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縁界《ENKAI》|人を残した魔神は、壊れた縁を選ぶ  作者: 玲皇


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第28話:見上げた空は、死だった

ラグナードの視界が、白く焼ける。


落ちた雷は、ただの光じゃなかった。


空間そのものを削るように、世界が裂けている。


「……っ……!」


息が遅れる。


音が、遠い。


身体が反応するより先に、本能が叫んでいた。


(無理だ……これ……)


目の前にいる“黄色と黒”。


それはもはや生き物の形をしていない。


空そのものが、意思を持っているようだった。


「動ける?」


アズレリアの声が背後から落ちる。


冷静だった。


いや、冷静すぎる。


まるでこの状況を“前提として知っていた”みたいに。


ラグナードは歯を食いしばる。


「……動けるとか……じゃねぇ……!」


声が震える。


足元が、焼けるように熱い。


それでも、立っている。


いや、立たされている。


赤い炎。


それが、足元にある。


炎のブーツ。


踏み出すたびに、地面が歪む。


(行ける……まだ……)


一歩。


踏み込む。


ドンッ。


空気が爆ぜる。


次の瞬間、視界が消えた。


雷。


上からではない。


“全方向”だった。


「っ——!」


アズレリアの影が横に滑る。


回避。


最低限。


ラグナードは遅れる。


いや、遅れさせられている。


(速すぎる……!)


見えていない。


動きじゃない。


現象だ。


プテラが動いた“結果”だけが空間に残る。


ズドンッ!


地面が吹き飛ぶ。


ラグナードの身体が浮く。


「くっ……!」


炎のブーツが反応する。


空中で無理やり姿勢を作る。


着地。


だが、その瞬間。


もう“そこにいる”。


「早いっ……!」


反射で炎を振る。


ボッ!!


赤い炎が横に走る。


空を裂く。


——当たらない。


避けたんじゃない。


“そこにいなかった”。


ラグナードの呼吸が乱れる。


(見えない……?)


いや違う。


見えているのに、認識できない。


空間がズレている。


「集中しなさい!」


アズレリアの声。


その直後だった。


ズガァァァァン!!


横から雷。


防御は間に合わない。


直撃。


「ぐあっ……!!」


身体が吹き飛ぶ。


地面を転がる。


焼ける。


痛みが遅れて来る。


呼吸が壊れる。


「ラグナード!」


声が遠い。


アズレリアが動いたのが見える。


だが、その“間”に割り込まれる。


黄色と黒。


空から落ちる影。


アズレリアの剣が抜かれる。


赤い閃光。


——交差。


ギギギギギッ!!


空間が軋む。


(……やばい)


ラグナードは理解する。


これ、勝てない戦いじゃない。


“成立してない戦い”だ。


空を支配している側と、


地面にいるだけの自分たち。


その差が、埋まらない。


(でも……)


胸の奥。


赤い炎が、まだある。


脈打っている。


ドクン。


ドクン。


(まだ……使える……)


立ち上がる。


膝が笑う。


それでも、踏み込む。


「来い……!」


叫びじゃない。


確認だった。


その瞬間。


プテラが止まる。


空が、沈黙する。


——見られている。


次の瞬間。


世界が“落ちる”。


ドンッ!!


空全体が押し潰されたような圧。


ラグナードの視界が揺れる。


(これ……は……)


意識が、ズレる。


立っているのか、落ちているのか分からない。


アズレリアの声が遠い。


「……まずいわね」


その言葉の意味を理解する前に。


雷が、降りる。


一直線。


回避はない。


防御もない。


ラグナードは——


ただ、見ていた。


(あぁ……)


意識の奥で、何かが“開く”。


赤い炎が揺れる。


その向こうに。


別の“記憶”が、見えた気がした。


崩れた城。


黒い玉座。


そして——名前。


ベルザグラド。


(……誰だ……これ……)


雷が、視界を埋める。


次の瞬間。


世界が、途切れた。

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