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The Best Youth 〜君と一緒に〜  作者: ダークキング


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15/23

新学期、再会は突然に

「おはよう」

「おはよう」

夏休みも終わり、今日から二学期。

暑さはあるが、夏休み前ほどではない。

「ついに夏休みが終わっちゃったな」

「……そうだね」

そこへ――

「二人とも……おはよう!」

少し息を切らした麻衣子が追いついてくる。

「寝坊か?」

「ちょっとだけね。夏休みのくせが抜けなくて」

「今日は始業式だけだし、問題ないだろ」

そんなことを話していると――

「おーい!光司!」

「お、信夫」

……様子がおかしい。

「どうした?そんなあわてて」

「転校生だ」

「……は?」

一瞬、空気が止まる。

「お前らのクラスに来るらしい」

「またかよ」

思わず声が出る。

「なんでも元々人数少なかったからだってさ」

「なるほどな……」

「じゃあな!また後で!」

信夫はそれだけ言って走り去っていった。

「情報早いね」

「だな」

そのとき、直美がぽつりと言う。

「……リムジン」

「あっ」

思い出す。

「前に、学校の校門近くに止まってたやつか」

「うん」

「じゃあ……お嬢様の可能性あるな」

「でも男かもしれないよ?」

「どっちにしても、すごい人来そうだね」

少しだけ、教室に向かう足取りが軽くなる。

教室。

「起立、礼、着席」

先生が入ってくる。

廊下には人影が見えた。

「おはよう。早速だが転校生を紹介する」

ざわつく教室。

「入っていいぞ」

「はい」

――その瞬間。

ドアから入ってきた姿を見て、

俺は一瞬、息を止めた。

(……あれ?)

どこかで見たことがある。

「自己紹介を」

南成美みなみなるみです。よろしくお願いします」

静かで落ち着いた声。

(やっぱり……どこかで――)

「南はあそこの席だ」

――俺の、後ろ。

「また後ろの席かよ……」

「光司君、転校生にえんがあるんだね」

麻衣子と小声でやり取りしつつ、振り返る。

「……あ」

目が合う。やっぱり……どこかで見たことがある。

「……どこかで会ったよな?」

半信半疑はんしんはんぎで聞いてみる。

「……夏祭りで」

「――あっ!」

一気に思い出す。

「あのときの……!」

「はい」

少しだけ、柔らかく笑う南さん。

「よろしく」

「こちらこそ」

「私は高木麻衣子」

俺の後ろから顔を出す麻衣子。

「坂本直美です。よろしくね」

隣の直美もすぐに自己紹介する。

「はい……」

まだ少し緊張している様子。

「困ったことあったら言ってね」

優しく微笑む直美。

「そんなに固くならなくていいよ」

麻衣子も転校生だけど、全く固くなかったもんな。

少しずつ南さんの表情が和らぐ。

「……うん」

――よかった。

ちゃんと話せるタイプだな。

少しして、俺は気になっていたことを聞く。

「一つ聞いていいか?」

「何?」

「南さんって……お嬢様?」

「え?」

一瞬きょとんとする。

「前に、学校の近くにリムジン止まってたからさ」

「ああ……」

少し困ったように笑う。

「そこまでじゃないよ」

「そこまでって?」

思わずキョトンとしてしまった。

「家が大きいって言われるくらい」

「南さんの家って……どこにあるの?」

桜公園さくらこうえんがあった場所」

「……え?」

一瞬、理解が追いつかない。

桜公園ってめちゃくちゃ広かったはずだけど……。

「……あそこ全部?」

「たぶん」

「それ、もう家じゃなくて屋敷じゃん!」

思わず声が出る。

「田辺!うるさいぞ!」

「すいません!」

教室に小さな笑いが起きる。

「なぁ、帰り一緒に帰らないか?」

「いいの?」

驚いた表情の南さん。

「ちょっと場所気になるしな」

「……うん。いいよ」

少しだけ嬉しそうに頷く。

「そういえば、いつ引っ越してきたんだ?」

「夏休みの途中から」

「じゃあ、あの日が初祭りか」

「そう。たこ焼き買いに行ってたときに――」

「俺にぶつかった、と」

「はい」

バツの悪そうな顔をする南さん。

「悪かったな、あのとき」

「ううん。大丈夫」

軽く笑う南さん。だいぶ緊張ほぐれたかな?

