表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Best Youth 〜君と一緒に〜  作者: ダークキング


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/23

揺れる想いの体育祭

「いよいよ体育祭本番か」

「そうだね。頑張らないと」

体育祭当日。準備をしながら、直美と並んで話していた。

「まあ、今日はさすがに手は抜けないな」

「可織ちゃんも見てるもんね」

「ああ。手抜いたら後で絶対怒られる」

「当たり前でしょ!」

「え?」

振り返ると、いつの間にか可織が立っていた。

「体育祭は年に一度なんだから、ちゃんとやらないとダメでしょ!」

「分かってるって」

「じゃあ私、もうすぐ集合だから」

「頑張ってね、可織ちゃん」

「はい。ありがとうございます」

そう言って可織は軽やかに駆けていった。

「……いつの間にいたんだ?」

「さあ?」

そんな話をしているうちに、俺の競技の集合もかかった。

「おっと、もう俺の番か」

「頑張ってね、光ちゃん」

「ああ。何位でも文句言うなよ?」

「それ、可織ちゃんに言うべきじゃない?」

「うっ……」

「あとで言っといてあげるから大丈夫」

「頼む」

集合場所へ向かうと、

「おーい光司!」

「信夫か。お前も150メートル?」

「ああ。しかも同じ組」

信夫がニヤッと笑う。

「じゃあ、俺の最下位はないな」

「なんだと!?じゃあ俺が勝ったら奢れよ!」

「ああ、いいぜ」

「約束だからな!」

――負けられない理由が増えた。

「続いて、二年男子150メートル走です」

スタートラインに立つ。

周囲の音が、すっと遠のいた。

「位置について――よーい」

パンッ!

地面を蹴る。

身体が一気に前へ弾ける。

スタートは悪くない。

50メートル地点で三位。

(いける……!)

少しずつペースを上げる。

「お兄ちゃん、ファイトー!」

「光ちゃん頑張って!」

声が聞こえる。

――可織と直美だ。

残り50メートル。

そのとき、すぐ後ろに気配。

(信夫……!)

一気に距離を詰められる。

「光司くーん!あと少し!頑張ってー!」

麻衣子の声。

その瞬間、さらに足に力を込めた。

(ここで抜かれるわけにはいかない……!)

ラストスパート。

そのまま――

ゴールラインを駆け抜けた。

「はぁ……はぁ……」

「やっぱ速ぇな……」

「お前も……な」

結果は三位。

前の二人は運動部。

それを考えれば、上出来だ。

「二人ともお疲れ様」

戻ると、直美が声をかけてきた。

「サンキュー。やっぱ運動不足だな」

「前の二人、運動部だもん。しょうがないよ」

「まあな」

「それより――可織ちゃんの100メートル、もうすぐだよ」

「マジか。それは応援しないとな」

グラウンドを見渡すと――

「あ、いた」

スタートラインに立つ可織。

余裕すら感じる表情。

「位置について――よーい」

パンッ!

飛び出した瞬間、他を置き去りにする。

無駄のないフォーム。

一直線に加速。

――速い。

そのまま、圧倒的な差でゴール。

「見てた?」

戻ってきた可織が笑う。

「ああ。いい走りだったな」

「ありがとう」

「来年も一位狙うのか?」

「V4までやるよ」

「その前にV3な」

「分かってるって!」

昼休み。

屋上へ向かうと、すでに全員が揃っていた。

だが、人数は七人。

二人ずつ座ると一人余ることになる。

結果――

俺は麻衣子と同じベンチに座ることになった。

少しだけ距離が近い。

(……なんか、変な感じだな)

