表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Best Youth 〜君と一緒に〜  作者: ダークキング


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/24

変わらない関係、揺れ始める距離

「おはよう」

「おはよう」

今日は、成美の家に遊びに行くことになっている。可織は七海ちゃんを迎えに行く約束をしているため、俺たちは桜マンションで待ち合わせすることになっていた。

「可織、準備できたか?」

「うん。大丈夫だよ」

「そろそろ行くぞ」

「うん。あっ、ちょっと待って」

「早くしろよ」

「ちょっとぐらいいいでしょ?」

「そろそろ行かないとまずいんじゃないのか?」

「今何時?」

「十時五分」

「え?もうそんな時間なの!」

「十時二〇分に桜マンションなんだから、急がないと間に合わないぞ」

「うん」

「行くぞ!」

「わっ、お待たせ」

軽く走り出しながら、俺はため息をつく。

「もう少し早くから準備しろよ」

「ご、ごめん」

「直美が心配するぞ」

「直美さん、心配性だからね」

「……とはいえ、全力で走るほどでもないか」

「そうだね」

「二〇分に桜マンションだから、五分後には直美の家に着かないといけない」

「走る?」

「だな。このままだと間に合わない」

「しょうがないか」

「可織のミスだもんな」

「うぅ……」

少しだけペースを上げる。だが一分ほど走ったところで、自然と足を緩めた。

「これなら、あとは歩いても間に合うな」

「うん。それにそんなに遠くないもんね」

「五分ちょっとだしな」

「それにしても、南さんの家ってそんなに大きいの?」

「当たり前だろ。桜公園さくらこうえんがあった場所なんだから」

「あれ一帯が家?」

「ああ、ほぼな」

「大きすぎでしょ……」

「普通じゃないレベルだぞ」

「あっ、光ちゃん!」

顔を上げると、家の前で直美が手を振っていた。

「あ、直美さんだ」

時間通り、きっちり待っているあたりが直美らしい。

「少し遅かったね」

「可織の準備が長くてな」

「そうなの?」

「はい……」

「まぁ、女の子は時間かかるもんね」

「それは分かるけど、遅れていい理由にはならないだろ」

「それはそうだね」

「信夫たち、もう来てるかもな」

「そこまで早くないでしょ」

「でも、着くころには来てると思うぞ」

「来てなかったら遅刻だよ?」

「それもそうか」

「いつも光ちゃんか私が一番だもんね」

「早すぎなんですよ」

「時間ぴったりよりはマシだろ」

「たまたまだよ」

「はいはい」

「ねぇ、前歩いてるのって高橋先輩じゃない?」

前方に見覚えのある背中があった。信夫だ。

あいつの家は逆方向のはずなのに、なぜか俺たちの前を歩いている。

「あ、ほんとだ」

「おーい信夫!」

「ん?光司たちか」

「なんでこっちにいるんだ?」

「本屋に行ってた」

「何も持ってないけど?」

「今日は立ち読み」

「なるほどな」

「おはようございます」

「おはよう」

「そろそろ着くな」

「ああ」

桜マンションの前には、すでに麻衣子と七海ちゃんの姿があった。

「あ、もう来てる」

「七海!」

「あ、可織。おはよう」

「おはよう」

「沙樹が来たら全員揃うね」

「麻衣子、後ろ」

振り返ると、紗樹が静かに歩いてきていた。

「遅くなりました」

「後ろから来てたんだ」

「そういうこと」

「おはよう」

「おはよう、直美」

「それじゃ、行こうか」

「ああ」

こうして無事に全員集合した。

そして、俺たちは成美の家へと向かった。

「それにしても、大きい家なんだろうな」

「信夫も気になるか?」

「俺もって?」

「朝から可織が同じこと言ってた」

「なるほどな」

「でも、ほんとにそんなに大きいのか?」

「かなりな。もう豪邸ごうていってレベルだ」

「そこまでかよ」

「もうすぐ着くぞ」

「そんなに近いの?」

「そうよ。私、さっき見てきたから」

紗樹がさらっと言う。どうやら下見済みらしい。

