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The Best Youth 〜君と一緒に〜  作者: ダークキング


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22/23

文化祭の終わり、少しだけ意識した夜

「おはよ」

「おはよう」

「今日で文化祭も終わりだね」

「ああ。準備大変だったわりに、あっという間だったな」

「二日しかないもんね」

「おはよー!」

元気いっぱいの麻衣子。

「朝から元気だな」

「元気じゃなかったら来ないって」

「そりゃそうだ」

麻衣子の笑顔を見ると、こっちまで元気になるな。

「今日はのんびりできるから楽だよね」

「昨日動き回った分、今日は余裕あるな」

「ゆっくり回れそう」

「午前中からフリーだしな」

「でもお昼は食べないと」

「場所はそのとき決めればいいよね」

「だな、流れでいいか」

「おはよう」

「おはよう」

成美はいつも通りのテンション。

「今日で文化祭も終わりだね」

「ああ」

「毎日文化祭だったら楽しいのにね」

寂しそうに麻衣子がつぶやく。

「それはそれできるだろ」

「えー、そう?」

めちゃくちゃ不満そう。

「特別感なくなったら意味ないだろ」

「確かに……」

「……たまにだからいいんだよね」

直美がフォローしてくれる。

「それはあるかも」

「そういえば、沙樹って今日当番?」

「どうだろう?」

「昨日沙樹は入ってたし、今日は違うんじゃない?」

「信夫は今日が当番だから、時間と集合場所決めとけばいいか」

「それなら探す手間ないしね」

「で、当番の時間は?」

「それは本人に聞けば分かるだろ」

「まぁ、そうだね」

そして、文化祭二日目が始まった。

「信夫、朝一で当番だったよ」

「場所決めたら連絡してあげないとね」

「ああ」

「とりあえず移動しよー」

「だな。どっか落ち着ける場所探そうぜ」

「できれば座れるとこがいいなぁ」

「遊べる場所はさすがに無理か」

「だよね。休めるだけでも十分かも」

「使ってない教室とかないのかな?」

使っていない場所・・・あ、いい場所あるじゃん!

