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The Best Youth 〜君と一緒に〜  作者: ダークキング


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21/23

大苦戦の喫茶Twenty Three

「いよいよ当日だね」

文化祭当日。

期待と不安が入り混じったまま、いつもの四人で学校へ向かう。

「お客さん、来るかな?」

やる気満々の麻衣子。

「そればっかりは神頼みだな」

「でも、ゼロってことはないでしょ?」

冷静な成美。

「まあな。さすがにそれは困る」

軽く笑いが起きる。

「開店した瞬間、満員とかだったらすごいよね」

「それは期待しすぎだろ」

「夢見すぎ?」

不満そうな麻衣子。

「非現実的だな」

「だよね」

少しだけ現実に引き戻される。

「他のクラスも色々やってるしな」

「うちだけ人が来るってことはないよね」

直美も冷静だ。

「結局、お腹すいた人が来る感じだよね」

「喫茶店だしな」

「それはしょうがないか」

「……ってことは」

「お昼が勝負だな」

空気が少しだけ引き締まる。

「昼にどれだけ入るかだな」

「満員……あるかもね」

目を輝かせる麻衣子。

「そこは期待していいかもな」

「私たち、ご飯どうする?」

直美はもうお昼の心配か。

「四組行くか?」

「いいね、それ」

「他も見て回りたい」

「だな。一通り見て決めよう」

校門が見えてくる。

自然と足取りが少し速くなる。

「……よし」

小さく息を吐く。

「今日と明日、やるしかないな」

「それじゃ――」

「文化祭、スタートだな」

「おお!」

――期待に胸を膨らませながら、俺たちは校門をくぐった。

「いらっしゃいませ。二名様ですか?」

「はい」

「こちらの席へどうぞ」

「二名様ご案内です」

「はーい」

「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください」

「はい」

ひと通り案内を終えて、ふっと息をつく。

「……思ったより来ないな」

「まだ始まったばっかりだし」

直美が自分に言い聞かせるように言う。

そのとき――

「あ!」

見覚えのある二人。

「やっほー!」

「来たよー!」

「……早速か」

「由里姉ちゃん、由佳姉ちゃん!」

意外な来店者に驚く直美。

「光司に聞いたから来ちゃった」

「どこ座ればいい?」

「好きなとこでいいよ」

「はーい」

席に着いた二人にメニュー表を届ける。

「結構空いてるね」

「今はまだな……九時開店だし」

そのとき――

「すいませーん」

「行ってくる」

「紅茶とコーヒー、あとサンドイッチ二つ」

「以上でよろしいですか?」

「はい」

「かしこまりました。少々お待ちください」

振り返って声を張る。

「オーダー入ります!紅茶とコーヒー、後サンドイッチ二つ!」

「はーい!」

調理組もいよいよ本番か。

その直後――

「すいませーん」

由里姉と由佳姉に呼ばれる。

「コーヒーとサンドイッチ、両方二つずつで」

「……相変わらずだな」

「デザートはあとでね」

「いつものやつ?」

「そうそう」

「少々お待ちください」

「オーダー入ります!」

「ちょっと待って!」

調理しながらだと大変だわな。

「私、メモするね」

「助かる」

ちゃんと連携取れてるみたいだな。

「えっと……コーヒーとサンドイッチ二つずつ」

「オッケー!」

少しだけ手が動き出したが、すぐに落ち着く。

「このままだと、午後だけ忙しくなって不公平かもな」

独り言のように呟く。

「どういうこと?」

こんな時でも直美は拾ってくれる。

「午前ヒマな人と、午後ずっと動きっぱなしの人が出るってこと」

「あー……確かに」

「忙しくなったら呼び出してもらうか」

「そうだね。光ちゃんオーナーだし」

そのとき――

「おーい!」

「……はいはい」

振り返ると、由里姉たちが手を振っている。

「コーヒーとサンドイッチ、まだー?」

「今行くよ」

ちょうど出来上がった皿を受け取る。

「お待たせしました」

「来た来た」

「ありがと」

「ごゆっくりどうぞ」

「あとでデザート頼むね」

「はーい」

去り際に、ひと言。

「ちゃんと働きなさいよ?」

この二人にはかなわないなぁ……。

軽く返しながら、店内を見渡す。

――まだ余裕はある。

でも、この静けさがいつまで続くかは分からない。

(……昼が勝負、か)

