ー第8話ー 『反対の存在』
初歴495年
最近、おっさんは何もない何処か遠い空を眺めている。
ドラグも俺の姿で「何やってんだ彼奴」と聞いてくるが俺も分からん。兎に角ずっとボケ〜としているのだ。様子が可笑しいのは何時もの事だが、最近のはまた別の意味で違う。
流石に心配にはなるので一応聞いてみる。
「ん?……いや、最近肩のコリが凄くての………」
ダウト。絶対違う。おっさんは嘘を吐いている、そもそも魔王は肩なんてこらない。耐性に治癒力があるからな。俺でも肩こりにならないのにおっさんがなる訳がない。
一時撤退。
もう1人の俺と2人で円陣を組み相談する。
「様子がおかしいな。」
「それは知っている。」
「何か心当たりは?」
「…………無い。」
少し黙ったのが気になるが無いという事にしておく。
「表世界で何かあったのでは無いか?」
…またそのパターンか…
「なんでそう思う?」
「魔王の対になる存在。魔王が黒だとするとその反対は白だ。黒は白が現れると力が鈍る。つまり、何か対になる存在が現れたから力が抜けているのでは無いか?」
ドラグの癖に珍しくそれっぽい事を言うな…
「調べてみるのか?」
「おう、バンシィ。一緒に行くか?どうせ暇だし。」
マジかよ!今回はドラグと一緒!?
「行くぞ。」
「では、さっさとガンマを呼んで連れてって貰うぞ。」
「え?お前に乗せてってくれないの?」
「人化の魔法を使うと一ヶ月は元に戻れん。」
何だよそのゴミ機能。
そうなればガンマを呼び出すしか無いな。カマーン!ガンマ!!
「……主よ。もう少し寝かせてくれ。」
【ガンマは仮眠状態で召喚された!】
って!ざけんな!おい!寝るな!
「……仕方ないな。少し待ってやれ。」
そう言って居眠りを始めたドラグ。
………チッ。
俺も風魔法で見えないふかふか空気ベットを作り防音壁、魔防壁を展開しふかふかエアーマクラを抱いて眠った。
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少し昼寝をしてから表世界に行く準備をする。流石に三度目も金が無いとか論外だからな。
因みにまだ鳥と竜は寝てる。
人族の通貨のチールを有りっ丈袋に詰め込みアイテムボックスに収納する。
ローブの中に新しく作った魔力樹を仕込み何時もの仮面を顔につける。
仮面神官ディラの誕生だ!
………それにしても。
俺に瓜二つの姿をしているドラグを見る。
こいつ、俺の姿で人族領に行くつもりかな?それは少し困るな。
「おいドラグ。」
「ぐふぁ!」
脇腹を蹴り飛ばし起こす。自分を蹴るのは何かな…
「な、何だ!?バンシィ!」
脇腹を抑えうずくまりながら涙目で此方を見上げる俺。
「お前、その顔何か別のに変えられないの?」
「も、勿論変えられるぞ。変えろと言うのか?」
「そうだ。」
話が早くて助かるな本当に。
復活したドラグが立ち上がりクルリと一回転すると服装が暗い紫色のローブを着た赤い髪のイケメン。男の俺が見てもカッコ良いイケメンだ。イケメンが現れた!!ついでにローブがカッケェ!魔法使いって感じ!
「ふむ。お前とローブを合わせたが良かったか?」
「別に問題無い。」
俺はそう言って創造魔法で黒いローブからドラグと同じ暗い紫色のローブに変身する。
「なんだ、羨ましかったか?」
ノーコメントだ。
さてと、準備は出来た。後は……
いつまで寝てんだよ!
プテラノドン?鳥?の背骨を蹴り飛ばす。勢いあまり過ぎてつま先が硬い骨にめり込んだ。ヤッチマッタ。
「んギャァァァ!」
ガンマの絶叫が耳が痛い。速攻回復魔法で再生したがまだ痛そうだ…めんご!