「教室じゃないけど、一個確実に空いてるとこあるぞ」

「え、どこ?」

「体育館」

「あ、確かに」

「鍵も開いてるし、飲食しなければOKだったはず」

「じゃあ決まりだね」

「お待たせしました」

「お、お待たせしました」

場所が決まったところで、可織と七海ちゃんが合流。

「これであとは沙樹だな」

すると、

「お待たせ」

すぐに沙樹とも合流出来た。

「よし、全員揃ったな。行くぞ」

「どこ行くの?」

可織が興味津々に聞いてくる。

「着いてからのお楽しみだ」

「えー、じゃあヒントは?」

「文化祭っぽくはない場所」

「ヒント少なすぎない?」

教えてもらえずね気味になっている。

「……この道って」

沙樹はどうやら気がついたようだ。

「あ」

可織と七海ちゃんも分かったみたいだな。

「正解は体育館でした」

「こんなとこ使えるんだ」

まぁ、普通は使えないと思うよな。

「穴場だろ?」

「隠れ家みたいだね」

貸し切り状態の体育館。可織はとても嬉しそうだ。

「高橋君には伝えてあるの?」

沙樹が確認してくる。

「連絡してあるから問題ない」

「なら安心だね」

伝えてあることを知り、一安心したようだ。

「それにしても広いね」

「ちょっとしたことならできそうじゃない?」

「できることは限られるけどな」

何をしようか考えていると、

「トランプしよ!」

可織がポケットからトランプを出した。

「持ってきてたのかよ」

「こういうときのためにね!」

ほんと用意のいい妹だ。

「じゃあババ抜きにしよっか」

直美が提案する。

「罰ゲームありにしようよ」

麻衣子が悪魔の提案をする。

「内容はどうする?」

これはえて負けたくなくなるものにしてみよう。

「体育館一周でどうだ?」

「それ、地味にきつくない?」

沙樹が苦笑いした。

「負け続けたら終わるやつだね」

罰ゲーム提案者の麻衣子も、内容が内容だけに苦笑いを浮かべていた。

「まぁ、そんな連敗しないだろ」

そんな俺に対して、

「光司、それフラグじゃない?」

成美が不安そうに呟く。

「とりあえず、やりましょう」

そう言いながら、可織がトランプをカットする。

信夫を待つ間、ババ抜きは十四回行われた。

結果は、麻衣子が二回、沙樹と可織が一回ずつ負け。

そして残り十回はというと――

全部、俺だった。

「お待たせって……光司、何やってたんだ?」

信夫が体育館に来た時には、俺は体育館で倒れ込んでいた。

「いや、普通にババ抜きだけど……」

「なんでそんなボロボロなんだよ」

不思議そうな信夫。

「罰ゲームで……体育館十周……」

「そりゃ死ぬわ」

あきれた表情になる。

「高橋君も来たし、飲み物買いに行こっか」

沙樹がいい提案をしてくれる。

「どこ行く?」

「うちのクラスでもいいですけど……」

全員の視線が、床に座り込んでいる俺に集まる。

「……やめときましょうか」

「そうだね、近場にしよ」

みんなしてあわれなものを見るように俺を見るな……。

「三年一組で飲み物売ってたはずだよ」

「芦田さん、詳しいね」

「先輩のクラスだから」

みんなが移動を始める。

「光ちゃん、立てる?」

心配そうに俺を見る直美。

「……ギリ」

疲れ切っていたが、ゆっくり立ち上がる。

「自分で考えた罰ゲームで自爆してるじゃん」

だから言ったのにって表情の成美。

「ノーコメントだ」

「自業自得だよね」

悪戯いたずらっぽく麻衣子が笑う。

「……否定できない」

こうして俺たちは、三年一組へと向かった。

「先輩、来ましたよ!」

「あ、沙樹!ありがとね、こんなに連れてきてくれて」

「いえ」

「何にする?」

各々が飲みたい飲み物を言う。

「紅茶四つ、コーヒーとコーラ二つずつでお願いします」

全員の注文を沙樹がまとめて注文してくれる。

「了解、ちょっと待ってね」

沙樹の先輩が電卓を叩きながら計算する。

「合計千七百円」

「じゃあ私が払って後で徴収ちょうしゅうするね」

「助かる」

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

飲み物が沙樹経由でみんなに配られる。

「頑張ってください」

「うん、ありがと」

「失礼します」

沙樹は先輩に一礼した。運動部ってやっぱ上下関係しっかりしてるなぁ。

「なんか、きっちりしてたね」

俺が思ったことを麻衣子が呟く。

「運動部っぽかったな」

「上下関係しっかりしてそう」

「最低限の礼儀はあるけど、そこまで厳しくないわよ?」

「そうなの?」

「朝練自由だし、放課後もそこまで遅くないから」

「それでも十分だけどな」

「まぁいいじゃない、その話は」

一瞬の沈黙。そして、

「……なんか話題ない?」

「急に振るなよ」

「うーん……」

みんなで話のネタを考える。

「じゃあさ、暴露大会とかどう?」

麻衣子が突然の提案。

「何を暴露するんだよ」