そう思った瞬間、

入口のほうで、新しい客の影が揺れた。

「そろそろ交代だね」

気がつけば、思った以上に時間が経っていた。

「おーい」

「どうした?」

「交代の時間だぜ」

交代メンバーが到着。

「引き継ぎだけしてくるね」

「廊下で待ってるよ」

1人廊下で待つ。そこへ――

「光司!」

「お、信夫じゃん」

「今から休憩か?」

「ああ。お前は?」

「俺は明日」

「なるほどな」

「誰待ってるんだ?」

「直美たち」

「芦田さんもそろそろ終わるらしいぞ」

「じゃあ、待つか」

――少しして。

「お待たせ」

直美たちが引き継ぎを終えて合流する。

「高橋君もいるんだ」

「ああ、俺は明日担当」

「それじゃ行こう」

「もうすく沙樹も来るみたいだから、ちょっと待ってようぜ」

さらに少しして――

「どうしたの?みんな揃って」

沙樹は少し驚いていた。

「もうすぐ沙樹も来るって聞いたから待ってたの」

嬉しそうな直美。

「ありがとう」

これでほぼいつものメンバーだな。

「じゃあ、どこ行く?」

「何か食べない?」

麻衣子の提案。

「一年四組でたこ焼きやってるよ」

直美が場所を決める。

「いいな、それ」

信夫も乗り気。

「じゃあ決まりだな」

俺たちは一年四組へ向かった。

「たこ焼きいかがですかー!」

「えっと……八パックください」

「四千円になります」

「先に払っとくわ。あとで割り勘な」

一旦全額俺が払う。

「お待たせしました」

たこ焼きを受け取る。出来立てだけあって袋越しでも熱々なのが分かる。

「じゃあ、そのまま可織のクラス行くか」

「ジュースもあるんだよね?」

成美が確認する。

「ああ」

こうして俺たちは可織のいる一年二組へと向かった。

そこには、暇そうにしている可織と七海ちゃんがいた。

「可織!」

「あ、お兄ちゃん」

「先輩たち、こんにちは」

「こんにちは」

教室の中は思ったより落ち着いていた。

「あんまり混んでないんだな」

「まだ序盤だからね。疲れた人が来るのはこれからだと思う」

「なるほどな、はいこれ」

「え?」

「たこ焼き」

「え、買ってきてくれたの?」

「ああ」

「ありがとうございます!」

深々とお辞儀する七海ちゃん。

「ありがと、お兄ちゃん」

「一人五百円な」

何人かは丁度あるが、

「細かいのないから、あとでもいい?」

「いいよ」

序盤は万札しかないこともあるので仕方ない。

可織も俺に払おうとしていたが、

「あ、可織はいいって」

「え?」

驚く可織。

「どうせあんまりもらってないだろ」

「……うん」

「たこ焼きは俺のおごりだ」

「ありがとう」

「優しいお兄ちゃんだね」

麻衣子がからかうように言う。

「まあな」

「自分で言うと台無しだよ」

直美のするどい指摘。

「それは言うな」

軽く笑いが起きる。

「で、飲み物は?」

「あ、あるよ。コーラ、サイダー、オレンジジュース、紅茶、コーヒー」

「結構あるな」

それぞれ注文していく。

「紅茶三つ、コーヒー、コーラ、オレンジジュースが一つずつ」

「……合ってる?」

不安そうな可織。

「完璧」

「紅茶二〇〇円ね」

「はい」

やり取りが続く中――

「可織、七海、交代だよ」

クラスメイトが顔を出す。

「じゃあ、あとは任せて」

「了解」

可織がほっとしたように息をつく。

「やっと休憩だ」

七海ちゃんは胸を撫で下ろした。

「七海、何飲むの?」

「私はコーヒー」

「じゃあ私も」

二人でコーヒーを取ってお金を渡す。

「休憩に一杯ってやつ?」

「そんな感じ」

――クラスメイト相手だと、可織も普通の女の子なんだな。

「可織、たこ焼き冷めるぞ」

「あ、ほんとだ」

一口食べて、表情がゆるむ。

「……美味しい」

「だろ?」

「誰が買ってきたの?」

「お兄ちゃん」

「え?」

一瞬、空気が止まる。

ざわっと周りがざわめく。

「可織、置いてくぞ」

