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第48話 トラブル?

「わ~っ!やっほ~」


「や~っほ~っ!!」


 鏡のようにおだやかな湖面。右手には白い雪を頂きそびえ立つ山脈。


 左側に見えるは牧草地だろうか?馬たちがゆったりと歩いている。ところどころにはレンガ造りの家。それに風力発電用の風車もある。


 自然と人の営みが調和した、のどかな風景。それを左右に切り裂くように疾走するヨット。思わず気分が高揚して叫んじゃった。


 航海は順調だ。ヨットを操舵するなんて初めてだし、マニュアル読むだけの付け焼き刃な勉強で大丈夫かと不安だったけど、すぐにコツをつかめた。


 追い風と穏やかな天候のおかげもあるけど、実は僕には意外な才能があったのかもしれない。大学に入ったらヨット部に入ってもいいかもな……。


「いちろ~っ、島が見えてきた」


 マリアちゃんが指さす方向を見ると、かすかに島影が見える。


 間違いない。あれは伯爵領チクワ島だ。じいやさんがくれた航海図によれば、チクワ島まで来れば残りはあと3分の1。チクワ島の右で船首を11時の方向に向ければ、ニオノ湖の南端にあるダムを避け、その横にある辺境伯家専用の埠頭に入れるらしい。


 しかしヨット早いな。フィオは1日かかるって言ってたけど、半日でここまで来れちゃった。


 これは陸路を行ったリサをもう追い越しちゃったかもしれない。陸に上がったら、街道沿いでリサを待ってもいいな。


 リサを待って「遅かったですね~。待ちくたびれましたよ~」なんて言ったら、どんな顔するだろうな?グヒヒッ。


 僕がほくそ笑んでいる時、急にヨットの上に影が落ちた。どうやら太陽がニオノ湖の西岸にある山脈の陰に隠れたらしい。その時だった。


「う、うわっ、うわ!」


 急な突風でヨットが揺れ始めた。


「マリアちゃん、マストに掴まって!」


 素直にマストをギュッと抱きしめるマリアちゃんに覆いかぶさるようにして、僕はヨットの帆の角度を調整する。


 えっと、これは横風?あの山から吹いてるの?そしたら帆をどっちに向けたら安定するんだ?


 必死でマニュアルを思い出し、帆の位置を調整すると、今度はヨットがクルクル回り出した。


 しまった!間違えたか?


 帆を戻そうとしたけど、こんどはロープが絡んでしまった。


「きゃ~っ」


「うわ~っ!!」


 ヨットは大きく横に揺れ、クルクルと回り続けた。沈没こそしなかったけどあらぬ方向へ流されていく。しかもロープが絡んで帆を動かせない。


 こうなると僕もマストを掴んで運を天に任せるしかない。


「神様、精霊様、助けてください~」


◇


 目を覚ますと、僕は砂浜に放り出されていた。ハッと気づき辺りを見回すと、横倒しになったヨット、そして少し倒れたところで横たわるマリアちゃんの姿が目に入った。


「マリアちゃん!!」


 駆け寄り抱き起すと、彼女はゆっくり目を開けた。


「よかった!痛いところない?」


「う、うん……大丈夫、だけど…‥」


 マリアちゃんが怯えるような表情をして僕の背後を見ている。


 おそるおそる振り返ると、そこにはカーキ色の作務衣みたいな服を着た笑顔の男が二人立っていた。


「ようこそ伯爵領チクワ島へ。こんな孤島にどんな御用ですかな?」


 その男は慇懃な態度だったが、目だけが鋭く光っていた。


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