「主様!痛い!痛いです!」
「ん?ごめんごめん。」
もう一発蹴っておく。
「んギャ!」
さて、話が進まないからサッサと瀕死のガンマを復活させ背中に乗り込み人族領に向かって飛ばした。
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三週間かけ着いた場所はシューラ王国の王都の近くに辿り着いた。
誰にも気づかれないように気配を消し森の中に降り立つ。
シューラ王国か…そう言えば5年前結局一週間経っても魔族は攻めて来なかったから俺はさっさと帰ったんだな。リックは少し嫌な顔してたけど。まだ生きてるのかな?リック。
ガンマから飛び降り固まった腰を伸ばす。コキコキと骨が伸びるような良い感じの感覚になる。
ドラグも同じように肩を回したりして体をほぐしていた。
「ガンマも来るか?」
「…しかし、人化の術が使えんな。」
そうだったか…じゃあサヨナラか?
其処に我らがドラグ(笑)が名乗りを上げた。
「俺が人間に変身させてやろう。」
そう言ってガンマを問答無用で変身させて黄色の髪のファンキーな漢に変わった。服が俺たちとお揃いの紫色のローブの為なんか違和感があるが問題は無いと思う。
まあ良いや、出発だ!!
山道へ出て王都シューラへ三人で仲良く歩いて行く。途中、馬車が通り過ぎたりすると皆ギョッとしながらもスルーしてくれた。
ドラグとガンマに至っては落ち着きが無さ過ぎて目を離すとどっかに行ってしまっていた。
「おぉい!バンシィ!見ろ!でかいヘビ捕まえたぞ!!」
ドラグが自身の身体の数十倍もある紫色の蛇の尻尾を生きたまま掴み引きずって来た。
また大魔王の小便じゃねぇーか!生きたまま持ってくんな!
魔力を集めドラグごと消滅させる様に右手に魔力を集める。
「はぁっ!!」
右手から放出された魔力は炎に変わり小便をドラグごと焼き尽くす。
「危ないだろう!!」
ドラグは蛇を盾にして耐え切りやがった。蛇は丸焦げどころか元の姿が分からないくらい焼き尽くしてしまった。
そんな茶番はもう良いから俺は早く行きたいな。
「ガンマは何処だ?」
「ん?どっか行った。」
んなもん見てわかるわ!
チッ、面倒くさい。呼び出すか。
「さっさと来い!ガンマ!」
魔法陣が現れるがガンマが出てくる気配が無い。腕を突っ込み奥にあるものを掴み思いっきり引っ張る。黄色髪の漢が尻餅をついて現れた。
「痛い…」
「早く行くぞ。俺の後ろについて来い。」
次どっか行ったら玉取ってやる。
今度は何とか2人とも離れずについて来た。俺たちは王都シューラの南門にやって来た。何やらここは常に検問をしている様で城壁に沿った少し短い列の最後尾に俺たちも並んだ。
「凄い高い壁だな。」
それもそうだな。いつ見ても50メートルはある城壁に圧巻されるな。あんまり気にして無いけど。
「俺だったら軽く跳び越せるけどな。」
お前はドラゴンだろうが。跳ぶんじゃなくて翔ぶんだろ?
「それは私も同じだな。」
だからお前もプテラノドンじゃねーかよ!翔ぶんだろ!生憎俺は浮遊魔法が使えないから飛べないけどな!!