「ちょ、待って!」

慌てて追いかける可織。

その背中を見ながら、誰かがぽつりとつぶやいた。

「……なんか、いい兄妹だな」

「でもさ、文化祭で休憩所ってちょっと面白くね?」

信夫のこの一言から、休憩所談議が始まる。

「一人か二人いれば回るしな」

「その分、交代早くて楽そうだよね」

「ただ、時間管理はちゃんとしないとだね」

「まぁ自由時間は増えそうだけどさ」

「でも儲けはほぼ出ないだろ」

「原価くらいはいけるんじゃない?」

「電気代まで入れると怪しいけどな」

「それより仕入れが難しそう」

「余るのはいいけど、足りないのはまずいもんな」

「それはあるね」

「あの……さっきからみんなの意見で可織ちゃんが困ってない?」

直美の一言で一瞬静かになる。

「そ、そんなことないですよ。いろんな意見あるのはいいことですから」

だいぶ動揺してるなぁ……。

「いや、ちゃんと案出しただけでも十分すごいことだぞ?」

少し考えながら続ける。

「俺らは複数だけど、可織は一人で考えたんだから」

「案の良し悪しじゃなくて、出したことが大事だよ」

「俺なんてほぼ何もしてねーし」

「光ちゃんはオーナーじゃん」

「肩書きだけだけどな」

「でもまとめるのって大変だったんじゃないの?」

そう言う可織の表情は、いつも通りに戻っていた。

「準備だけだな。あとは時間に来りゃいいし」

「来年はもうちょっと文化祭っぽいこと考えよ」

「“文化祭っぽい”って人それぞれじゃね?」

「え?」

「自分でそう思えれば、それで成立だろ」

「……うん、そうかも」

明るい表情になる可織。これでもう大丈夫かな。

「次どこ行く?」

「適当に回ればよくね?」

「いいね、まだ時間あるし」

「でもさ、文化祭で外せないのってあるよね?」

直美の一言で俺の中に眠っている本能が目覚める。

「外でやってるバザー」

「バザー?」

なんで?って顔の麻衣子。

「掘り出し物あるんだよ」

「いや、ないと思うけど……」

成美は少し困惑していた。

「光ちゃん、バザーだけは毎年ガチだよね……」

「小学生のとき当たり引いたみたいですけど、その場のノリで買って、家に放置してるのも多いですよ……」

あきれる可織。

「まぁ、その瞬間は欲しかったんだろうな」

一応フォローしてくれる信夫。

「……直感で動いてる感じだよね」

沙樹も呆れていた。

「正直いらないものの方が多いと思います」

「でも、本人が満足してるならいいんじゃない?」

みんながそんな話をしている時には、俺はすでに外に行くために移動していた。

「……って、あれ?光司君は?」

キョロキョロする麻衣子。

「先に行ったな……」

「光ちゃん、こういうときだけ速いよね」

ときだけは余計だが、俺は一人勝手に突っ走っていた。

――しかし、特にこれといって何もなかったので、直美たちと合流する。

「次どうする?」

「うちのクラス来ない?ちょうどお昼だし」

沙樹が提案する。

「いいね、それ」

麻衣子、食べ物の時は目が輝いてるなぁ。

「でも八人は無理じゃない?」

冷静な成美。

「四人ずつに分けるしかないな」

信夫の一言でメンバー分けを決める。

「ボーリングの時と同じにするか?」

「いいぜ」

俺、直美、麻衣子、成美。

信夫、沙樹、可織、七海ちゃんの二つのグループに分かれることに。

「メニュー何あるの?」

興味津々な麻衣子。

「それは来てからのお楽しみだよ」

信夫が意味ありげに笑う。

「でもさ、クラスの人働いてるのにいいの?」

心配そうに直美が聞く。

「自由時間だから問題ないと思う」

「売上にもなるし」

二人がそう言うなら、それでいいかと思ったが――

「……って、めっちゃ並んでない?」

教室の前に行くと、廊下に人だかりが出来ていた。

「これは無理そうだね……」

十人以上が廊下で待っているのに対して、誰も並んでいないうちのクラス……。

「うちのクラスにするか?」

「そうだな」

