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誰もが欲しがるもの

僕はでっかい宝石なんてほしくなかったんだけれど、ミスタ・レイクがいっていた言葉は、あながち間違ってもいないと思ったんだ。


あの、死んでもほしいものは、僕も彼も同じだって言葉。


みんな結局、ほしいものはおんなじなんだな。


そんなことを、おじさんの手にある、何時からか光を発しなくなってしまった石を見ながら考えていたんだ。

 

「確かにこれが、あの時、なんとも奇妙に光っていた宝石なんだよな?」


おじさんは、光を失くして一見そこらの石ころと同じ見栄えになったそれを見ながらそういった。


ぼくらは通風孔から一旦外へ出ようとしたんだ。


でも、二人ともひどく疲れていて、雨は降り続いていたし、何よりこれでまた外の世界で好きに歩き回れるって思ったら、なんだかその時が来るまでの少しの時間、せめて雨が上がるまでは、体を休めていようって気になったんだ。

 

通風孔はわりと広くって、それほど窮屈には感じなかった。


二人とも長い時間眠ったんだと思うよ。


ぼくは途中何度もおじさんの高鼾に起こされたんだけど、またすぐに寝入ってしまったんだ。


彼はかなり深い眠りに落ちていたみたいだけど、決して例の石を離したりはせず、大切そうに両手で抱きかかえていた。

 

「ついに雨が上がったようだな」


彼がそういったのは、見渡す限り雲ひとつなくなった空を見たからだった。


空には殆どまん丸のお月様がひとつぽつんと浮かんでいた。

 

「それより、ねえ、外だよ? ぼく達、外に出られたんだ!」


ぼくは通風孔の口に手を掛けながらそういうと、危なっかしい感じに外へ足を出した。


ぼくは振り向いて、


「ねえ、早く降りようよ、それで、ぼくらがいたこのピラミッドの全貌を見てやるんだ」


なんていってみた。


ピラミッドの石段は一つ一つの段差が大きく、実際、一段ごとに体を張って降りざるを得なかった。


時々休んで、石なんかを持っているばっかりに遅れをとっているおじさんを待ちながら、砂で線引かれた地平なんかを見渡したりなんかした。


不思議だったのは、あんなに降り続いた雨が、どこにも見当たらず、川のひとつも見つけられなかったことだった。


ただ、地平の何処かから、気のせいか、湯気のようなものが上がっているように見えて、ぼくはその途方もなく遠い場所にきっと水がたまっているに違いないんだって勝手に考えてみた。

 

砂の地面に足が付くと、すぐにピラミッドに背を向け走り出し、我慢できるだけ我慢した末、振り向いた。



その建造物は台形をしていて、テッペンはとんがっていなかった。


ぼくはそれに少し落胆したんだけど、夜の明かりで、紫になったピラミッドを見上げたら、なんだか時間を忘れてしまったんだ。


それで、息が切れていたのもあって、ぺたんとその場にお尻をついた。


手のひらに触れた砂は案外とひんやりしていて、ぼくをうれしくさせたんだ。


だから直ぐ手の届くところにあった一見枯れている草をむしらないで、撫でたりなんかできたんだと思う。

 

その草の頭を上げさせているときに、丁度おじさんが追いついてきた。


ピラミッドからは四つの曲線が延々と続いていた。

 

「お前は、どうする?」


おじさんは余計に息を切らしながらそう聞いた。


ぼくは何をどうするって聞かれているのかわからなかったから、そのまま草を撫でていたよ。


すると、


「おれと一緒に来るか?」


そう聞かれたから、ちょっと怒って、おじさんを黙って見上げた。


だって、何時だって一緒にいたんだから、今更そんなことを聞いてほしくなんてなかったんだな。


「おれは、この石を持って、いっそのこと逃げてしまおうと思っている」


彼は深刻な、ちょっとかたくなになった、ぼくの唯一好きになれない表情をした。


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