ー魔将最終話ー 『怨み愛』
任務を終えた僕は直ぐに魔王様へ報告に向かった。
あの後、同じ様に砦に強襲を仕掛け砦を崩した少々の抵抗があったがこちらの被害は無かった。
赤絨毯を歩き跪く。
「良い。戦功を報告せよ。」
「はっ!」
顔を上げ玉座に足を組み座る魔王様を見る。相手を見下すその鋭い眼孔は何故か優しく、相手を威圧する力は今日は何故か無かった。
僕は少しやりにくさを感じながら報告をした。
「ご命令通り敵の砦は全て破壊しました。我々の被害は砲が一つ錆びる被害が有りましたが、人的な被害は御座いません。」
「逃がした数は?」
「…船を一隻取り逃がしましたが、大破していましたので、沈むと判断したので追撃はしませんでした。」
事実を淡々と述べる。
「そうか、ならば良い。」
取り逃がした事に何かお咎めがあるかと思えば何事も無くスルーされ呆気にとられた。
「ライト・メア魔隊副兵長。」
「はっ!」
魔王様の声に気を引き締める。
「貴様に褒美を与えよう。」
「はっ!有難き幸せに御座います!」
魔王様がその指を僕に向け放った言葉は意外なものだった。
「貴様に敵砦を破壊した功績、更には一兵も傷付けず帰還した功績を称え二階級特進で、『魔将』の地位を与えよう。」
「お待ち下さい!グリム様!!」
思わず口を出してしまった。
「何だ?問題あるのか?」
魔王様の目付きが変わり威圧を掛けてくる。その威圧をぐっと堪え魔王様へ意見する。
「私の様な者が、魔将の地位を頂くなど恐れおおいです!」
「ほぅ…私は貴様の実力も含め言っているのだが?」
褒めてくれるのは大変喜ばしい事だが、『魔将』の地位は問題がある。『魔将』は魔王様のお側に常にいる親衛隊の様な者でもあり、魔王軍の最高峰に位置する存在だ。そんな物に魔王軍に入って5、6年の僕が入って良いわけが無い。
「それに、他の『魔将』様方に怒りを買ってしまうのでは無いでしょうか?」
「ほぅ…そう思うか。ならば聞いてみると良いぞ。……出てこい。」
魔王様が声を掛けると玉座の後ろからスッと一人、白銀の髪をした魔王軍のエース。『魔将』バーンロード・ハリケーン様。またの名を『疾風迅雷』のバーンロード。風の如く素早い速さで戦場を駆け抜けその後には雷が落ちた様な跡が残ると言われている。
その人がいる戦場では負け無し。一騎当千の最強の魔将の一人だ。
僕は慌てて胸に手を当て敬礼をする。
すると『疾風迅雷』と怖れられてる人とは思えないほどの笑顔で答えてくれた。
「何をやっているのだ?ライト・メア。俺とお前は同格なのだぞ?」
驚きで声も出ない。何を口に出せば良いのか…何故僕がこんなに認められているんだ!?……夢?そうか!これは夢か!!
「夢では無いぞ…『破壊王』ライト・メア……」
突然背後に気配を感じ振り返る。絨毯の敷かれた地面からスゥと頭が現れる黒いローブに黒い仮面。全身真っ黒の150センチの小柄の男。
…噂で聞いた事がある。魔王軍の中で秩序を乱した者は次の日の朝には姿を消している。それを行っているのが魔王様の影と呼ばれる存在。
「そうだ…俺が、『深淵』の魔将…ゴーラス・レディオンだ……」
さっきから…ずっと心を読まれている…
「勿論…読んでいるぞ…お前の考えは全て俺に伝わる……」
何て事だ…心を読むなんて……
「ん?…聞こえなくなりやがった…まさか、この短時間で耐性を付けやがったのか?…流石だな…」
え?耐性?
《報告。不明の魔力の侵入を感知した為排除しました。》
そう言う事か…
「アーハッハッハッ!!妾は賛成じゃよ、グリムよ…」
突如魔王様の隣に現れ魔王様の腕に抱き着く黒髪の絶世の美女。
魔王グリム様の正妻。『吸血姫』の魔将ファランド・イーナ・ティルシナ様。2人の間にはお子様はいらっしゃらない。
イーナ様は普段は『寝永姫城』と呼ばれる。人族領と面した大陸オースティードに城を構え普段は底にお住まいになっている筈だ。
「何故この様な所に。…と思っているだろう?」
沈黙していたグリム様が声を出す。
「全員貴様の『魔将』への進級を認め此処に来ているのだ。……それを裏切るのか?」
グリム様は悪戯顔で此方を向いた。
……こんな事が……ね…
フッと息を吐き呼吸を整える。
体制を変え再び魔王様の前で跪く。
「有難う御座います。」
「ふん。決まりだな。……只今より、ライト・メアは『魔将』ライト・メアへと昇格させる。」
「「「はっ!」」」
身体の中の魔力が沸騰する様な感覚が起こった。
《報告。新たな称号を入手しました。称号『魔将』を入手しました。これにより新たなスキルが解放されました。》
『魔将』…一体どんなものなんだ?
