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縁界《ENKAI》|人を残した魔神は、壊れた縁を選ぶ  作者: 玲皇


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第15話:繋がり

——燃えているはずだった。


なのに、熱くない。


いや——寒い。


体の奥に、何かが流れている。


止まらない。

消えない。


「……なんだ……これ……」


ラグナードは、ゆっくりと目を開けた。


痛みが、ない。


砕かれたはずの右腕。

裂けたはずの左手。


どちらも——軽い。


(……おかしい……)


呼吸が深い。


吸える。

吐ける。


生きている。


それだけが、妙に浮いている。


視線を上げる。


——いた。


骨の“顔”。


黒い影。


動かない。


いや——


“待っている”。


空気が張りつめる。


何かが起きる前の、静けさ。


(……来る……)


理由はない。


でも、分かる。


黒い影が、手を上げる。


鎌。


青い炎。


次の瞬間——終わる。


ラグナードは、息を止めた。


その瞬間。


光が、走った。


細い線。


それだけが、世界を横切る。


一瞬。


本当に、一瞬。


何かが、通り過ぎた。


遅れて——


ズザザザッ——!!


音が裂ける。


髪が揺れる。


視界が、追いつく。


黒い影は——いなかった。


消えている。


跡形もなく。


残っているのは——


地面に転がる、大鎌だけ。


「……は……?」


理解が、追いつかない。


何が起きたのか、分からない。


ただ——


“勝敗だけ”が残っている。


ザッ……ザッ……


足音。


近い。


逃げなきゃいけない。


分かっている。


でも——動けない。


空間が、歪む。


押し潰される。


肺が、縮む。


息が、できない。


(……なんだ……この圧……!)


洞窟で感じた“あれ”。


だが——違う。


比べものにならない。


存在しているだけで、


世界が、軋む。


膝が、落ちる。


立てない。


抗えない。


(……無理だ……)


恐怖が、全身を支配する。


その時——


ふっと。


圧が、消えた。


空気が戻る。


肺が動く。


「……はぁ……っ……」


荒く息を吐く。


そして——


声。


「……おい」


言葉。


はっきりとした、


“意思のある音”。


ラグナードは、ゆっくりと顔を上げた。


白い羽が、広がっている。


静かに。


音もなく。


その中心に——


“白い影”。


小さい。


だが——圧倒的だった。


さっきの圧とは違う。


押し潰されるものじゃない。


ただ——


存在が、重い。


ラグナードは、息を呑む。


心臓が、強く打つ。


(……なんだ……こいつ……)


魔物じゃない。


魔神でもない。


“違う”。


分からない。


理解できない。


だが——


ひとつだけ、分かる。


さっきの黒い影とは、違う。


見ている。


こちらを。


ただ、それだけ。


敵意が——ない。


ラグナードは、わずかに震えた。


怖い。


分からない。


それでも——


(……話せる……)


その感覚が、離れない。


初めてだった。


逃げなくていいかもしれない、と思ったのは。


ラグナードは、唇を噛む。


目の前の存在は、何も言わない。


助けたのか。


殺すのか。


それすら、分からない。


ただ——見ている。


沈黙が落ちる。


数秒か。


もっと長いのか。


分からない。


そして——


ラグナードの口が、動いた。


「……誰だ……お前……」


声は、かすれていた。


それでも——届いた。


その瞬間。


何かが、わずかに変わる。


見えない何かが、


結ばれたような感覚。


それが——


この世界で初めて生まれた、


“繋がり”だった。

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