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誰もが欲しがるもの

ぼくはそれを聞いて、何にも考えてはいなかったのだけど、何度も肯いて見せた。

 

「ボスは毎年ここに誰かを送り込んでいた、そして誰もがこの石を見つけることもできず、あの大雨で消えて言ったと考えていることだろう」


おじさんはしきりに辺りをきょろきょろしながら、ぼくに立って歩くよう促した。


「だがおれ達は違う。ボスにとってみれば、今年もまた、何も見つからず、どうでもいい二つの命がなくなっただけのことだろう。だがおれ達はちがう。まだ生きている。そして、石までこの手の中にある」


彼は例の石ころをまじまじと除きこみ、


「この石は、どれほどの価値があるのだろう・・・」


なんて呟き、そしてぼくにこう訴えた。


「この石を、売ってしまわないか?」

 

だからぼくは、


「だって、それはボスが探していたものなんでしょう?」


そうきいた。

 

すると彼はいらいらした後、やっぱり乞うように、


「それはわかっているんだ、それはわかっている、でもな、これを売れば、俺たちが一生遊んで暮らせるくらいの金が手に入るんだ、わかるか?」


そういわれて、ぼくはそれを想像してみたけれど、よくわからなかったんだ。


「いいか? これをボスのところへ正直にもって行ってみろ。その後おれ達が安全である保障がどこにある? 最悪、石を渡した途端に口をふうじられるかも知れないんだぞ?」

 

「彼は、残念だけど、この石ころの、あの光を見ることは叶わないんだね」

 

「そうだ、あいつにこの石を渡していいことなんてひとつも無い。それより、価値のわかる誰かに売りさばいて、お互い良い思いをしたほうがいいじゃないか」


 

そんなおじさんの言葉にも、ぼくはなんだか黙っていた。 

 

「お前は金がほしくないのか?」


彼は例の顔をしたままそう聞いたのだけど、ぼくのそれまでの生活の中では、お金がさほど重要なものだなんて考えもなかったから、どうしてそこまでして紙っぺらなんかをほしがるのかがわからなかった。


おじさんが、ほしいものってのは、どうやらお金なんだってことはわかった。


それで、ぼくがほしいものは、今は手に入っているんだって気はしていたんだ。

 

ぼくは黙って彼と一緒に歩いていたんだ。


ぼくはもうおじさんと一緒にいるんだって思っていたし、実際、石ころのことなんてどうでもよかった。


でも、彼はそれを大切に持って歩いていた、ぼくなんかよりずっと大切そうに。


それで、早く歩くよう再三ぼくに注意しながら、石に磨きを掛けてみたり、空にかざしては、すぐに懐に隠した。

 

彼はそんなことに夢中になっていたから、どこに向かって歩いているのか、聞こうにも聞けなかったんだ。


それで、ピラミッドが見えなくなるかならないかの時だった。


ぼくは躓いて、ひどく疲れていたから、少し休もうと腰を下ろした。


でもやっぱりおじさんは厳しくぼくを追い立てた。


そんなときだった。

 


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