第40話 そんなところに入口が?
「一郎、ローデシア王国へ行こう!リサとジャンを取り返そう!!」
そのマリアちゃんの言葉に、僕も異論はなかった。ただ、大きな問題が一つある。
「ローデシア王国って、どこにあるの?マリアちゃん知ってる?」
マリアちゃんは首を横に振った。マリアちゃんによれば、2年前に来日した時はリサに連れられて、気づいたらこの街に着いていたらしい。
「AIに聞いてもわからないみたいだし……」
スマホを使って調べたけど、ローデシア王国の情報がまったく出て来ない。そもそも僕はパスポートも持ってないから、まずはそこからか……。
そのままスマホでパスポートの取得の仕方を調べていると、マリアちゃんが僕のスマホを取り上げた。
「……これで、リサのいるところがわかる」
「えっ?どういうこと?」
マリアちゃんが器用にスマホをスワイプして、あるアプリをタップした。
「なにそのアプリ?入れた覚えないけど……」
「リサが入れたって言ってた。ジーピーエスで一郎がいるところがわかるって」
はあっ?それって、つまり僕に黙ってスパイアプリを勝手に入れてたってこと?
そういえば、河川敷でマロードに襲われた時も、佐那と一緒に花火に行った時も、なぜか僕の居場所が検知されていた。不思議だなと思ってたけど、まさかそんなカラクリがあったとは……。
今度、リサに会ったらプライバシー権についてしっかり教えてあげないと……。
「あった、ここだ」
スマホの画面には、地図上に『Risa Rot』と表示された旗が立っていた。どうやら僕のスマホからもリサの居場所が検知できる仕組みらしい。ある意味平等だな。
「これは……多摩川水道橋?」
表示された場所は、多摩川にかかる橋のたもと。マリアちゃんと最初に会った場所だ。ただ、今日の午前3時15分から更新されていない。
「ここでスマホを落としたのかな?まあ、リサのスマホを回収すれば何かわかるかもしれないし、行ってみようか」
◇
マリアちゃん、それからなぜか付いてきたがった子猫のバロンと一緒に、多摩川水道橋の橋脚の下を探してみた。だけど、リサのスマホらしきものは見つからない。
「見つからないね~。もしかしたらここで電源を切って別の場所に移動したのかな~」
草むらをガサゴソと探しながらも、僕は半ばあきらめかけていた。これで手がかりが完全に途絶えてしまった。次の一手はどうしようか……?
マリアちゃんの方を見ると、バロンをキャリーから出していた。バロンはそのまま外に出て、橋の橋脚に積まれた段ボールに頭を突っ込んだ。
「あ~っ、ダメだよ、そんなとこ入っちゃ~。家に帰ったらお風呂に入れないと……」
そう思って段ボールをのけて、バロンを捕まえようとすると、そこにバロンの姿はなかった。
代わりに隠れていた橋脚の壁面が露わになり、そこには大人一人がやっと通れるくらいの暗い穴が空いていた。
「うわ~。この穴危ないな~。橋が崩れたりしないのかな?市役所とかに連絡した方がいいかな?」
僕が穴を覗き込もうとすると、バロンがその中に飛び込んだ。
えっ?と思う間もなく、次はマリアちゃんがその穴に足を掛けた。
「だめだよ!そんなとこ入っちゃ!崩れるかもしれないし!」
「大丈夫。ここがローデシア王国への入口」
そう言い残すとそのまま奥深くへ入りこんでしまった。
「待って、待ってよ!」
僕も、後を追って穴へ飛び込んだ。まだこの穴がローデシア王国への入口だというマリアちゃんの言葉には半信半疑だったけど……。




