ロドニー包囲網
エルネストとの信頼関係。
それは主従の関係にあるなら必要なものだ。
政治は王だけでは回らない。
だから臣下がいる。
「でも、あれでよろしかったのでしょうか。アンデル小公爵様は、メルローサ様の兄上でしょう?仲良くなさった方が殿下の為にも良いのでは」
アンリエッタがそう言うと、ロドニーははあ、と大きな溜息を吐いた。
「だからだよ。王子の婚約者の兄だからと言って出過ぎた真似をするのは感心しない」
「そういうものなのですか」
確かに、婚家だからとアンデル公爵側が王宮内を仕切るのは良くないだろう。
王子妃の印象を悪くする。
「アンリエッタは、僕の学習の手伝いをすることは面倒なことだと思っている?」
「いいえ?」
即答したのでロドニーは安堵した。
本心でなければ躊躇いが含まれるだろうと思ったからだ。
「望んでもできないような経験をさせてもらっていると思っていますわ。それは何物にも代えがたい事ですから、むしろ感謝しています」
「そうか」
そう思ってくれるのならありがたい。
「ですから、私はメルローサ様の提唱される学び舎について、是非とも実現していただきたいと思っているのですわ」
「学び舎?」
「そうです。優秀な講師の先生が、たった一人、二人しか教える機会がないのは惜しい事だと思いませんか。知識が多くの者に届けられることが、ひいては国の強化や発展に繋がると思っているのです」
「メルローサが…」
「流石は殿下の隣に立たれるに相応しい方だと私も思っているのです。実現の際には、我がエゼルキナ侯爵家も協力をしていくことで話が纏まっておりますの」
ロドニーは言葉を失った。
メルローサを切るどころか、周囲が外堀を埋めている。
自分はどうすればいい。
言葉と同時に、ロドニーは自分の道を見失っていた。
だからこそアンリエッタの王宮での居場所を奪われるべきではないと確信も持てた。
学習の後に、メルローサ付きの侍女がアンリエッタを待っていた。
「アンデル公爵令嬢がエゼルキナ侯爵令嬢との面会をご希望です」
セルジュが居たのだから、メルローサも登城しているのだろう。
ひょっとしてと思って持ってきたブローチが渡せる。
しかも王宮の中で。
自分とメルローサの仲の良さを知って貰えたら、それだけでもメルローサの味方が増えるだろう。
「こちらでございます」
通された客間には、メルローサが待っていた。
「お待ちしてましたわ、アンリエッタ様」
アンリエッタが礼を取って入室すると、メルローサが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「先程私の兄がこちらに寄られていましたの。兄が何やらアンリエッタ様に失礼を働いたようで、少し苦言を呈していたところですわ」
「然様でしたか。小公爵様は?」
「早々に邸に追い返しました」
儚げな容姿に似合わず、珍しく憤慨している様子だ。、
「まあ。小公爵様はメルローサ様をご心配なさっての事でしょう」
ううん、とメルローサは首を振る。
「父や兄がそんな風に私を心配することはありません。私はあくまでもアンデル公爵家の駒として見られているのですから」