一方その頃――

「ねぇ、直美」

「なに?」

紗樹が静かに切り出す。

「田辺君、あの転校生の子とすごく仲良さそうじゃない?」

「それがどうかしたの?」

「直美は……このままでいいの?」

「な、何がよ」

「田辺君のこと、好きなんじゃないの?」

「友達としては好きだよ」

「じゃあ、恋人としては?」

「……分からない」

揺れる答え。

「まぁ、直美がそれでいいならいいけどさ」

その会話を、俺は知らない。

「おーい、直美!」

「なーにー?」

「そろそろ戻った方がいいぞ」

「あっ、ほんとだ」

午後の最初は――リレー。

「先行っとけ。弁当は俺が片付ける」

「ありがとう、光ちゃん」

「気にすんなって」

一方で、麻衣子はまだ食べ終わっていなかった。

「麻衣子、早くしないと遅れるぞ」

「え?ちょっと待ってよ~」

慌てて弁当を口に運ぶ麻衣子。

「……」

「直美、早く行かないと」

「……」

沙樹の呼びかけに無反応な直美。

その視線の先には楽しそうに話す光司と麻衣子。

胸の奥が、少しだけざわついた。

「直美!」

「え?あ、うん!」

どこか上の空のまま、直美は立ち上がった。

「私も弁当箱置いたらすぐ行くから、頑張ってね」

「うん、ありがとう」

直美を見送った後、紗樹は振り返る。

「高橋君」

「どうしたの?芦田さん」

「実はお願いがあるの」

「え?」

二人の間で何か話が始まったが、その頃には俺はすでに教室へ向かっていた。

「光司!ちょっといいか?」

「なんだ、信夫?」

弁当を片付けていると、信夫が教室の入口から声をかけてきた。

「少し話があるんだ」

「ああ……いいけど」

「お前、坂本さんのことどう思ってる?」

「どうって……ただの幼馴染だけど?」

「そ、そうか……」

「なんだよ急に」

「い、いや、なんでもない。それより急がないと坂本さんのリレー始まるぞ」

「おっと、それはまずいな。先行くわ」

「おう」

――俺が教室を飛び出したあと。

「やっぱり幼馴染って言ってたよ」

「直美はたぶん好きなんだけどなぁ」

「まぁ、あとは本人たち次第だな」

「そうね」

「俺たちもリレー見に行くか」

「お兄ちゃん遅いよ」

グラウンドには、すでに可織が待っていた。競技ももう始まっているらしい。

「悪い悪い。今から直美か?」

「そうだよ」

一年からスタートしているため、直美の出番はまだ先だ。

「なんとか間に合ったんだな」

「ギリギリね。そうそう……えっと、なんて名前だったかな?」

「え?誰か来たのか?」

「うん。お兄ちゃんとお昼一緒に食べてた人」

「麻衣子のことか?」

「そうそう、麻衣子さん」

「何か言ってたのか?」

「ちゃんと見て応援しておくようにって」

麻衣子もリレーに出るのか。

「なるほど」

「同級生なの?」

「ああ、クラスメイト」

「……ただのクラスメイトだよね?」

「そうだけど?」

「……なら、いいけど」

「何が?」

「彼女かと思ったから」

「知り合ってすぐなのに彼女のわけないだろ」

「そうなんだ。でも、もしかしたら彼女になる可能性はあるってことだよね?」

「まぁ、ゼロじゃないけどな」

「ふーん……」

「でも、なんでそんなこと聞くんだ?」

「え?な、なんでもないよ。ちょっと気になっただけ」

「本当か?」

「そ、それより始まるよ!」

ちょうど一年の競技が終わり、いよいよ二年の番が回ってきた。

「お、そうだな」

「直美さーん!頑張ってくださーい!」

可織の声に気づいたのか、直美がこちらを向いて軽く手を振る。

アンカーのため、まだ余裕があるのか、表情は落ち着いていた。

「位置について……よーい」

パン!

スタートの合図とともに、第一走者が一斉に走り出す。

うちのクラスは第一走者が男子。他クラスは女子が多く、出だしから先頭争い。

「麻衣子、頑張れよ!」

第二走者の麻衣子に声をかけると、こちらに気づいて小さく笑った。

バトンを受け取った麻衣子は、想像以上に速かった。

二位でバトンを受け取り、一位との差を、一気に縮めていく。

「麻衣子、いけ!抜けー!」

気づけば俺も声を張り上げていた。

だが、あと一歩届かず、次へバトンが渡る。

第三走者でわずかに遅れ、順位は三位。

すべてはアンカー、直美に託された。

「直美!二人とも抜けー!」

バトンを受け取った瞬間――直美が弾けた。

スタートから明らかに違うスピード。

ぐんぐん差を詰めていく。

男子相手と思わせない速さ。

いや――むしろ誰よりも速く感じる。

「速っ……」

気づけば、二位。

そして、残るは一位ただ一人。

直線。

並ぶ。

競り合う。

「いけ、直美……!」

ほんのわずか――

直美の身体が前に出た。

――ゴール。

一瞬の静寂のあと、歓声が爆発した。

「直美さん!おめでとうございます!」

「ありがとう」

息を整えながらも、直美は笑っていた。

「さすがだな」

「そんなことないよ。たまたまだよ」

「いや、この競技に“たまたま”はないだろ」

「……ありがとう」

少し照れたように笑う直美。

「もう出る種目ないんだろ?」

「うん、終わり」

「じゃあ後は応援だけだな」

「そうだね」

「光司くーん!」

後ろから聞き慣れた明るい声。

「おう、麻衣子」

「見ててくれた?」

「ああ、すごかったぞ」

「ありがとう」

「もう出番は終わりか?」

「うん、これで終わり」

「ってことは、全員終了か」

「そうだね」

「……あとは片付けか」

思い出した瞬間、ため息が出る。

「めんどくさいの残ってたな」

「みんなでやればすぐ終わるよ」

「そうそう」

「何事もプラス思考、だな」

「そういうこと」

体育祭はそのまま最後まで盛り上がり――

片付けを終えた頃には、夕日がグラウンドを染めていた。

「終わったな」

「楽しかったね」

誰かがそう言って、みんなが頷く。

茜色に染まるグラウンド。

身体は疲れていたが、それを上回る充実感。

――ただの行事のはずなのに。

今日は、少しだけ特別な一日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