「どうだった?」

「……想像以上。かなり大きいわよ」

「楽しみだな」

前方に視線を向ける。

すでに目的地は見えているはずなのに、誰も気づいていない。

「もう見えてるぞ」

「え?」

「あれだよ」

俺が指さすと、全員の視線がそちらに集まった。

「あ、あれ……?」

「ああ。あの家だ」

一瞬、誰も言葉を失った。

「……デカすぎるだろ」

「想像の倍はあるな」

「いや、倍どころじゃないでしょ……」

「普通じゃ考えられない大きさだよ」

「何人住んでるの?」

「三人らしい」

「三人でこれ!?広すぎだろ……」

俺も思わず苦笑する。

三階建てのあの広さを三人で使うなんて、正直スケールが違いすぎる。

――まぁ、本人にとってはこれが普通なのかもしれないが。

「さて、と」

門の前に立ち、インターホンに手を伸ばした――そのとき。

「いらっしゃい」

先に扉が開いた。

「おっと、押す前だったか」

「来るの見えてたから」

どうやら、到着を待っていてくれたらしい。

「南さんの家って、本当に大きいんだね」

「ありがとう。でも、そんなに大きくないよ」

「え?これで?」

思わず聞き返す。

「前に住んでた家はこれより小さかったけど、もっと大きい家は近くにあったから」

「なるほど……感覚が違うわけか」

「そういうこと」

そこでふと思い出す。

「そういえば、まだ自己紹介してないのは可織と七海ちゃんだな」

「そうだね。他のみんなは一度会ってるし」

「えっと、こっちが妹の可織。で、その隣がクラスメイトの七海ちゃん」

「よろしくね」

「よろしくお願いします」

これで全員の顔合わせは完了だ。

「それじゃあ、入って」

少しだけ緊張した様子で、成美が中へと促す。

「お邪魔します」

中に足を踏み入れた瞬間、思わず息を呑んだ。

――やっぱり、広すぎる。

一度来たことがあるはずなのに、慣れる気がしない。

「ほんとに広いな……」

信夫も圧倒されているようだ。

「中も広いし、部屋も多いよね」

「この前数えたら、二十八部屋あったよ」

「そんなに!?」

普通の家では考えられない数だ。これだけあれば、どの部屋が何用か分からなくなりそうだ。

「そんなにあるなら、使ってない部屋もあるんじゃないか?」

「うん。何部屋かは空いてるよ。お客様用だから」

「なるほどな」

「とりあえず、お客様用の部屋に行こうか」

「ああ」

「二階でいい?」

「あ、ああ。どこでもいいよ」

「じゃあ二階で」

「お客様用って何部屋あるんだ?」

「たしか十部屋くらい」

「多いな……」

「そんなに人来るのか?」

「パパのお友達とか、いろんな人が来るから」

「それなら必要か」

「全部使うこともあるの?」

「何回かはあるよ」

「どうぞ」

「うわ、ここも広い」

「しかもキレイ」

「ソファーまであるし……」

「完全にお金持ちの家だな」

「ありがとう。飲み物入れてくるけど、何がいい?」

「俺は紅茶」

「俺も」

俺と信夫はいつもの紅茶。

「私はコーヒー」

「私も」

「私もコーヒー」

直美、紗樹、麻衣子はコーヒー派。

「私は紅茶で」

「私も」

可織と七海ちゃんも紅茶。

「分かった」

「あ、私も手伝うよ」

「私も」

「ありがとう。それじゃ、ちょっと待っててね」

直美と沙樹と成美の三人はキッチンへ向かった。

「それにしても、広いな」

「それしか言えないよな」

「せいぜい“キレイ”が追加されるくらいだ」

「だな」

「私も行けばよかったかな……」

麻衣子が少し申し訳なさそうに言う。

「大丈夫だろ。二人も行ってるし」

「そうですよ。私たちも残ってますし」

「だね」

「それにしても……この家、いくらくらいするんだろうな」

信夫がぽつりとつぶやく。

「新築なら五千万くらい?」

「いや、一億はいくんじゃないか?」

「そこまではいかないだろ」

気づけば全員が値段の話に乗っていた。

「成美、知ってるのかな?」

「さあな」

「聞いてみる?」

「どうせならクイズにしようぜ」

「いいね、それ」

「賛成!」

