ー魔将4ー 『圧倒的差』
家に帰り取り掛かったのは魔導具の製作だ。普通、魔導具は専門の道具と大量の素材などが必要だが僕の場合は違う。
僕には創造魔法という何百年に一度見られるかどうか判らない魔法が使える。これは頭の中でイメージしたモノを魔力を通す事で三次元に出現させる事が出来る魔法だ。これは使える僕が知っている事だがこの魔法はかなりの魔力を消費する、それも他の魔法とは比べ物にならない程の魔力を……
だから僕が魔導具を作れる数は…
《約108個です。》
…だそうだ。
兎に角、僕は魔導具を作るためのイメージをする。
…そうだな。雷属性の武器が良いかな。作りは充電式で少量の魔力で雷魔法『ギラム』が発動する様にしよう。
『ギラム』は前方に向かって強力な雷を放つ中級レベルの魔法だ。
見た目はどうだろうか…棍の様な形で良いだろうか。
《モデルの作製が完了しました。》
頭の中に木の棍の形で頭に青い宝石の様なものがはめられている。僕のイメージ通りだ。
では次に使い心地はどうかシュミレーションする。
魔導具を使用する者は魔族の一般レベルの人間に設定する。
男の人形が先程の魔導具を振ると雷は真っ直ぐ地面を焦がし放たれたが男はその衝撃で吹き飛ばされ魔導具を握っていた手の骨が粉々に砕け散ってしまった。
《改良が必要です。》
分かってる。そんなものは見てわかる。だがどうする?火力を削るか?
……20%火力を減らしてくれ。
《了解。20%の火力を軽減しました。シュミレート開始します。》
先程の人形のような男が現れ棍を振るった。先程より薄い光が走り地面を焼いた。男は特に何の様子もなく立っていた。
魔力消費量は?
《約1%です。》
良いかな。あ、海水でやられない様にしないとな。
《解。計算済みです。》
流石は22世紀最高の知能だな。
では作れるだけ量産しよう。
《107個の生産が可能です。生産しますか?》
勿論だ。
その瞬間身体の力がどっと抜けた。足の力が抜けそのまま床に崩れ落ちる。
《魔力切れです。能力保存の為E-AIを強制終了します。》
知能が能力を発揮しなくなり僕はゆっくりと身体を起こす。
この世界に来てからE-AIが強制終了をしたのは今回で二回目だ。前回は新たな神級の破滅魔法を使用した時に魔力切れを起こしたな。
あの時は魔力制御も出来なくて困ったものだ……
しかし、僕のもう一つの頭脳であるE-AIが魔力切れになると使えなくなってしまうのは非常に興味深い。一体何故、魔法と科学、一切関係の無い様に思えるが何かの繋がりでもあるのか…挙げたらキリがないな……
だがまあ、今は明日を生きる為に頑張ろうじゃないか。
部屋の中に現れた木の棍の山を見つめる。
……今は何時だ?
………
そういえばまだだったな…不便なものだな。E-AIが居ないのも…良くまあ旧世紀の人間はこんな不便なもので生活出来たな…いや、此処までなる為進歩していたのか?
この家に時計はあるが何と針の時計なのだ。…読めない。確か、二つの太い針が上に来ている時が0時でそこから1、2、3、4、5…と回っていくから…今は長い針が0で、短い針が左の真横に向いているから……9時か?非常に分かりづらいな……
明日の9時に港に向かえば良いから今から寝るか?
しかし…E-AIが居ないと時間が…
再起動を待つか?
それは辛い…何時になるかも判らんし…
《再起動完了しました。》
待ってたぞ!!早速明日の7時に起こしてくれ!
《了解。7時にセットしました。》
では魔力の回復もあるし寝よう。
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「お待ちしておりました。メア司令官。」
「ああ、出迎えご苦労。」
バッシュレイを先頭にビスケス、リポンス、ニュクスと横に並び胸に手を当てる敬礼する。
僕も軽く返し話を進める。
「では先ずは船を見せてもらおうか?」
「はっ!では此方に…」
ドーム型のドックに案内された。
中は船を整備する為の道具が所狭しと置かれ中央には一隻の帆船が何本ものワイヤーで吊り下げられていた
「この船は?」
「我ら第8海兵隊の旗艦。『一刻船』です。武装は30センチ砲撃砲が八つ、魔導連装砲乙型改二が一基。さらに、タービンと呼ばれる武装。『新型高温高圧缶』を二つ程積んでいる為、風が無くとも海上の素早い移動が可能です。」
……新型高温高圧缶?