全く誰も並んでいない自分たちの教室に行く。

「いらっしゃいませーって、田辺たちか」

ガラガラの教室。

「……こっちは空いてるな」

「隣に全部流れてるんだろうね……」

悲しい現実を突きつけられる。

「俺、サンドイッチと紅茶」

「私はコーヒーとママレードパン」

「私はサンドイッチとオレンジジュースで」

「私はコーヒーとジャムパンでお願いします」

「かしこまり。少々お待ちを」

クラスメイトがオーダーを取り、厨房ちゅうぼうへ行った。

「これ、自分たちで売上出してるだけじゃね?」

「……構造的こうぞうてきにはそうだね」

苦笑いすら出ない。

「でもこのままだと普通にまずいよね……」

焦り気味の麻衣子。

「隣のメニュー借りれるか聞いてくる」

直美が沙樹にメニューを借りに行く。

「……借りてきたよ」

「……チャーハンにオムライス?」

「から揚げもあるよ」

――完全にしてやられた。こっちが太刀打たちうち出来るメニューじゃない……。

「デザートで勝負するしかないね……」

残念そうな麻衣子。

「ケーキはこっちの強みだろ」

「そこに期待だね」

そんな話をしていると、

「お待たせいたしました」

注文した商品が届いた。

「まぁ、とりあえず食べよ」

気を取り直して、俺たちは食べ始めた。

完敗だなこれは……。

「今日はさすがに疲れた……」

「結構回ったもんね」

文化祭一日目が終わった。後片付けと明日の準備を済ませて校門を出る頃には、さすがに足が重い。

「いい運動にはなったけど、これはきついな」

「明日はもう少しのんびり回りたいよね」

いつも元気な麻衣子も疲れた顔。

「そうだな。今日と同じペースだと普通にバテる」

「明日は当番ないのが助かる」

成美も疲れた顔をしていた。

「じゃあ、また明日な」

「ああ、またな」

「バイバイ、成美」

「またね」

成美が手を振りながら帰っていく。

「……それにしても、信夫と沙樹まだ準備してたな」

外はすでに薄暗く、街灯がいとうともり出していた。

「メニュー多かったもんね」

「当番の人数も多そうだな」

「二日とも入ってる人もいそうだよね」

「それはきついな……」

少しの沈黙。

「うちのクラスも明日増えないかな?」

悲しそうに麻衣子が呟く。

「正直、厳しいだろ」

「だよね……」

「まぁ、なるようになるさ」

「じゃあ、私こっちだから」

「ああ、またな」

「またね、麻衣子」

「また明日ね。光司君、直美」

直美と二人になり、少しの沈黙。

「……隣のクラス、あれだけ入ってるとな」

「ちょっと悔しいよね……」

「喫茶店じゃ弱かったか」

「でも、それ選んだの私たちだし……」

夜風がより冷たく感じられた。

「明日、少しでも巻き返せたらいいけど」

「……うまくいくといいけどな」

「売上だけが全てじゃないけど、やるなら人来てほしいよね」

「それは間違いない」

いつも通りの会話のつもりでも、歯切れの悪い会話になる。

「じゃあね、光ちゃん」

「ああ、また明日」

信夫のクラスは大盛況だいせいきょうで、こっちは閑古鳥かんこどり

うまくいかないもんだな……

まぁ、簡単にいったら誰も苦労しないか。

「ただいま」

「おかえり」

「可織のクラス、どうだった?」

「トントンくらいかな。赤字じゃなければいいかなって感じ」

「まぁ、そんなもんだよな」

「別にもうけるためじゃないし」

「それはそうだ」

「お兄ちゃんのとこは?」

「ギリギリ。下手したら赤字」

「大変だね……」

「隣が強すぎるんだよ」

「確かにそうだね……」

「今日は可織がご飯作るのか?」

「うん」

「買い物は?」

「一緒に来てくれたら助かるかな」

「了解。着替えてくるから待っててくれ」

「うん、分かった」

――文化祭のことを考えると気持ちが沈みそうなので、俺は急いで着替えて可織と買い物に行った。

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