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第4話 貴族の生きざまとは何ですか?

 マリアちゃんとリサ、それから子猫のバロンが僕の家に来て半月が経った。


「はぁ……」


 今日も玄関を開けた瞬間にため息が出てしまった。


 マリアちゃんはまだ小学二年生だけど、年よりもずっとしっかりしてて、自分のことは何でも自分でやってくれる。お手伝いもしてくれる。なんか、ずっと欲しかった妹ができたみたいでちょっと嬉しい。


 バロンもしつけが行き届いていておとなしい。そのかわいい姿には毎日癒される。


 この一人と一匹については、新しい家族として何の不満もない。

 だけど問題はこの人だ……。


「お~、おかえり~。知ってる?こいつ八股交際してたんだって。令和のヤマタノオロチって呼ばれてるんだと。すげ~な~。一週間は7日しかないのに、どうやって8人もまわしてるんだろうな~」


 リビングには、スウェット姿でごろんとソファに横たわりながら、お腹をかきかき、だらだらとテレビでワイドショーを見ているリサ……。

 今週、何度この姿を見てイラついただろう。


「あ~あ、また師匠こんなに散らかして~」


 ローテーブルの上に散乱した空き缶とスナック菓子の袋を片付ける。昼からビール2缶も空けたのか、この人…。


「あっ、そうだ。ビールのストックなくなったから買っといてね」


「もう全部飲んだんですか?なくなると困るんですけど……」


「だから買っといてって言ってんでしょ~」


 テレビから目を離さないまま、まったく悪びれず言い放つリサの姿に、とうとう僕の我慢の限界が来た。


「師匠、ちょっとここに座ってください」


「え~っ、いまテレビ見てるから後で~」


「いいから座ってください!!」


 床をバンバンと叩くとリサはやっと腰を上げて、僕の前に胡坐をかいた。


「正座!!」


 リサは少し何か言いたそうな顔をしたけど、僕の剣幕に驚いたのかしぶしぶと座り直してくれた。


「この半月の間、食っちゃ寝、食っちゃ寝。いつも昼過ぎまで寝て、僕が帰ってきて家事をしている時も、ずっとごろごろ。いつまでそんなだらしない生活を続けるつもりなんですか?」


 バンバンと床を手で叩くと、リサは少しのけぞった。


「だらしないって……。私は騎士団長として、日々、ローザマリア陛下をお守りする任務に就いてるわけで……」


「お守りするも何も、マリアちゃん、昼は学校に行ってるじゃないですか!!しかもちゃっかり学童にまで入れてるし!」


「それは、陛下が日本の小学生の文化を学びたいっておっしゃるから……むしろ昼は私にとって貴重なオフタイムなんだって……」


「夜は夜で勝手に晩酌したり、マリアちゃんと一緒にマリカーとかマイクラとかやってるだけじゃないですか!こんなだらしない日常を送るのが、師匠が手本として示したい貴族のあり方なんですか?」


 僕が強く見つめると、リサは目を逸らした。リサの周囲には脱ぎ散らかされた靴下とか読み捨てられたマンガとかが散乱している。


「……あの、こんなこと言いたくないんですが、外で働いてお金を稼いで、少し食費を入れていただけませんか?」


 これはずっと言おうと思っていた。僕は離れて暮らす父からの仕送りでつましく暮らしている。別に仕送りの金額が少ないわけじゃないけど、二人と1匹分の食費が増えると、さすがに家計が圧迫される。


「それに……師匠がガパガパとストックのお酒を飲むから……減ったことがバレないように、こまめに買い足さなきゃいけないんですよ。食費はともかく、せめて酒代だけでも自分で賄ってくれませんか?」


 リサは、だんまりを決め込んだのか、プイっと横を向いたまま何も言わない。


 バンッ!!


 ローテーブルを強く叩くと、リサは驚いたようで、ビクッとしてからやっと僕の方を見てくれた。


「師匠は、僕に貴族としてのあり方としてこう教えてくれましたよね。貴族は気高くプライドを保ち、独立自尊。たとえ貧しくても手弁当で主君を守るものだって。毎日ゴロゴロしながら、食費も払わず、僕が買ったお酒を勝手に盗み飲むのが貴族のあり方なんですか?」


「なっ……!お前、そこまで……」


「だってそうじゃないですか!口だけじゃなくて、貴族としての在り方を行動で見せてくださいよ」


 そこまで言うと、リサは真っ赤な顔になりプルプルと震え出した。


「よ、よしっ、そこまで言うなら、師匠として、貴族の生きざまを見せてやろうじゃないか!!」


 リサは立ち上がり、そのまま家を飛び出すと、その日は帰って来なかった。


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