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病弱令嬢のスキルクラフト!  作者: 鏡石渚
第3章

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37 爆弾魔に気をつけろ〈事件編〉

「学園爆破事件?」

「ああ。今週に入ってから、授業中に謎の爆発が起きてるんだよ」


 ある日の昼休み、中庭。

 わたしとシューとシャルロットでお弁当を食べている時に、シューは一般クラスで起きた事件について語った。

 その物々しい名前から最初はテロや革命かと身構えたが、聞いてみると七不思議や怪奇現象の類に思えた。


「爆発は一日に一回。時間は日によってまちまちだが、起きない日もある。と言っても小規模なもので怪我人も出てないし、教師や生徒会に相談しても取り合ってくれないから俺らが騒ぐのもなーってところだ」

「でも爆発でしょ? 小さくても危ないんじゃ」

「まあな。ただ、爆破が起こるのが教室の外なんだよ」

「外?」

「授業中、窓の外で『ボンッ』ってな。あー、事件って言ったのは大袈裟だったか。まあこっちのクラスではそんな出来事があったって話だ、気にしないでくれ」


 気にするなと言われ、はいそうですかと納得できる話ではなかった。


「いやいや、今は被害がないだけでいずれ本当に事件になるかもしれないじゃん! シューもクラスの子も危ないよ!」

「けどよ、教師も生徒会も動く気ないってのに、誰の力を借りればいいんだよ」

「わたしたちで解決するんだよ!」

「はあ!? そんなことできるのかよ」

「うん、たぶん! わたしとシューならどんな困難でも乗り越えられる! それに今はシャルロットもいる!」

「え、私も……?」

「勿論! みんなで爆破事件の謎を解き明かそう!」

「パティスリエから期待されている……! うん、頑張るわ!」

「あーわかったよ……。どこまでもついていってやる」




 その日の放課後、わたしとシャルロットは一般クラスにやってきた。


「お、パティスリエちゃん! 何か用かい?」

「ちょっと爆破事件について調べててね」

「ほんとに!? 特に被害とかはないけどみんな困ってたんだよねー。パティスリエなら解決できるって期待してるよ!」

「ありがと! シュー、準備できてる?」

「ああ、ばっちりだ」


 シューには、爆破が起き始めてから今日に至るまで、何時頃に爆破が起きていたのかを調べておいてもらった。

 わたしは全クラスの時間割を調べ、事件発生時間との関連を表にまとめていく。



***



『月曜日:午前11時頃』

「一般クラス」

一年:宗教学 スーピール・ド・ノンヌ

二年:歴史 ルリジューズ

「特別クラス」

一年一組:魔法学基礎 ダリオル

一年二組:魔法実技 ブラン・マンジェ

二年一組:魔法学応用 クイニーアマン

二年二組:空き時間


『火曜日:午後2時頃』

「一般クラス」

一年:歴史 ルリジューズ

二年:国語 クイニーアマン

「特別クラス」

一年一組:自然学 ヴィジタンディーヌ

一年二組:コミュニケーション魔法 ダリオル

二年一組:空き時間

二年二組:魔法実技 ブラン・マンジェ


『木曜日:午前10時頃』

「一般クラス」

一年:自然学 ヴィジタンディーヌ

二年:魔法学基礎 ダリオル

「特別クラス」

一年一組:空き時間

一年二組:貴族作法 ブラン・マンジェ

二年一組:国語 クイニーアマン

二年二組:空き時間


『土曜日:午前9時半頃』

「一般クラス」

一年:国語 クイニーアマン

二年:魔法実技 ブラン・マンジェ

「特別クラス」

一年一組:コミュニケーション魔法 ダリオル

一年二組:空き時間

二年一組:歴史 ルリジューズ

二年二組:計算 スーピール・ド・ノンヌ



***



「時間はバラバラ、水曜日と金曜日は何もなし……」

「爆破が起きた時、一般クラスは一年二年とも授業中。先生方も同様にアリバイありだね」

「犯人は特別クラスの誰かなのかしら……? でもずっと空き時間のクラスはないし……」

「いや待て、外部の人間って可能性もあるんじゃないか」

「それはないかな。外部の犯行なら学園として黙ってるわけないし、特定のクラスの授業教室周辺だけ爆破するのは中の人間にしかできないよ」

「確かにそうだな……」

「あと時間割を調べつつ聴き込みしたんだけど、どうやら爆破を目撃してる生徒は一般クラスの一年生だけらしい」

「はあ? じゃあなんだ、このクラスに恨みを持ってる奴の嫌がらせってことか?」

「うーん、その辺のこともクラスの子に話を聞きたかったけど……放課後だし、あんまり残ってないね」

「ま、聞ける分だけ聞こうぜ」


 シャルロットは時間割と睨めっこしていたので、わたしとシューで教室にいた子に事情聴取していく。


「話といってもねぇ、わたしらも別に有益なことは何も知らないんだよねー」

「この子なんて、ほとんどの時間居眠りしてるから目撃すらしてないし。ねえ、プディング?」