《実例あり。開示します。》
……
…………旧世紀の人間は一体何なんだ……
しかし、こんな物があるという事は過去にも同じ様な遭遇をした地球の人間がいるという事だ。それならば此処のちょっとした科学にも納得がいく。
話が逸れたな。
「成る程、だが今は整備中なのか?」
「はい。」
「全ての船の整備は何時に終わる?」
「あと小一時間ほどで出来ます。…………出撃ですか?」
「ああ。兵を集めてくれ。装備を揃えてな。」
「はっ!直ぐに!」
ビスケスが走ってドックを出て行った。
「では私も準備をする。お前達も準備をして港に船と兵を揃えていてくれ。」
「?メア司令官も同行なされるのですか?」
バッシュレイが不思議に見つめてくる。
「勿論だ。私も参加してのこの『攻略戦』だ。」
「はっ!!」
「では港で待つ。後は頼んだ。」
そう言い残し僕はドックを後にする。
ドックの外は大慌てで準備に取り掛かっていた。
僕は魔力を貯めて置きたいので少し静かな場所で魔力を練り上げる事にした。
一時間後、全ての準備が整い僕は港に向かった。
港には五百人近くの兵が4隻の船の前で小分けで並んでいた。兵の前にはバッシュレイと船長の四人が並んで待っていた。
バッシュレイが敬礼をして報告を始めた。
「第8海兵部大隊バッシュレイ以下536名全員、準備整いました。」
「うん。じゃあ、26人、それぞれの船から出てきてもらえるかな?」
「それは誰でも良いのですか?」
「えっと、出来れば手が空いてる者で頼む。」
「分かりました。……各部隊、手の空いている者、26名ずつ前に出ろ!!」
ザッと、整列した合間から揃って出てきた。僕はアイテムボックスから魔導具を取り出し浮遊魔法で一人一本ずつ渡した。そして、バッシュレイ以外の三人の船長にも手渡した。
僕は声を張り上げ言った。
「それは、『ギラム』を放つ事ができる魔導具だ!使用制限は無いが、あまり使い過ぎると魔力切れを起こすから気を付けろ!手にした者は、私の合図で使用してくれ!」
「「「「はっ!!」」」」
「よろしいのですか?」
魔導具の事だろうか?
「大丈夫だ。直ぐに出航の準備を始めてくれ。」
「はっ!……各隊!配置に着け!出航する!!」
「「「「おおォォーー!!!」」」」
集団が綺麗に船に次々乗り込んでいく。直ぐに港には船長と僕以外誰も居なくなった。
「では、先ずは手始めに此処から約800海里東へ進み砦を落とす。次の指示は砦が近くなったらだ。行け。」
「「「はっ!」」」
バッシュレイ以外の三人がそれぞれの船に乗り込んだ。
「メア司令官は私の船で宜しいですか?」
「ああ。」
「では、どうぞ。」
僕はバッシュレイに連れられ他の船とは一回り大きい帆船に乗り込んだ。
「出航!!」
「「「「オォォォォォーーー!!!!」」」」
「タービンを回せ!魔力の補給はマメにしろ!!」
バッシュレイが叫ぶ。
この世界のタービンは風魔法、水魔法を使って半自動的に動かしているものだ。
見た目は木で出来た古臭い船だが、使われている物はどれもこの世界では最先端だ。
そうこうしている内に艦隊は既に港が見えなくなる位置まで進んだ。
僕は邪魔にならないようにマストの上に登り座った。
遥か先まで青く澄みきった海。前世の地球では見れなかった美しい海だ。
この綺麗な海を護っていたい…
そう思った時、僕の中の何かが開花した。
《報告。称号『海の者』を入手しました。》
『海の者』…一体どう言う効果なんだ?
《解。海を愛する者に贈られる称号。水系の攻撃が強化されます。》
E-AIは何故かこの世界の『称号』の解析もしてくれる。こう思うと何か繋がっているのではないかと益々思うが、それを調べる術はない。
暫くはずっと綺麗な海を眺めていた。
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………見えた!