あ、跳べるよ?跳び越せるよ?心配しないでね。
そうして時間を潰していると順番が回ってきた様で1人の門番に俺たち3人は見て貰った。
「特に異常は無いな。通行料は1人50チールだ。」
3人で150チールか。
「はい。」
アイテムボックスから150チールだけ取り出し渡した。
「良いぞ。」
門番は道を開け中へ誘導してくれた。
壁の中は5年前とは大分違い殆んどが木の家だった建物がレンガの家やコンクリート?見たいな物を使った家が建ち並びかなり地球の町みたいだった。此処までくると誰かがこの世界の建築に口出してるみたいだな。
5年前とは変わり、見回りと思われる白い騎士が何人もウロチョロ周回している様だ。
メインストリートを歩いていると何やら騒がしく人だかりが出来ていた。
人だりのおじさんに声を掛けると答えてくれた。
「勇者様一行だよ。」
「勇者様?」
「なんだ?知らないのか?田舎もんだな?」
「ああ、あまり情報が入って来なくてな。教えてくれないか?」
「仕方ねぇ!勇者様はな、なんでも偉い魔法使いが此処とは違う別の世界から召喚した人間何だってよ!普通とは違う技を使ったりスキルがあったりして兎に角物凄い強いんだよ!3日前の魔族の攻撃も勇者様の一太刀で殆んど壊滅させたって噂だぜ!」
「それは凄いな!…で、その勇者様の名前は?」
気にはなるな、地球からの召喚者なのか、或いは別の世界か。もし地球からの人間でもどうしようとかは決めてない。お!ってなる位だな。絶対他人だし。
「勇者様の名前はナガトだぜ。」
『ナガト』とかめちゃキラキラネームだな!ナガトって言ったらやっぱり『長門』だよな?分かんないけど。日本人じゃね?知らねーけど。
でも、だったら何でこの世界の人族語を喋れるんだ?
あ、翻訳こんにゃくがあるか。
「ほぅ…」
「おお!見えたぜ!アレが勇者様だ!」
男が指差した先には青白い龍鱗が施された鎧に身を纏い青い水晶の様なものが埋め込まれた見栄え重視に見えるロングソードを腰にぶら下げた、茶色に近い黒髪の綺麗な美形の男。その身体はまるで神によって造られたかの様な美しい身体つきだ。
………ん?おかしいな。何故、こんなに褒めているんだ?
こっそりドラグに聞いてみた。
(恐らく、『勇者』の能力の一つ『魅了』だろう。何故か勇者について行きたくなるのはこの能力の所為だな。)
(成る程、どう対処すれば良い?)
(これはもう、『不死身』の耐性向上効果に任せるしか無いな。)
(何だ、ドラグはかからないのか?)
(恐らく同種族で無いと発動しないか、俺の耐性の方が強かったかだな。)
『勇者』厄介な能力だな。再び勇者を見てみるが今度はドラグが耳打ちして来た。
(どうする?勇者を潰すか?)
(いや、様子を見よう。)
やけにドラグが好戦的だが、まだだ。大体この手の勇者は何とかの加護!とか言って強くなるとか、そんなんだよ。絶対ドラグが負けるな。という訳で強さも見ながら様子見で。
再び勇者を遠巻きに見つめる。勇者の後ろにまだ誰かいる様だ。
その子は身長は高くなく。小学4年くらいの大きさで薄い青色の賢者の様な丈の長いローブに帽子を被り右手には魔導書の様なものを抱えていた。暗い青色の髪が風でなびいている。
……どっかで見たことある様な…
記憶を振り絞って出すが思い出せない。雰囲気が似てるだけかもしれないな。
さらにその後ろから付いて歩いている男がいた。
その男は赤い髪に青い鎧に赤い細い線が入って腰には鋼以上に頑丈そうな剣をぶら下げ辺りを警戒しながら勇者の後を歩いている。
反対の腰に何か棒の様なものをぶら下げていた。
仮面の下から千里眼を発動させその棒を見詰めた。
『魔力樹』だ。間違いない。絶対これ魔力樹だわ。
え?
……………もしかしてタッ君?
お待ちかね。章タイトルでもある勇者が出てきました。まあ、それよりもタッ君どんだけ出るんだよと言われてもキーマンですからとしか言いようがないですね。笑
更新が遅いですが気長にお待ち下さい。ちゃんと書いてますから!