「光ちゃん、あのとき走ってたよね」

当時のことを思い出す。

「信夫追いかけてたからな……」

「理由が子供っぽいね」

からかうように笑う麻衣子。

「うるさい」

小さく笑いが起きる。

「続きは昼休みにするか」

チャイムが鳴る。

――新しい日常。

でも、

ちょっとだけ、何かが変わりそうな気がした。

昼休み。

俺たちはいつも通り屋上へ向かう。

――ただ一つ違うのは、

今日は“新しいメンバー”がいること。

「お、きたきた」

先に来ていた信夫が手を振る。

「その子が転校生か?」

「みたいね」

紗樹も興味深そうに南さんを見る。

「えっと……」

少し緊張した様子の南さん。

「この二人は――」

「高橋信夫。よろしくな」

「芦田紗樹です。よろしくね」

「南成美です。これからよろしくお願いします」

一瞬の間。

「そんな固くならなくていいって」

苦笑いする信夫。

「ここ、そんな堅苦しい集まりじゃないからさ」

優しく微笑む紗樹。

南さんの表情が少しだけ緩む。

「……うん。よろしく」

その変化を見て、なんとなく安心する。

「じゃあ、飯にするか」

「そうだね」

それぞれ弁当を広げる。

少し風が吹いているが、いつもの屋上の空気。

――だけど、どこか新鮮だ。

「南さんって家どこなの?」

さっそく信夫が切り込む。

「私の家は、昔桜公園があった場所だよ」

「は?」

一瞬、信夫と沙樹の動きが止まる。

「桜公園って……あの?」

「結構大きかったよね?」

紗樹も食いつく。

「うん。その場所」

「……いや、でかすぎだろ」

思わずツッコむ信夫。

「それ家ってレベルじゃないよね」

沙樹も驚きを隠せないようだ。

「ほぼ施設じゃん」

「そんなに?」

成美は少し首を傾げる。

――自覚ないタイプか。

「なぁ、今日みんなで見に行かないか?」

「光司ナイス!」

信夫が即乗り。

「私も部活休みだし行けるよ」

沙樹も行けるのか!