ステータス開示。
《ステータスを開示します。》
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name…ライト・メア
status…new『魔将』 『破滅魔法使い』 『創造魔法使い』 『破壊者』 『冷静』 『異世界の技能』『異世界の知恵』 『異世界の神託』 『神託』
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『魔将』とは?
《『魔将』…魔王より与えられし最高の力。ほぼ全ての異常態攻撃を無効化し威圧スキル『魔将軍の威圧』の使用が可能になります。》
成る程…シュミレーションしてみたがどうやら相手を怯ませるスキルらしい。この技があれば戦術を更に広げる事が出来るな。
「コホン!」
イーナ様がワザとらしい咳払いをし僕の思考を遮った。
「メアは考えると周りが見えなくなる様じゃのぅ…」
「考え過ぎは良く無いぞ。ライト・メアお前もこれからは更に多くの部下を引っ張らねばならんのだ。長考は部下を不安にさせるぞ。」
ハリケーン様が仰った。
「あ!そうじゃ!…グリムよ!妾、そなたの為に料理を作って参ったのじゃ!どうじゃ?食べるか?」
その時ハリケーン様が肩を叩き耳を貸せと言われたので耳を傾ける。
「…ファランド・イーナの料理は『吸血姫』のスキル『色欲』の効果で味は絶品だが媚薬と同じ効果が発動する。食べろと言われても食べるな。それとなく断れ。」
ハリケーン様の目が鋭く戦闘では見せない目が此方を見つめていた。
「そうじゃ!メアの『魔将』昇格の祝いとして妾が料理を作ってやろう!どうじゃ?」
口元を手で抑え見下ろすイーナ様。その隣で此方を見つめて小さく首を横に振ったグリム様。
僕も軽く首を振り言った。
「申し訳ありません。部下への挨拶などがあるのでまたの機会に…」
「そうなのか?では仕方ないのぅ…」
「グリム様。イーナ・ティルシナ。私も人族への警戒をせねばなりませんのでこれで…」
「ああ、俺も。粛清せねばならん者がいた気がするから失礼する。」
「なんじゃ…ノリが悪いのぅ…仕方ないグリムよ2人で仲良う食べようぞ!」
その豊満な胸に僕の尊敬するグリム様のお顔は埋まった。
………そのグリム様の口元が緩む顔は見たくはなかった……
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「良くやったなメア。」
「それ程凄いですか?」
王の間から出た後、その長い長い魔王城の廊下をハリケーン様と歩いている。ゴーラス様は後ろで姿と気配を消し付いてきている。『魔将』意外には顔を見られてはいけないらしい…
魔王城の守護兵とすれ違う。
彼は皆ハリケーン様に敬礼をし通り過ぎるまで絶対に動かない。
「イーナの奴のスキル『色欲』はそのスキルを扱う者の愛する者には媚薬として効果が有るが我々の様ななんでも無い奴らだと食べた瞬間は普通の料理だがそれが胃の中に入った途端。体内で毒を撒き散らし殺しに掛かってくる劇物だ。」
我々は『魔将』の耐性効果で死にはしなかったが、それでも3日生死を彷徨ったらしい…とんでもないものだ…
階段を降り大広間へ出た。
「それでは俺とそれはオースティードに戻らねばならん。近々命令が下るだろうが恐らくお前は魔王様の近衛兵という事になるだろう。我々、三人は戦場に赴くがお前は魔王様を守ってくれ。期待はしている。」
「はい!!」
ハリケーン様は頼んだと一言残してから魔王城を後にした。
僕は念の為、王の間に戻る事にした。
王の間にはグリム様は居らずイーナ様もいなかった。王の間を掃除しているメイドに声を掛けると青筋が浮かんだ笑みを浮かべるだけで答えてはくれなかった。
《99.99999%の確率で寝室に居るかと思います。》
E-AIが要らん事を計算したので強制的に黙らせる。
………家に帰ろうか。
…恋ね…
………あれは恋だったのかも知れない……
でも、生きるのに必死だったんだよ?
……ごめんね?………レイナ…
でも……………いや、許してくれるわけ無いよね?
『ええ、勿論よ…』
こんな駄作をお読み頂き有難うございます。これで『魔将』のお話は終わりです。最後にフラグが投下されましたが本編で書くかは迷っています。多分書きません。これからはちゃんと『平均以下』をお届けします、気長にお待ち下さい。(・Д・)ノでは!