「うん、爆破が目覚ましになるからほんと助かるよ〜。ここ窓際の席だからついうとうとしちゃって……。午後の魔法実技もボロボロだし……」

「まったく、夜中何してんだよ。しっかり寝ろよなー」

「んー、じゃあさ、誰か貴族から恨みを買ってたとかそういう話はない?」

「いやいや、恨みこそすれど恨まれるいわれはないよ!」

「強いて言うなら、シューが生徒会と対立してるからそれ関連の嫌がらせがあってもおかしくはないかな」


 その後、残っていた生徒に聴き込みしたが特に収穫なしで終わった。

 今ある情報だけを結びつけると、シューへの怨恨による犯行としか思えない。

 しかしシャルロットはわたしの推測を否定した。


「……私には、シューを狙った犯行とは思えないの」

「え、どうして?」

「貴族の嫌がらせならもっと陰湿で悪質だし、発覚を恐れるから大勢を巻き込んだりしないはず。よくあるのは衣装を破いたり、持ち物の中に虫や鼠の死骸を入れたりとか……ね。動機はわからないけれど、少なくとも個人を狙ったものではないと思うわ」


 シャルロットの目からは光が消えていた。

 まるで実体験だ。貴族って大変だなあ……。


「それより見て、この時間割を。爆破が起きた時間、二年二組はほとんど空き時間なの!」

「つまり二年二組の誰かが犯人ってか。でも火曜と土曜は授業入ってるぞ」

「犯人は複数いて、他のクラスの貴族が共犯だった……とか?」

「ううん、二年二組なら授業があっても関係ないわ。まず火曜日、魔法実技は外に出るから教室の場所さえ把握していれば犯行は可能よね」

「確かに……! それに実技だから、魔法を使っていても怪しまれない!」

「土曜日は……これは検証が必要だけれど、窓際の席からなら外に向けて魔法を撃てたんじゃないかしら」

「すごい、シャルロット! 天才! 名探偵! 絶対それだよ!」

「パティスリエが誉めてくれた……! えへ、えへ……」

「なんだこいつ……」


 だが授業教室の位置関係を調べたところ、土曜日は二年二組の生徒には犯行が不可能だったことがわかった。


「違ったかー。まあそもそも授業をサボったり休んでる人もいるし、複数犯の線もあるし、貴族の使用人がやった可能性もあるしで、アリバイで絞っていくのは骨が折れるね」

「……貴族の二年って言ったら生徒会なんだよな。やっぱ俺を狙ってるんだとしたら辻褄が合うよな……」

「ねえパティスリエ。シューは生徒会と何かあったの?」

「シャルロットは知らないのか。この前ちょっと喧嘩してな」

「うんうん。あの時のシューかっこよかったよねー!」

「お、おい……。あんま不用意に人を誉めるな……!」

「…………へー」


 シャルロットの目がまたしても暗くなってしまった。何かトラウマでも思い出したのだろうか。

 結局、その後は捜査も推理も進捗なく、わたしたちは諦めて寮に戻った。

 まあ誰も怪我してないし、ゆっくり調査していけばいいか。

 ……そう考えていた矢先。

 楽観を嘲笑うかのように、事件は起きた──。




「本日午前11時頃、生徒会書記ショコラ・アリストロシュが学園内で魔法による攻撃を受けた! 生徒会権限を発動し、全生徒への審問を行う! 本日中に審問を受けなかった者は有罪だ! 以上!」


 ついに出てしまった被害。そして動き出した生徒会。

 放課後には、審問を受けようと生徒たちの行列が長廊下に並んだ。

 30分ほど待って、ようやくわたしの順番がきた。


「あ、イルさん。ごきげんよー」

「その仮面、貴様はっ……! ふんっ、まあいい。審問を始める」


 薄暗い部屋に通され、イルと対面で席についた。

 不気味な空間だ。儀式に使いそうな魔道具たちが蝋燭に照らされている。


「これから『Oui(はい)』か『Non(いいえ)』で答えられる質問をする。まずこの文言を読み上げろ」

「……我、神に誓い真実を唱える」

「よろしい、では審問を始める。貴様は学園爆破事件の犯人か?」

Non(いいえ)

「事件の関係者か?」

「捜査はしてるけど……Non(いいえ)

「……貴様は何か、秘密を隠している?」

「……Non(いいえ)

「おっと、嘘をついたな」


 ついガストリエちゃんのことを考えてしまい、わたしの反応は嘘だと判定されてしまった。

 イルはにんまりと口角を上げ、机に乗り出した。


「貴様の秘密とは、その仮面に関わるものか!?」

「……事件には関係ありません」

Oui(はい)Non(いいえ)で答えろ!」

「……Non(いいえ)

「嘘だな! 仮面をつけている理由は誰かから正体を隠すためか!?」

「…………Non(いいえ)

「この嘘吐きめ! 貴様が正体を隠したい相手は──」

「愚かしいぞ、イル・フロッタント」


 突如、部屋の扉が開け放たれた。暗い室内に光が満ちる。

 その人物はイルの眼前に迫り、首元に剣先を当てるような圧を放っていた。


「ガレット王子……!?」

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