憶測
夜も明けきらない朝の暗闇の中に起きる。
早起きって何かと得が多いって言うけれど、そんなときは、ぼくはなんだか損した気分を味わっちゃうんだ。
だから、世界が厚い雲に覆われて、何時起きても真っ暗な朝しか訪れなくなった、それからのぼくは、決まって損な気分で目覚めなければならなかった。
それは、やっぱり、クーベルタンの小屋の藁のベッドで目覚めたときも、残念だけど変わらなかったんだ。
でも、藁のふわふわした感触と暖かさと、満腹感もあったし、何より直ぐ傍には、クーベルタンや、ユダやジェラールがいたから、もしかしたら、次に目覚めたとき、もしかしたらちょっと目が痛むくらいの朝日がぼくを気持ちよく起こしてくれるんじゃないかって期待はできた。
そしてそれは、長い間、感じなかった感情だった。
これは言い訳じゃないんだ。
ただ、そう思っていたのは事実だって話。
仲間って言うのは、いくら増えてもうれしいものなんだ。
それで、何が言いたいのかって言えば、ぼくは、朝、誰よりも寝坊してしまったってことなのさ。
だから、ぼくは当座の食料を持つ役を買って出たんだ。
といってもツェッペリンはラバと自分の分を持っていたし、クーベルタンはなにやら重そうなバッグを担いでいたし、ジェラールやユダは、なんだか難しい顔をして話し合っていたから、みんな、ぼくが道中遅れ始めていることになかなか気付いてくれなかった。
ぼくらはまだ分厚い雲の動きが落ち着かないうちに小屋を出て、鏡みたいな湖の脇を横切った。
湖を横切っているとき、ぼくはしきりに小石をそこに投げた。
クーベルタンが言うには、そこに生き物は一匹もいないんだって。
だから湖面が波立たなくって、鏡みたいに静かなんだな。




