雨
ぼくはできる限りその、でっかく開いた口を見ていたんだ。
煙のような明かりがとめどなくそこに吸い込まれていたんだけど、飲み込んでも飲み込んでも穴は決して満足しないらしかった。
振動は徐々にその激しさを増し、次第にぼくらの足を立たなくさせていった。
終いには、あちこちで地面が崩れて、真っ暗闇の中に落ちていった。
ぼくは、いつかは自分も、あの、終わりもわからないようなところに、崩された砂なんかと一緒に落っこちちゃうんじゃないかって、気が気じゃなかったよ。
でも、そうなる前に、どうにか空気穴のところまで登りきることができたんだ。
おじさんは穴にかじりついて身を固定させたから、ぼくも真似した。
石壁の隙間からこぼれる砂が耳や首筋を抜けて気になったんだけど、仕方なく耐えた。
実際目を開けられるような上体じゃなかったんだ。
でも、ぼくはしっかり空気穴につかまると、振り返って、天井を見上げたんだよ。
なんたって、赤くなった月明かりにとっても細かい砂が照らされて、オーロラみたいに綺麗に揺らめいていたんだもの。
目を細めてでも見る価値はあったはずだよ。
極めてゆっくりと落ちながら振動しているんだ。
ぼくはそれで、空気だって震えるんだってことを知った。
おじさんが明らかに震えだしたのは、ぼくがそんなことに気付いたからじゃなくって、突然、堰を切ったように雨が降り出したからだった。
「雨だ! おじさん、雨だよ!」
全く場違いだったから、なんだかうれしくなっちゃって穴から手を離そうとしたんだけど、おじさんはきつくぼくを捕まえていた。首を振って、頑なにその場から動こうとしないんだ。
「始まったんだ・・・」
おじさんは卑屈な声でそう呟き、ぼくの顔を見た。
「例の、大雨だ・・・」
それで、ひどく呼吸を荒くして、
「終わりだ・・・終わりだ・・・」
なんて、吐き出すように弱く言った。
少し悲しくなって、やっぱり天井を見上げると、砂の煙を糸みたいな雨が容赦なく打ち落としていた。
月が見えていた空が、見る見るうちに分厚い雲に飲まれていった。