いつの間にか、値段当てクイズが始まっていた。

「いくらくらいだろうな……」

「七千万くらいかな」

「その辺だろうな」

「お待たせ」

「……」

「どうしたの?」

三人が戻ってきたことに、誰も気づいていなかった。

「成美、この家の値段って分かるか?」

「えっと、だいたい――」

「ストップ!」

「え?」

「値段は言わなくていい。分かるかどうかだけ教えてくれ」

「だいたいなら分かるよ」

「よし、OKだな」

「何が?」

三人は状況が飲み込めていない。

「題して、南家値段当てクイズ」

「値段?」

「この家の?」

直美と紗樹は少し呆れ気味だ。

「何かに書く?」

「携帯でいいんじゃないか?」

「そうだね」

「……って、直美って携帯持ってなかったよな?」

「うん。もうすぐ買う予定だけど」

「マジか。珍しいな」

「ついにデビューだね」

「そういうこと」

「じゃあ、直美は紙で」

「ありがとう」

「それじゃあ、シンキングタイム!」

「最低でも五千万は超えるよな……」

「八千万くらい?」

「いや、一億もありえるな……」

それぞれが小さくつぶやきながら考え込む。

――数分後。

「そろそろ決まったか?」

「うん」

「OK」

「決まった」

どうやら全員、答えは出たようだ。

「みんな決まったか?」

「うん」

「OK」

「決まった」

「はい」

どうやら全員、答えは出たようだ。

「よし、順番に発表していくか」

「光司から時計回りな」

「つまり俺、直美、沙樹、可織、七海ちゃん、麻衣子――」

「おい、俺を忘れるな」

「言わなくても最後って分かるだろ?」

「そういう問題じゃないだろ」

「まぁまぁ」

「光ちゃんもだけど、高橋君も落ち着いて」

「そうだよ」

小さな言い合いは、あっさり収まった。

「じゃあ、光司から」

「ああ。俺は――八五〇〇万」

広さを考えれば、妥当なラインだろう。端数の五〇〇万は、なんとなくだ。

「微妙な額だな」

「そうか?」

「私は七八〇〇万」

直美はさらっと答える。

「私は八一〇〇万」

沙樹はさらに細かく刻んできた。

「私は七〇〇〇万」

可織はシンプルに。

「私は七五〇〇万」

七海ちゃんも中間を狙う。

「私は一億」

麻衣子は思い切って大台に乗せた。

「俺は九〇〇〇万」

最後に信夫。

これで全員出そろった。

「で、成美。誰が一番近い?」

全員の視線が集まる。

「……近いどころか、正解者がいるよ」

「マジで!?」

「え?」

「うそでしょ」

場が一気にざわついた。

まさか“ニアピン”どころか、ドンピシャが出るとは。

「いきなり答え言うのも面白くないな。まずは何千万台かだけ教えてくれ」

「そうだね」

成美は少し考えてから、

「八〇〇〇万台」

と答えた。

「ってことは……俺か沙樹か」

「そうなるな」

「だね」

どちらか一人に絞られた。

「でも、正解は田辺君だと思う」

沙樹が言う。

「なんで?」

「細かくないから」

「単純だな」

「でも、そういうのって当たる気がする」

確かに一理ある。とはいえ、こういうのは逆に細かいほうが当たる気もする。

……まあ、正直なところ、俺は深く考えてないんだけど。

「じゃあ、成美。どっちだ?」

「芦田さん――」

一瞬、間があって。

「……以外」

「え?」

全員が固まる。

「――っていうのは嘘で、光司だよ」

「なんだそれ!」

「やっぱりね」

「そうなると思った」

見事に振り回された。

「でも、なんで分かったの?」

「この広さなら、これくらいかなって思っただけ」

「適当かよ」

「だから、まぐれだよ」

「まぁ、そんなもんだよな」

「家の値段なんて普通当てられないし」

こうして、南家値段当てクイズは幕を閉じた。

――と、そのとき。

「ねえ、前に光司が言ってたやつ、やる?」

「やつ?」

「かくれんぼ」

「ああ……そんなこと言ったな」

前に来た時、あまりの広さに思わず言った。

この広さなら、確かに面白そうだ。

「やるやる!」

「いいね、それ」

「絶対楽しいでしょ」

