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「おじさん! おじさん!」


ぼくは叫んだ。


でも、そんな声もかき消されてしまったみたい。


音を負かした水の噴出は、あと一歩のところで発光体を捉えられずに、尻窄みになっていった。


吹き飛ばされた湿った砂の塊がおじさんに当たって、体を吹き飛ばした。


倒れた彼の頭を塊が完全に覆っていたもんだから、ぼくは慌ててそれを必死に掻き分けて、もう一度、


「おじさん!」


って叫んだんだ。


そしたら、食べた砂を吐き出して彼はひどく噎せ返った。

 

おじさんが正気に戻るまで、預けられた彼の体を支えるのに精一杯だった。


でも、なんだか辺りが妙に静まり返っているのに気づいて、もう一度天井を見上げてみたんだ。


そこには、噴水は勿論、雨の一粒さえ、どういうわけかなかった。


ただ、微かに振動が残っていて、平静に戻った水溜りを波立たせていた。

 

「山が、なくなっている・・・」


しっかりそういうと、おじさんはぼくを後ろ手に突き飛ばして、水溜りのほうへ足を向けたんだ。


「助かるんだ、助かるんだ」


なんて大体もとのすり鉢状に戻った砂を、両手でかき集めたりなんかして、必死に山を作り始めたんだ。


「あれさえ手に入れば・・・」


なんて発光体を見上げ、歯軋りしながら、すぐに崩れてしまう砂のお山を作り続けた。

 

そんな彼の姿を見かねて止めに入ろうとしたときだったよ。


丁度、おじさんが、手を休め、尻餅ついたまんま後ずさりし始めたときだった。


見れば、彼の綺麗なブーツはすっかり水を含んでいるようだった。


お山の天辺が徐々に崩れていた。


すぐにお山は消えてしまったんだ。


再び空気穴に戻って行くおじさんを尻目に、ぼくはそれで漸く事情が把握できたんだ。

 

水溜りが、音も立てずに大きくなっていたんだな。


そしてそれは見る見るうちにぼくの足元まで偲び寄ってきた。


すぐに足が使って、それがあんまり静かなもんで、踝が漬かるまでただ突っ立っていたんだ。


でも、最後に残ったお山の天辺が崩れた音で、ハッとして自ら足を引き抜いたよ。


ちょっとそこから離れて、振り返ってみたんだけど、もう水面に波紋は見て取れなかった。


丁度振動がすべての波紋を相殺しているんだって思った。

 

急いで空気穴に戻ったものの、できることといったら、どんどん水位を上げている水溜りの端を見ているくらいのもんだった。

 

おじさんは早々から空気穴に足を掛け、できるだけ自分を高くさせようとしたんだ。


でも、もともとドーム状のつくりをしている地下室なんだから、次に手を着くところなんてなかったんだ。

 

ぼくは彼のお尻を押しながら、顔は水面を見守っていた。


水面は波紋ひとつなくって、薄ボンヤリした陰が降りているだけだった。 


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