誰もが欲しがるもの
「あの砂煙は何だろうね」
ぼくは言い訳がてらに見えてきたそれを指差した。
砂煙が、すごい勢いでこっちへ向かってきていたんだ。
「・・・逃げるんだ!」
おじさんはぼくの襟首を掴んで、引き摺るように進みだした。
仕方なくたって彼の後ろに続いたんだけど、彼は急ぎすぎているようで、却って何度も砂に足を取られて、殆ど犬掻きみたいに砂の海を進んだんだ。
「こりゃ驚いた」
すぐに砂煙はぼくらを飲み込んだ。
それで、身動きが取れなくなったぼくらは、そんな一言を聞いたんだ。
「まさか、またお前たちに遭えるとは思っていなかったよ」
砂埃が去ったその場所から、タイヤがやたらでっかいジープと、その荷台に載った、真っ青のスーツにサングラスをした人が現れた。
それがあの時―――マンホールから逃げ出そうとしたとき―――ぼくらを、鼠、呼ばわりした挙句、首根っこ捕まえてミスタ・レイクのところへ連れて行った奴だってことがわかった。
「鼠は直ぐ逃げたがる」
彼はまたぼくらを鼠にした。
「ジャン。どうしてここがわかった」
おじさんは悔しそうにそういって、後ずさりなんかをした。
するとジャンと呼ばれたサングラスの人は、笑い出した。
「お前さんもつくづく運のない」
彼はそういうと、砂煙が消え去り、現れたジープの轍を指差した。
「少しでも風邪が吹いていれば、お前らの足跡なんざ、一瞬で消えていただろうに」
彼の指の先には、轍のよこにくっきりと残る四つの足跡が合った。
「鼠は結局、鼠のままさ。自分のケツも拭けずに、最後には自分で墓穴を掘っちまう。世話ないぜ」
おじさんは仕切りに辺りを探っているようだった。
でも、目だった発見はなかったみたいで、そんな時間が長引けば長引くほど、彼の肩の力は抜けていった。
そして、それが抜けきったのを見計らったように、ジープのエンジンが吹かされた。
「さあ、そろそろ出してもらおうか?」
ジャンはそれだけ言うと、動こうとしないおじさんの体をまさぐった。
おじさんは石ころを守っているようで、青スーツの詮索には抵抗していなかった。
そしてやがて、石ころがごろりとおじさんのシャツの裾から落とされたんだ。
「・・・これか?」
ジャンはそれを拾おうともせず、ただ眺めていた。
「ジャンよ。お前にはこれの価値が見出せないだろう」
おじさんはそういうと、自らジープの荷台に乗り込んだ。
そして石ころを拾うようにジャンに催促して、自分だけ荷台に積まれていた食料やら水筒やらにむしゃぶりついた。
だからぼくも慌ててそこに飛び乗って、麻袋に詰められていたそれらに顔を突っ込んだんだ。
「どうしてお前たちは生きて帰ってこられた?」
「おれに時間をくれないか?」
ジャンを乗せジープが動き出すと、二人は独り言のように自分勝手に話し始めた。
「生き延びて、手に入れたのは、石ころひとつなのか・・・」