「好きなタイプとか?」

「……は?」

提案内容が、さすがに突っ込みすぎている。

「それはさすがに……」

「恥ずかしいよ」

直美や成美も少し嫌そうだ。

「えー」

「じゃあお前は言えんのか?」

「言えって言われれば言うけど?」

言えるのかよって、心の中で突っ込んだ。

「さすがに全員が言えないと不平等だもんな……」

この話題にはさすがに信夫も厳しいって表情になっていた。

「じゃあ却下で」

「なーんだ、つまんないの」

「まぁまぁ、別の話題にしよ」

麻衣子は恋愛トークをしたかったようだが、賛同は誰からも得られずだった……

そのとき⸻

ブーブー

俺の携帯に着信。どうやらクラスメイトからのようだ。

「もしもし?」

「田辺、なんでか分からないけど、めっちゃ人来てるからヘルプで来てくれ!」

突然の呼び出し。これは完全に予想外。

「分かった!すぐ行く」

俺は電話を切った。

「もしかして……お店混んでる?」

俺の会話だけで直美は全てを察したようだ。

「ああ、めっちゃ人来てるらしいから行ってくるわ」

「私達も行こ」

麻衣子の呼びかけに直美と成美も頷く。

「信夫、落ち着いたら連絡する」

「分かった、無理すんなよ」

信夫の激励げきれいを受けながら、俺たちは教室に急いだ。

「な、なんだこれ?」

俺たちの教室前には、数十人の長蛇ちょうだの列。

昨日は閑古鳥かんこどり状態だったのになんで……。

「あ、田辺悪いな。なんか口コミでデザートがめっちゃ人気になったみたいなんだ」

クラスメイトはめちゃくちゃあわてていたが、これは嬉しい誤算だ。

「これを逃したら昨日の二の舞になりそうだな」

「昨日の分を巻き返そう」

負けず嫌いな成美に火がついたようだ。

「光ちゃん、無理しすぎないでね」

「私たちも頑張るから」

直美と麻衣子もやる気満々だな。

「よし、一気に巻き返すぞ!」

俺たちがヘルプで加わって、ようやくなんとかなるぐらいのお客さんの量だった。

「光ちゃん、そろそろ休憩したら?」

心配そうな直美。俺は時計を確認した。

「まだ一時半だし、俺は大丈夫だぞ」

「私たちは交代でもうご飯食べてきたから、光司君と直美も休憩してきて」

麻衣子と成美は昼飯食べ終わったのか。

「後は私たちに任せて」

こういう時の成美は頼りになるな。

「じゃあお言葉に甘えて、飯食ってくるわ」

「直美、光司君一人だとすぐ戻ってこようとしそうだから、直美も一緒に行ってきて」

こういう時だけ、麻衣子はするどいなぁ……。

「分かった。行くよ光ちゃん」

「……はい」

俺は直美と教室を出る。

人の数はだいぶ落ち着いてはきてるみたいだ。

「光ちゃん、何食べる?」

「隣でいいか?近いからすぐ戻れるし」

「ダメ。すぐ無理しようとするんだから」

直美は呆れながらパンフレットを見る。

「えーっと、三年二組でカレー屋さんやってるみたいだから、そこにしよ」

「……分かった」

俺たちはカレーを食べに行くことにした。

その後教室に戻った時には既に店は落ち着いていた。

――しかし、なんであんなに混んだんだろう?


「お兄ちゃん」

「なんだ?」

文化祭も無事に終わり、みんなと別れて家に帰ってきた直後だった。

何気ないタイミングで、可織が不意に口を開く。

「お兄ちゃんってさ、好きな人いるの?」

「は? ……なんだよ急に」

「今日のさ、麻衣子先輩の話のとき、ちょっと話題避けてる感じだったから」

「いや、あれはみんな同じ意見だっただろ」

「そうかもしれないけど、なんとなくね」

「別に、誰が好きとか考えたことねぇよ」

「ほんとに?」

「七海は?」

「可織と仲いい、礼儀正しくて大人しい子」

「南先輩」

「口数は少ないけど、気配りできる人」

「麻衣子先輩」

「ちょっとドジだけど、場を明るくするタイプ」

「芦田先輩」

「しっかりしてて、運動もできて、自分持ってる人」

「……じゃあ、直美さんは?」

「直美は――」

一瞬、言葉が止まる。

「……どうしたの?」

「いや……あいつは、幼なじみって感じでしか見たことねぇな」

「そうなの?」

「近すぎると、逆にそういうの考えないもんだろ」

「……それは、あるかもね」

「っていうか、何言わせてんだよ」

誘導ゆうどうに引っかかったのお兄ちゃんでしょ?」

「くそ……」

「別にいいじゃん。妹に聞かれただけだし」

「そういう問題じゃねぇんだよ」

「今さら怒っても遅いって」

「……はぁ」

「じゃあ私、晩ごはんの準備してくるね」

「ああ……」

ぱたん、と軽い足音を立てて可織がキッチンに向かう。

残された部屋に、少しだけ静けさが戻る。

好きな人、か。

今まで、そんなこと考えたことなかった。

みんなで騒いで、笑って、それで十分だと思ってた。

……でも。

それだけじゃ、足りないのかもしれない。

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