第24話:一人が嫌だ
足の炎が、消える。
青い光が、ゆっくりと薄れていく。
ラグナードは、その場に立ったまま動かなかった。
息が、荒い。
胸が、焼けるように痛い。
(……生きてる……)
それだけが、やけに重かった。
「……はぁ……」
小さく、息を吐く。
力が抜ける。
そのまま——
地面に、座り込んだ。
沈黙。
風だけが、通り過ぎる。
アズレリアは、少し離れた場所に立っていた。
何も言わない。
助けもしない。
ただ——見ている。
「……なぁ」
声が、かすれる。
アズレリアは、視線だけを向けた。
「……なんで」
喉が、詰まる。
それでも——出す。
「なんで、助けないんだ」
空気が、止まる。
「さっきだって……」
拳が、震える。
「死ぬとこだった」
沈黙。
数秒。
「……そうね」
短い返事。
「死んでたかもね」
ラグナードの目が、揺れる。
「……っ……」
否定しない。
そのまま、受け入れる。
「じゃあ——なんでだよ」
声が、強くなる。
「なんで、見てるだけなんだよ」
アズレリアは、ほんの少しだけ目を細めた。
一歩、近づく。
「簡単よ」
距離が、詰まる。
「弱いまま連れていく意味がないから」
言葉が、突き刺さる。
「……は……?」
「守られるだけの存在、必要?」
淡々と。
感情を乗せずに。
「足手まといよ」
呼吸が、止まる。
何も言えない。
分かっているから。
それでも——
「……怖いに決まってるだろ」
絞り出す。
声が、震える。
「死ぬのが怖い」
拳を、強く握る。
「でも、それ以上に——」
顔を上げる。
逃げない。
「一人が、嫌なんだよ」
空気が、揺れる。
初めてだった。
こんなこと、言ったのは。
沈黙。
長い、間。
アズレリアは、動かない。
ただ——
ほんの少しだけ、視線を落とす。
「……そう」
それだけ。
否定もしない。
肯定もしない。
だが——
さっきより、わずかに柔らかい声。
「なら」
背を向ける。
「置いていかれないくらいには、強くなりなさい」
歩き出す。
止まらない。
「ついてくるなら——ね」
ラグナードは、動かなかった。
数秒。
拳を、ゆっくりと開く。
胸の奥。
まだ、炎が残っている。
怖い。
でも——
「……行く」
小さく、呟く。
足を、踏み出す。
今度は——
逃げるためじゃない。
自分で、選んで進むために。