「決まりだな」

どんどん話が進んでいく。

「……いいの?」

ふと、南さんが小さく聞く。

少しだけ遠慮えんりょがちな声。

「もちろん」

「むしろ気になるし」

「そうそう。気にすんなって」

みんなの言葉に、

「……じゃあ、一緒に帰ろう」

少しだけ、安心したように笑った。

「今日はにぎやかな帰り道になりそうだね」

麻衣子の一言に、

「ああ、間違いないな」

と答えながら――

ふと、直美を見る。

「……」

直美はいつも通り笑っている。

けど、

ほんの一瞬だけ、

何かを考えているような顔をした気がした。

「あれ?信夫だけか?」

放課後、校門前。

「芦田さん、部活の後輩に捕まったらしい」

「そっか……」

残念がる麻衣子。

――そのとき。

ブーブーブー

「おっと」

信夫のスマホが鳴る。

「……マジか」

「どうした?」

「親から買い物。しかも急ぎ」

「お前もかよ」

「悪い!今日はパス。じゃあな!」

言うが早いか、全力ダッシュで消えていった。

「……嵐みたいなやつだな」

「ほんとだね」

苦笑いする直美。

「じゃあ、三人で行くか」

しばらく歩いて――

見えてきた。

「……おい」

「え?」

驚いたように返事をする南さん。

「あれが……家か?」

「うん」

「……マジで?」

目の前にあるのは、

もはや“家”というより“邸宅ていたく”。

「すごい……」

「想像以上なんだけど」

直美も麻衣子も、言葉を失っている。

「……そんなにかな?」

――やっぱり、感覚が違う。

「よかったら、寄ってく?」

「いいの?」

嬉しそうな麻衣子。

「うん。誰もいないし」

「ご両親は仕事?」

直美が確認する。こいつ若干人見知りするとこあるもんな。

「うん……遅いよ」

一瞬だけ、間が空く。

「じゃあ、お邪魔しようかな」

その言葉に、嬉しそうに微笑む南さん。

「どうぞ」

「お、お邪魔します……」

玄関に入った瞬間、

全員の足が止まった。

「……広っ」

高い天井。清潔感漂う綺麗な玄関。

玄関だけで、普通の家の一部屋分はある。

「この広さならかくれんぼ出来そうだ」

思ったことが口から出てしまった。

「スリッパ、これ使って」

並んでいる数――明らかに多い。

「……何人分あるんだよ」

「パパの会社の人が来ることあるから」

苦笑いする南さん。

「規模が違うな……」

「こっち、リビング」

案内された先は、

広いリビングなのに、生活音がほとんどしない。

食器棚にたくさんのティーカップが並んでいるが、どれも新品のように見えた。

時計の音だけが、やけに響いている。

その静けさが、妙に印象に残った。

こんな世界もあるんだな、と思った。

でも――

南さんは、少し寂しそうだった。

「……すご」

麻衣子がぽつりと漏らす。

「こんな家、初めて見た」

直美も珍しく素直に驚いている。

そのとき。

「……ごめんね」

南さんが小さく言った。

「え?」

「なんか、びっくりさせちゃって」

少しだけ申し訳なさそうに笑う。

「いや、謝ることじゃないだろ」

驚きながらフォローする。

「むしろテンション上がるよ」

麻衣子は嬉しそうに言う。

「うん、すごいよ普通に」

直美もしっかりフォローしてくれた。

でも、

南さんは少しだけ視線を落とす。

「……あんまり、こういうので距離できるの嫌で」

その一言で、

空気が少し変わる。

「大丈夫だろ」

俺は軽く言う。

「え?」

驚いた顔をする南さん。

その瞳には、今にも涙があふれそうに見えた。

「家がでかいからって、南さんが変わるわけじゃないし」

「……」

「それに――」

「夏祭りでぶつかったときと何も変わってないだろ?」

一瞬、間。

それから、

「……ふふ」

南さんが、初めて自然に笑った。

その笑顔は夏祭りで見たときより、ずっと柔らかい顔だった。

「確かに」

みんなが少し笑う。

「……よかった」

南さんがぽつりと言う。

「転校してきて、ちょっと不安だったから」

安心したのか、少し涙ぐむ南さん。

「まぁ、最初はそんなもんだろ」

「私も転校生だし、これから仲良くしよ」

満面の笑みで麻衣子が言う。

――お前はコミュニケーションお化けだから、すぐ馴染んでたけどな。

「うん」

嬉しそうに南さんが頷いた。

そのとき、

ふと直美を見る。

「……」

直美は笑ってはいるが、その視線は少し遠くを見ているように思えた。

「それじゃあ、そろそろ帰ろうか」

長居ながいしたら迷惑だし」

「そんなことないよ」

気づけば、もう一時間。

――あっという間だった。

少しだけ名残惜なごりおしそうな南さん。

やっぱり初日ってのは不安だったんだろうな。

「ねぇ、今度の日曜日、みんな予定ある?」

「え?」

南さんが突然の提案。

「私は空いてるよ」

「私も」

「俺も大丈夫」

「じゃあ……遊びに来てよ」

少し遠慮えんりょがちに、でもどこか嬉しそうに言う。

「いいのか?」

「うん。今日来れなかった人もいるし」

――なるほど。

ちゃんとみんなのこと考えてるんだな。

「じゃあ信夫と紗樹にも聞かないとな」

「あと可織ちゃんたちも呼んであげたら?」

直美がナイスな提案。

「可織ちゃん……?」

少しきょとんとする南さん。

「俺の妹」

「あ、そうなんだ」

「もちろん、来てほしいな」

微笑む南さん。

「ありがとう」

「それじゃあ、またね――成美」

「え?」

「私のことも麻衣子でいいよ」

「私も直美で」

「うん!」

少しずつ、距離が縮まっていく。

「田辺君も……光司って呼んでいい?」

「いいよ」

「やった」

嬉しそうに笑う南さん。

「じゃあ……俺も成美で」

「……うん」

一瞬だけ照れたように笑う。

「じゃあまた明日」

「うん、バイバイ光司」

手を振る成美。

その表情は――

朝よりも、ずっと明るかった。

「……いいやつだな」

歩き出して、ぽつりと呟く。

「そうだね」

「うん」

二人とも同意する。

「でもさ」

麻衣子が少し考えるように言う。

「ちょっとだけ、寂しそうだったよね」

「……ああ。家が大きいからかな?」

「それだけじゃないと思うけどなぁ……」

直美が静かに言う。

「え?」

「……なんでもない」

まただ。

――何か気づいてる顔。

「まぁ、日曜になれば分かるだろ」

「そうだね」

分かれ道。

「じゃあ私こっちだから」

「ああ、また明日」

「うん」

麻衣子は手を振って帰っていった。

その直後。

「お兄ちゃん、何してたの?」

「うおっ!?」

振り返ると可織。

「いつからいたんだよ」

「さっきから」

全然気づかなかった。

「直美さん、こんばんは」

「こんばんは」

「どこ行ってたの?」

「友達の家」

「ふーん……」

少しだけ興味ありげな目。

「今日転校生来ただろ?」

「あ、うん。噂は聞いた」

「その子の家」

「え!?」

やっぱり驚くよな。

「今度の日曜、みんなで行くことになった」

「……私も?」

「ああ」

「……そっか」

視線を落とす可織。

一瞬の沈黙。

でもすぐに――

「楽しそうだね」

いつもの笑顔に戻る。

「じゃあ七海ちゃんにも言っといてくれ」

「うん、分かった」

直美の家の前。

「じゃあまた明日」

「うん」

笑顔で手を振る直美。

帰り道。

「……いい人?」

可織がぽつり。

「何が?」

「転校生の人」

「まぁな」

「お兄ちゃんってさ」

少しだけ笑う可織。

「ほんと誰とでもすぐ仲良くなるよね」

「そうか?」

少しだけ、意味ありげな言い方。

「……でも」

「ん?」

「それがいいところなんだと思うよ」

「なんだそれ」

「早く帰ってご飯作らないと」

足を速める可織。

夕焼けの帰り道。

いつもと同じはずなのに、

どこか少しだけ違う空気。

(……なんか、変わり始めてるな)

そんな気がした。

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