予想以上に食いつきがいい。

どうやら、次のイベントは決まりらしい。

「人数も多いし、結構楽しめると思ってさ。ちょっと子供っぽいけど」

「たまにはいいと思うよ」

「うん、楽しそう」

「でも、この広さだと探しきれないんじゃないですか?」

もっともな意見だ。

「じゃあ、この階だけにするか、一階と二階に限定しよう」

「それならいけそうだね」

「賛成!」

「じゃあ鬼決め――」

「その前に!」

成美が手を挙げた。

「どうした?」

「入っていい部屋、決めさせて」

「ああ、なるほど」

「確かに」

「お父さんとお母さんの部屋はなしね。基本はお客様用の部屋だけで」

「了解」

「それで何部屋くらいあるんだ?」

「ここを除いて十一部屋」

「ほとんど使えるな」

「うん」

「じゃあ、始めるか!」

「おー!」

「最初はグー、じゃんけんぽん!」

数回のあいこのあと――

「……結局、俺か」

「光ちゃん、弱いね」

「また負けたのか」

「え?」

成美だけが首をかしげる。

「前も負けてるんだよ、こいつ」

「へえ、そうなんだ」

……放っとけ。

「じゃあ俺が鬼な。三十秒数えるぞ」

「え、短くない?」

「いいから」

「一、二、三――」

「もう数えてる!?」

「早いって!」

「一〇、一一、一二……」

「急げ急げ!」

「どこにする!?」

慌ただしく足音が散っていく。

「二七、二八、二九、三〇……よし」

さて、開始だ。

まずは一番近い部屋から。

(最後に声が聞こえたのは可織だったな……)

ドアを開ける前に、なんとなく分かった。

「ここだな。可織、クローゼットだろ」

「え!?ちょっ――」

ガチャ。

「はい、見っけ」

「なんで分かるの!?」

不満そうな顔。

「兄の勘」

「そんなのあるの?」

「あるある」

本当は、昔から同じ場所に隠れる癖を知ってるだけだけど。

「じゃあ次は私が鬼?」

「そうなるな」

「え~……」

「怒るなって。一番分かりやすかっただけだ」

――さて。

(可織がこの部屋ってことは……)

「この辺りか?」

「あっ」

「やっぱり。七海ちゃんもいた」

「バレましたか……」

カーテンの後ろ。定番だ。

「だいたい一緒にいるから、同じ部屋かなって」

「なるほど」

「じゃあ次は直美だな」

次の部屋へ。

(直美は昔から……)

ガラッ。

「押し入れだな」

「えっ、なんで!?」

「幼なじみなめるな」

「何それ……」

本当は“布団はさすがに入らない”って消去法だけど。

(でもこの反応……)

「……この部屋、もう一人いるな」

「え!?いないよ!?」

分かりやすい。

「ここだろ」

「きゃっ」

「やっぱり沙樹か」

「完敗ね……」

「残りは三人か」

部屋をいくつか回る。

そして――

「信夫、いるのバレてるぞ」

「……」

「テーブルの下、丸見えだ」

「ちぇ、見つかったか」

「お前は隠れる気あるのか」

「あと二人……」

そのとき。

「麻衣子いるじゃん」

「え!?」

「マジかよ!」

部屋の奥、体育座り。

「見えてるって」

「高橋君が来たから安心してたのに……」

「残念だったな」

「ラスト一人……成美か」

「強敵だね」

「ラスボスだな」

少し考える。

(全員二階……ってことは)

「一階か」

一階を回っていくと、ひとつだけ異質な部屋。

「なんだここ……」

物が山積みだ。

「……ここだな」

「え?」

「いた」

「どうして分かったの?」

「隠れやすい場所は限られる。で、その中で一番いいのが――そこ」

タンスの裏。

「通れる場所をたどれば、自然とここに来る」

「すごいね……」

「まぁな」

「よし、全員発見」

「お疲れ~」

「早かったね」

「次は可織が鬼だな」

「えぇ……」

「頑張れよ」

「うん……」


「今日は来てくれてありがとう」

「ああ。楽しかったよ」

「私も」

結局あの後は、可織が鬼になってかくれんぼを再開し、その後は直美、沙樹、信夫と順番に鬼を回していった。隠れる場所が多い分、探すのに時間がかかり、鬼は五人で終了となった。

