憶測
湖を横切ると、それを囲む森に入った。
森には小道が作られていて、そこには例の恐ろしい獣は入ってこないんだって。
でも、必ず近くでぼくらが道を外れるのを待ち構えているから、絶対に離れるなって言われたんだ。
森を無事抜け切ると、丈の短い草が生い茂ったところに出た。
ぼくらはそこで食事を摂って、少し休んだ。
草は、短いからか、ひとっつも揺れなくって、なんだか涼しい心地にもなれなった。
でもそれで丁度よかったんだよ。
だって、草原に付いた頃には、ぼくらのはく息は白く色付き始めていたんだもの。
「何時になったらお前のいったところにつくんだ?」
食事を取っているときにそうジェラールが訊ねたんだけど、クーベルタンは、
「月が見えるころにはつけるさ」
っとだけいって、何度もバッグの中身をこそこそと確認していた。
彼はそういったのだけど、どうやら月は見えそうにないなって思った。
なぜって、草原を登っていくうちに、濃い霧が辺りを包み始めたんだからね。
ぼくはクーベルタンがちょっとバツが悪そうにしているんじゃないかって、彼の顔を覗き込んだりしたんだけど、彼はいたって冷静に、一行の先頭になって歩きはじめた。
「なあ、おれはあんたに少なからず興味があるんだ」
そういったのはユダだった。
彼はちょっと挑戦的な目でクーベルタンを見ていたな。
ぼくはといえば、なんだか息が切れて仕方なくって、一向についていくので精一杯だった。
実際、みんなはぼくの歩調に合わせて歩いていてくれたんだと思うよ。
ぼくだってそれくらいのことは気付けるんだ。
「あんたはここのこと、どう聞かされていたんだ?」
「お前たちとおなじだろうよ。ただ、違うことがあったら教えようじゃないか」
クーベルタンは平気でそういい、ユダを見据えた。




