↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/57

第19話 もしかしてこいつ……?

「ローザマリア殿下を差し出せ、あと!ローザマリアを護衛している貴族は名乗り出ろ!俺の言うことに従わないようだったら、一人ずつ殺していくからな!!」


 突然のバスジャック!鉈を持った巨漢の男、マクシミリアン子爵が唾を飛ばしながら喚き散らしている。


 間違いない。マリアちゃんへの第二の刺客だ……。いったいどうしたら?


 その刺客、マクシミリアンは……一言で言えばばかでかい。身長は2メートル近く、おそらく体重は100㎏を超えているだろう。しかも鉈を持っている。

 正面からぶつかったら一瞬で血祭にあげられることは間違いない。


「早く、名乗り出ろ!お前がローザマリア殿下か?」


「いえ……違います!」


 前の方の座席の保護者のおばさんが首を振っている。


「じゃあ、お前か?」


「違います!!」


 次は隣の席のおばさんに凄んでいる。なんでそんな見当外れなことを?

 もしかしてこいつマリアちゃんの顔を知らない?


「……ローザマリア殿下なんて聞いたことない……」


「本当にこのバスにそんな人乗ってるの?」


「間違いじゃないかな……?」


 周囲の人から、小さな囁き声が聞こえてきた。その声はマクシミリアンの耳にも入ったようで、ピタリと動きを止めた。まずい。刺激しちゃったか?


「……あれっ?俺、バスを間違えた?」


 マクシミリアンはきょとんとした顔になり、頭を掻き始めた……。


「このバスだと聞いたんだけどな~。似たようなバスがいっぱい停まってたから間違えちまったかもしれん……」


 よかったっ!!こいつアホだ!

 よしっ、それに乗じて大人しく黙っていよう。うまくすれば、次のサービスエリアで降りてくれるかもしれない。


 そう思って黙って頭を下げていると、後ろの席から誰かが立ち上がる気配がした。


「おっ、おいぃ!!マリアちゃんは渡さないぞ!マリアちゃんは、お、おれが~、ま、守る~」


 龍太くん?ちょっとこのタイミングでなに言ってくれてんの~!!


 しかも龍太くんの声に顔色を変えたマクシミリアンが、「誰だ!誰が今、マリアと言った?」と喚きながら、こちらの席の方に近づいて来た。


 ちらりと横目で見ると、龍太くんはガタガタ震えて座り込み、マリアちゃんは……爆睡している。


 そうこうしている間にマクシミリアンがどんどんと迫ってくる。もう、こうなったらしょうがない!!意を決して立ち上がった。


「やあやあ、我こそは~!!ローデシア王国の準男爵にして、ローザマリア陛下の護衛騎士団の一人、人呼んで~、山口一郎とは、僕のことだ~!!」


 リサ譲りの大見栄を切って、マクシミリアンを睨みつける。次の瞬間、バスの中は静寂に包まれた。


 周囲の視線が痛い。隣の佐那が物凄いドン引きしてるのもひしひしと感じる。リサはいつもこんなプレッシャーと戦いながら大見栄を切っていたのか……。


「なぁに~!!準男爵山口一郎だと~?聞いたことはないが、名乗り出た勇気は褒めてやろう!しかし、飛んで火にいる夏の虫!貴様から血祭にあげてやるわ!!」


 よかった~マクシミリアンが乗ってくれた。助かった~……って全然助かってないじゃん。どうしたら、いったいどうしたら……。


 一瞬、バスが揺れてマクシミリアンがよろけた。その瞬間、急に閃いた!


「おい、マクシミリアン子爵!貴族らしく、いざ尋常に勝負だ……と言いたいところだが、こんな狭くて揺れるバスの中ではお互いに十分に力を発揮して戦うことはできまい。バスの外に出て一対一で勝負だ!!」


「ああ、よいとも!!確かに貴族らしく名誉ある決闘をするにはこのバスは狭すぎる。おい、運転手。どこかで停めろ!そしてドアを開けろ!!」


 マクシミリアンの一喝に震えあがった運転手さんは、バスを高速道路の路肩に停め、素直にドアを開けた。


「ふはははっ!貴様のような勇気ある貴族と一対一で戦えるのを誇りに思うぞ。さあ、正々堂々と決闘しようじゃないか」


 マクシミリアンが上機嫌でバスのステップを降りていく。よしっ!今だ!!


「どりゃっ!!」


 僕は両手で手すりを掴み、マクシミリアンの背中に思いっきりドロップキックを入れた。さすがの巨漢マクシミリアンも、不意討ちにたたらを踏んで、バスの外に転げ落ちる。


「運転手さん、すぐにドア閉めて!!バス出して!!」


 プシュ―という音とともに、バスの扉が閉まり、バスがゆっくり走り出した。


 バスのサイドミラーを見ると、まだ事態が掴み切れていないのだろうか?高速道路の路肩で呆然と立ち尽くし、まるで捨てられた子猫のような寂し気な目でこちらを見つめるマクシミリアンの姿が見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。