「それじゃあ、また明日」

「またね、成美」

「失礼します」

「バイバイ」

気がつけば、時計の針は午後六時を指していた。かくれんぼというのは、思っている以上に時間が過ぎるのが早い。

「それじゃあ、行くか」

「結構長くいたね」

「もう六時だもんな」

「でも、まだ明るいね」

「九月なのにね」

「でも、暗くなるのは早いし、さっさと帰ったほうがいいな」

「それじゃあ、私はこっちだから」

「俺も」

成美の家の前で、信夫と沙樹とは別れることになった。

「それじゃあ、また明日」

「バイバイ、沙樹、高橋君」

「失礼します」

「さようなら」

「また明日」

「うん。バイバイ」

二人を見送り、俺たちも家路につく。

「それにしても、あれだけ隠れる場所がある家ってすごいな」

「探すの大変だったもん」

「広かったですからね」

「七海は鬼にならなかったからラッキーだね」

「私も鬼にならなかったよ」

「麻衣子もずっと隠れる側だったし、楽しかったでしょ?」

「うん。でも、一回くらい鬼もやってみたかったな」

「そうなの?」

「うん。見つける側もやりたかった」

「まあ、そればっかりは運だからな」

「最初に見つかった人が鬼になるもんね」

「だから今回鬼にならなかったのは、運が良かったってことだな」

「そうなるね」

「今度はもう少し狭い場所でやるのも面白そうだな」

「次はいつだろうね」

「まあ、近いうちにできたらいいほうだろ」

「とりあえず、テスト終わってからだね」

九月に入って一週間。テストまで、あと二週間ほどだ。

「もうすぐテストだもんな」

「勉強しなきゃ」

「赤点はごめんだからな」

「テストっていつからだっけ?」

「九月二十八、二十九、三十」

「ってことは、もう二週間前か」

「めんどくさいなぁ」

「それでもやらなきゃね」

「やらないと自分に返ってくるし」

「光ちゃんもちゃんとやるんだよ」

「ああ」

テスト前か。学生の本分とはいえ、やっぱり勉強は面倒だ。だが、サボれば赤点というもっと面倒な結果が待っている。結局、やるしかない。

「私もしっかりやらなきゃ」

「次に集まるのは、テスト最終日くらいかな」

「それくらいだね」

「それじゃあ、私たちはこっちだから」

気づけば桜マンションの前まで来ていた。

「ああ、また明日」

「また明日ね、光司君、直美、可織ちゃん」

「はい。また明日」

「田辺先輩、坂本先輩、失礼します」

「それじゃあね、七海」

「うん。また明日」

元気よく手を振って帰る麻衣子と、丁寧にお辞儀をしてから帰る七海ちゃん。対照的な二人だが、一緒に帰っていく姿を見る限り、仲は良さそうだ。

「早く帰らないと真っ暗になるね」

「って言っても、もうすぐ家に着くけどな」

「十分くらいだね」

「そんなもんだろ」

「つまり、急いでもあまり変わらないってことだね」

「そういうことだな」

「でも、今日は楽しかった」

「久しぶりにかくれんぼしたしね」

「この年になると、普通やらないからな」

「高校生だもんね」

「せいぜい中学までだろ」

「でも、あの家なら楽しいよね」

「ああ。久しぶりだったのもあって、余計にな」

「光ちゃんが一番早かったんじゃない?」

「そうか?」

「そうだよ。私なんて結構時間かかったし」

「可織は遅かったな」

「でも、光ちゃんって昔からかくれんぼ得意だったよね」

「そうだったか?」

「見つけられずに終わったこと、ないでしょ?」

「……確かにないな」

「それに、ほとんど迷わず来るし」

「隠れそうな場所を先に考えてるだけだ」

「普通そこまで考えないと思うよ?」

「そうか?」

「そうだね。あんまりしないかな」

「そんなもんか」

「そんなもんです」

そんな話をしているうちに、直美の家に着いた。

「それじゃあ光ちゃん、可織ちゃん。また明日ね」

「ああ。また明日」

「さよなら、直美さん」

「バイバイ」

直美を見送ると、辺りはすっかり暗くなっていた。

「いつの間にか暗くなってるな」

「ほんとだね」

「日が暮れ始めると早いな」

「もう秋だもんね」

「そうだな」

「もう高校生になって半年くらいか」

「可織が入学したのが四月だからな」

「あっという間だったね」

「それだけ楽しいことが多かったってことだろ」

「そうだね」

そうして、俺と可織も家に着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