表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁界《ENKAI》|人を残した魔神は、壊れた縁を選ぶ  作者: 玲皇


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/33

第13話:異質

「そこは、安全じゃなかった」


暗闇に、落ちた。


音が、消える。


さっきまで確かにあったはずの気配が——


一つも、ない。


「……はぁ……はぁ……」


呼吸だけが、やけに大きく響く。


右腕は、ぶら下がっているだけだった。


感覚はない。


だが——痛みだけが、遅れて全身に広がっていく。


「……っ……」


壁に、身体を預ける。


冷たい。


湿っている。


外とは違う。


空気が、違う。


(……なんだ……ここ……)


静かすぎる。


さっきまでの“死”が嘘みたいに——


何もない。


それが、逆におかしい。


「……少しだけ……」


息を整えようとする。


だが——


ゾワッ。


背筋が、粟立つ。


何かがいる。


理解より先に、体が反応する。


「……っ……」


振り向く。


暗闇。


何も見えない。


だが——


“いる”。


気配じゃない。


もっと、重い何か。


空気そのものが、押し潰してくる。


呼吸が、浅くなる。


胸が、締めつけられる。


(……なんだ……これ……)


足が、震える。


立てない。


逃げないといけない。


分かっているのに——


体が、動かない。


(……触れたら……死ぬ……)


確信だけが、浮かぶ。


理由は分からない。


だが——間違いない。


本能が、そう言っている。


「……っ……」


後ずさる。


一歩。


また一歩。


だが——


圧は、変わらない。


距離の問題じゃない。


そこに“ある”だけで、押し潰される。


(……なんなんだよ……)


喉が、震える。


声が、出ない。


逃げる。


それしかない。


体を引きずる。


右腕が、地面を擦る。


激痛。


それでも——


進む。


一センチ。


また一センチ。


時間の感覚が、消える。


ただ——


(……終わりたくない……)


その一心で、動く。


やがて——


微かな光が、見えた。


(……出口……)


視界の先。


ほんのわずかに、明るい。


(……出れる……)


足に、力が入る。


一歩。


また一歩。


背後の“何か”から、逃げるように——


前へ。


そして——


外へ、転がり出た。


「……はぁ……っ……」


空気が、変わる。


重さが、消える。


呼吸が、戻る。


だが——


目の前に広がっていたのは——


森じゃなかった。


赤い空。


乾いた大地。


灰色のガスが、漂っている。


「……なんだ……ここ……」


見たことのない世界。


さっきまでいた場所と、明らかに違う。


息が、浅くなる。


その奥で——


黒い“もや”が、揺れていた。


ラグナードは、わずかに目を細める。


(……ここにも……いるのか……?)


背後。


洞窟の奥。


振り返らない。


振り返れば——


“あれ”と、目が合う気がした。


——ここは、本当に同じ世界なのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