「メア司令官!!間もなく敵の砦に着きます!!」
僕はマストから飛び降り甲板に浮遊魔法を使ってフワリと着地する。
「魔導連装砲は此処から届くか?」
「え、ええ、計算上では届きますが、船が転覆してしまいます…」
「いい、準備をしてくれ。」
「……はっ…しかし…」
「大丈夫だ。僕を信じてくれ。」
「…了解しました。」
僕は水平線に薄っすら浮かぶ小さな黒い点を見つめる。E-AIが視野を強化し何百万倍にもズームしその姿を映し出した。
其処には何本もの鉄の棒を海中に差し込み続ける人間の姿が…その周りには2隻の船が警戒に当たっていた。恐らく気づかれていない。
「メア司令官。準備できました!」
「よし。…全員に伝えろ。衝撃に備え近くの固定されたものに掴まれと。」
「はっ!」
僕は船の先端に置かれた巨大な固定砲台に触れた。
近くの兵に発射の準備をして貰う。
「準備できました。」
「メア司令官。此方を…」
バッシュレイが魔声石を持ってきた。
魔声石はマイクの様な者で声を大きく伝える物だ。
それを口元に寄せる。
「これより魔導連装砲を発射する。全員、近くの物に掴まり衝撃に備えよ。……攻撃標準合わせ。…発射三秒前……三……ニ……一……撃て!!」
兵が連装砲に魔力を流し発射した瞬間、直ぐに僕は船の操縦を乗っ取り浮遊魔法で衝撃のバランスを整えた。
ドッと魔力が無くなる。
連装砲から放たれた紅く鋭い球は蒼い空に線を入れる様に飛び残像がずっと遥か向こうに飛んで言った。
次の瞬間。水平線の向こう側に赤く巨大なキノコ雲が発生した。刹那、爆風が船を襲い船艇が大きく揺れる。揺れによって船が衝突しそうになり浮遊魔法で強制的に引き離した。
視力の強化で様子を伺う。砦は跡形も無くなっていたが船が一隻大破で残っていた。船は直ぐに動き始め東へと引き返した。
……先ずは一つ。次は……
《約二海里北上した位置に中規模の砦があります。》
其処に行こう。
直ぐに指示を出し艦隊は北へ向かった。
ドッと抜かれた魔力が短時間で戻る訳もなく先程の魔導連装砲の使用はせずに砦を攻めることにした。
砦にはまだ防衛設備が無く4隻の小さな船で護られている様だった。
「砲撃戦の準備をしておけ。魔導具部隊は半分待機で甲板にいろ。連携して攻撃する。一刻船、二刻船が同時に攻撃を仕掛ける。その後続いて三刻船、四刻船共に攻撃を仕掛けてくれ。砦は一刻船が制圧する。初撃の後、援護射撃をお願いする。……全艦、最大速力で直ぐに叩くぞ!!出撃!!」
船が揺れ、かなりの速さで砦に向かう。砲撃の射程範囲に入ると砲門が横に来る様に指示を出し一斉射を狙う。
敵も我々に気付いた様だが遅い。
「全門斉射!!」
四つの砲台から弾が発射され敵艦隊を混乱に陥れた。
「魔導具部隊構え!!」
甲板に横並びに並ぶ杖を持った海の男たち。その姿は異形だ。
「目標。敵船。放て!!」
その瞬間いくつもの眩い輝きを放った雷が混乱する敵船を容赦なく襲う。
船は雷により穴が開き沈みかける船や集中的に攻撃を受け丸焦げになり爆発を起こす船が一隻。
「全砲門撃て!!敵艦隊を撃滅せよ!!」
その合図でいくつもの弾が放たれた残りの3隻も容赦なく沈めて行った。
残すは砦。
僕は浮遊魔法で単身で無防備になった砦に降り立った。
敵兵が何人も剣を構え取り囲んだ。
僕も剣を抜き片手で構える。雷を剣に纏わせ地面に突き刺す。雷は地を這い敵兵を感電死させる。
これでは時間が掛かるな……魔力は取られるがアレを使うか…
魔力を練り上げ浮遊魔法で砦の直上に浮かぶ。
「……帝級破滅魔法。」
僕の周りに五つ程紫色の魔法陣が浮かび上がる。何百年も昔の今も衰えない破滅魔法。
「永久の終わり!」
魔法陣から紫の光線が放たれ砦を直撃する。光線が砦に触れた瞬間爆発し砦を粉々に吹き飛ばす。
爆風が味方の船を襲うが問題はない。
問題なのは魔力を消耗し過ぎた。コレだけだ。この魔法を考えた奴はアホだな…後の事を全く考えていないオーバーキルな魔法だ……だが、その火力は認められるから使ったのだがな……
もう一度砦のあった場所を見下ろす。その跡は破滅魔法に相応しい程、砦などの邪魔な物は無くなっていた。
「ん?」
「どうかしたの?」
シャンが大魔王に問う。
「いや、誰かに我の事を馬鹿にされた様な気がしての…」
大魔王が不機嫌そうな顔をするとシャンが宥めた。
「そんな事を言うのはきっとバンシィ様だけですよー。」
「それもそうだの…」
大魔王が苦笑する。
「また海に行きます?」
「いや、今日はもう良い…」
「そうなの…」
「ああ、すまんな。」
「良いよ!またね!」
そう言ってシャンは海へ帰った。
大魔王は海より遥か向こうの遠い大陸を見つめ言った。
「バンシィよ。破滅魔法は無限大だ。お前のその決めつけが己を苦しめるぞ。」
大魔王が遠い向こうの大陸の相棒に向かって言ったのかは定かではない。




