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縁界《ENKAI》|人を残した魔神は、壊れた縁を選ぶ  作者: 玲皇


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第22話:勝てると思った、その瞬間に

焼けた匂いが、まだ残っている。


倒れた魔物は、動かない。

——自分が、やった。


「……」


ラグナードは、浅く息を吐く。

それでも——止まっていない。


まだ、生きている。


「次、来るわよ」


アズレリアの声に、振り返る。


もう、いた。


低い影。歪な四肢。裂けた口。

さっきと同じ——だが。


(……いける)


確信があった。


一歩、踏み出す。

今度は——止まらない。


魔物が、一直線に来る。


(距離……タイミング……)


頭の中で、言葉が繰り返される。


——今だ。


左手を、解放する。


ボォッ!!


青い炎が走る。

一直線。迷いはない。


ギャアアアアアッ!!


焼ける。崩れる。倒れる。


静寂。


「……っ」


息が漏れる。


(……当たった)


確かに、“当てた”。


「いいわね」


アズレリアの声。短い。

だが——さっきより、わずかに軽い。


ラグナードは、次を見る。


まだいる。二体。


「……来い」


小さく呟く。

自分でも驚くほど、自然に出た言葉だった。


地面を蹴る。


足元に、炎。


ヒュンッ——


一瞬で距離を詰める。


(速い……!)


世界が、遅く見える。


振る。炎が伸びる。


細く、鋭く——


一体目。斬る。


遅れて、崩れる。


二体目。


振り返る。来る。


だが——


(……遅い)


横にずれる。かわす。


そのまま——突く。


ボッ!!


貫いた。倒れる。


静寂。


「……はは……」


笑いが漏れる。止まらない。


「……いける……」


足は震えていない。

視界も、ブレていない。


(……戦えてる)


初めてだった。

逃げていない。


「調子に乗らないことね」


冷たい声。


「……分かってる」


そう言いながらも——

胸の奥は、軽かった。


勝てる。


そう思った——その瞬間。


ピリッ——


空気が裂けた。


「……?」


ラグナードの動きが止まる。


今のは——敵じゃない。

いや、違う。


(……いる……)


見えない。

だが、分かる。


さっきまでとは違う。


重い。深い。

逃げ場がない。


「……気づいた?」


「……あぁ」


周囲を見る。


いない。どこにも。


それでも——


「……まだ、いる」


森の奥。


空気が歪む。

音もなく、ただ存在だけがある。


次の瞬間。


“それ”が、動いた。


見えない。


なのに——理解だけが先に来る。


違う。


今までの魔物とは、違う。


明確に——


“格が違う”。


ラグナードの喉が鳴る。


(……これ……)


さっきまでの

“勝てる”という感覚が——


ゆっくりと、崩れていく。


それでも。


目は、逸らさなかった。


逸らせなかった。


“あれ”を見たら——


もう、戻れないと。


本能が、理解していた。

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