選別 上
【SECOND GAME】
【STAGE 2】
【開始】
その文字が表示された瞬間。
教室の空気が変わった。
誰も声を出せない。
さっきまで、ただのクラスメイトだった32人。
でも今は違う。
7人。
25人。
たった一つの記憶の違いで、完全に分けられていた。
直人はスマホを握りしめる。
画面には、無機質な文字が並んでいた。
【ゲーム名】
【選別】
【参加者:32名】
そして、その下。
【ルール】
【記憶保持者7名を探し出してください】
「……」
誰も反応できなかった。
探す。
その言葉の意味を、全員が理解していた。
7人を見つける。
つまり。
7人を売る。
「ふざけんなよ……」
大和が呟く。
拳を握りしめる。
「俺たちはただ覚えてるだけだろ」
しかし。
25人側からすると違った。
「でも……ゲームがそう言ってる」
一人が言う。
「記憶保持者ってことは、何か意味があるんじゃないか?」
「じゃあ、あいつらが何か隠してるってこと?」
視線が集まる。
直人たち7人へ。
直人はその視線を感じていた。
怖い。
昨日まで普通に話していた相手が。
今は自分たちを疑っている。
でも。
直人にも分かっていた。
25人を責めることはできない。
彼らは本当に知らないのだ。
蓮のことを。
蓮との時間を。
「……直人」
美月が小声で言う。
「逃げた方がいい」
「でも」
直人は25人を見る。
「説明すれば……」
「無理だよ」
美月は首を振った。
「証拠がない」
その言葉に、直人は黙った。
写真。
動画。
名簿。
全部消えた。
蓮が存在した証拠は、何一つ残っていない。
残っているのは。
7人の記憶だけ。
その時。
――ピロン。
全員のスマホが鳴った。
【制限時間】
【30:00】
カウントダウンが始まる。
「始まった……」
誰かが呟いた。
そして。
機械音声が響いた。
『ゲームを開始します』
『記憶保持者は、自身の正体を公開してはいけません』
『公開した場合』
『即時失格となります』
直人の表情が変わる。
「失格……?」
『また』
『制限時間終了までに記憶保持者を発見できなかった場合』
『参加者を1名削除します』
教室中が凍りついた。
「……削除って」
「どういう意味だよ」
誰も答えられない。
ただ。
このゲームには、本当に何かがある。
直人はそう感じた。
そして。
黒崎恒一が前へ出た。
「……朝霧」
直人を見る。
「お前だろ」
「何が」
「7人の中心」
直人は黙る。
黒崎は続けた。
「蓮って奴の話を一番していた」
「みんな、お前を信じてる」
「だから」
一瞬間を置く。
「お前を捕まえれば、全部分かる」
教室が静かになる。
直人は黒崎を見る。
「俺を疑うのか」
「疑うしかない」
黒崎は答えた。
「俺たち25人には、そうする理由がある」
直人は言葉を失った。
黒崎は敵だ。
でも。
間違ったことを言っているわけではない。
その瞬間。
スマホが鳴った。
【特別条件追加】
全員が画面を見る。
【記憶保持者の中でも】
【最重要人物が存在します】
直人の背中に寒気が走った。
次の文字。
【条件】
【神谷蓮と最も深い関係を持つ人物】
直人は息を止める。
嫌な予感がした。
画面に。
一つの名前が表示される。
【朝霧直人】
教室がざわついた。
「やっぱり……」
「直人なのか?」
「捕まえればいいんじゃないか?」
声が飛び交う。
直人は一歩下がった。
自分が。
狙われる。
分かっていた。
でも。
ここまで早いとは思わなかった。
その時。
スマホに新しい表示が出た。
【第一ターゲット】
【朝霧直人】
そして。
校内放送が響いた。
『ターゲットを確認しました』
『ゲームを続行します』
『朝霧直人を確保してください』
直人は顔を上げた。
廊下の向こう。
複数の足音。
近づいてくる。
7人の中で。
一番最初に狙われたのは――
直人だった。




