから」だそうだ。

 貴族の考えはよくわからないが、貴族を味方につける方法はなんとなく見えてきた。

 この調子で明日も馬車演説を続けていこう。


 三日目。最悪の事件が起きた。


 この日も演説には庶民、貴族関係なく大勢が集まってくれた。

 わたしは学園変革とともに、学園生活を楽しむことの重要性を訴えた。

 将来の安泰を捨ててでも、今しかない学園生活を最大限に楽しむ。

 一見愚かに思えるが、卒業したら二度と手に入らない、この時期にだけ味わえる思い出もたくさんあるはずだ。

 わたしに賛同してくれる貴族も増えてきた。


 しかしこの日、平民による暴動が起きた。

 複数人で貴族を襲ったらしい。

 すぐさま出しゃばってきた生徒会は、暴動を起こした平民たちを決闘で裁こうと話を進めていく。既に決闘場まで用意され、あまりにも対応が早かった。

 爆破事件の時と同じだ。こちらが生徒会側の策略を疑う隙も与えず、決闘が始まろうとしていた。


 そこに待ったをかけたのは、シューだった。

 色々あった末、決闘は翌日行うことになり、平民代表としてシューが戦うことに。

 この決闘の結果が、今回の選挙を大きく左右するものになりそうだ。

 どうか怪我することなく勝ってほしい。


 四日目。手応えはないながら頑張った一日だった。


 昨日を境に、生徒会側も選挙運動に本腰を入れたようだ。

 と言っても演説なんかしないし下手な自論も唱えない、やることといえば貴族票固めとわたしたちの妨害活動だ。

 規約違反にはならない範囲での妨害。おかげで昨日まで集まってくれていた聴衆はほとんどいなくなってしまった。


 わたしたちはすぐに対策を取った。

 去った聴衆はいずれ戻ってきてくれると信じ、とりあえず今いる数人の聴衆を大事にする方針だ。

 人数が少ないからこそ個別に話すことができたのはよかった。

 応援してくれる人たちの声に耳を傾ける。会長就任後もこの方針で進めていきたいものだ。


 注目の決闘はよくわからないまま終わった。

 まあ決闘はただの見せしめで意味なんてなかったんだろうな。シューにはゆっくり休んでもらおう。

 そして、裏で生徒会がこそこそ動き回っているらしい。

 勝利への活路が見えてきたかと思ったのに、ここにきて暗雲が立ち込めてきた。

 選挙運動は残り二日。もう生徒会の好きにはさせない。


 五日目。生徒がどちらを支持するのか、はっきりと二分した。


 この日、生徒会側は貴族票を盤石なものとするため貴族だけの音楽会を開いた。

 オペラさんって人の歌を聴くため、貴族たちが不夜城に大集合するらしい。

 対抗策として同時刻にわたしたちも企画を催し貴族を集めようと画策するも、すぐに案は出てこない。

 そもそも後手に回ってしまった時点で負けなのだ。今日のところは諦め明日にすべてを賭けよう。


 しかし不思議なことが起きた。

 シャルロットの懇願で目的不明のまま始まった企画は、危険ではあったがなんとか成功を収めた。

 空に咲く大輪の花に、プロフィトロールの影が見えた。何か裏で働いてくれてたのかな。

 生徒会側につく貴族の票は固い。だがわたしたちはそれ以外の貴族からの信頼を得ることができた。

 明日はいよいよ最後の日。例の秘策で生徒会を応援する貴族の心も奪ってみせる!

 

 六日目。選挙運動最終日。


 秘策! 出張パティスリー、開店!

 貴族は甘いお菓子好きでしょ、という浅い魂胆から始まった胃袋ゲット作戦は大成功!

 とはいえ、準備を始めたのは選挙よりもずっと前。

 日傘の少女とフレジエさんのために苺パーティを開いたあの頃から、いつか出張パティスリーをしてみたいと思い仕入れを済ませていた。

 渾身の策が大盛況を呼んだのだ。


 店には生徒会のショコラちゃんが来てくれた。

 相変わらずかわいくてニヤニヤしながら話してしまった。気持ち悪がられてないことを祈ろう。

 ショコラちゃんには生徒会の皆さんにお菓子を届けてもらい、シューのパティシエパワーを存分に堪能してもらった。


 どちらに軍配が上がるかはまったく予想がつかない。ただ祈ることしかできない。

 それでもできることはすべてやりきったと、胸を張って言える。

 一緒に戦ってくれる仲間がいたからここまで来れた。

 シュー、シャルロット、クレープちゃん、プロフィトロール、ダリオル。他にもいろんな人がわたしに力を貸してくれた。

 選挙の行方がどう転んでも、わたしは後悔しない。

 でもやっぱり勝ちたい。勝ってカヌレを悔しがらせたい。

 勝って、カヌレに謝罪させたい。

 それだけが、わたしの動機だから。


 そして、投票日を迎えた──。

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