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その先

ぼくらは実際、ずいぶん長い時間、そこに立ち尽くしていたんだと思うよ。


それに、正気を取り戻したって事に気付くまでにも暫くかかっちゃったもんだから、もうどこからどこまでが正気かなんてのが、ぜんぜんわからなくなっていた。


空も、雲も、隠れた山頂も、みんながみんな目下に広がっていたから、もしかしたら体がまっ逆さまで、また谷底なんかから落っこちたのかもなんて考えがおこったんたんだ。


けど、そうでもない。


足裏はしっかり地面を踏んでいた。


だからぼくは、一歩一歩踏み出して、山頂へと近づいていったんだ。

 

「何時からそこにいた?」


余りに自然に発せられた言葉に、ぼくは驚いて振り向いてしまったよ。


ラバだった。


彼、何かを冷静に分析しているみたいに、綺麗な瞳を高速で転がしたりなんかしていたんだ。


「ずっと前からいたんじゃないかな」


それで、ぼくを認めても、それをやめなかった。


彼の後ろには、光なんかひとっつもなくて、暗闇のほかに見えるものといえば、むき出しの岩肌くらいのもんだった。


ジェラールたちは、一様に山頂から顔を背けていた。


そうなんだ。


逆さまの景色は、どういうわけか眩しくって、余り長くみていられなかったんだよ。

 

ぼくの一歩一歩は、あんまり軽快ってのでもなかった。


ゆっくりゆっくり足を踏み出して、その度に胸いっぱい空気を吸い込むんだけど、一向に息が整う気配が無かった―――随分何にもせずにいたはずなのに、ね。


それでも何とか進めたのは、道が緩やかな下り坂だったからなのかもしれない。


みんなも多分頭がボーっとしていて、先頭だったぼくの後に当然ついてきたんだ。

 

「隠れるんだ!」


そう静かに叫んで、ぼくの体を壁際に引っ張ったジェラールは、自分だけ壁から首を伸ばして、洞窟の出口に広がる光景の謎や、それより何より、そこに危険がないかを確認しているみたいだった。


「すぐ傍に、人がいた」


彼はそう言うんだ。


「確かだ。松明と、小さいが、小屋も見えた」

 

「まるで、ジョルジュおじさんの家みたいだね」


ぼくは、山頂付近にある小屋が見えるってことは、それがびっくりするくらい大きいんだろうって想像したんだけど、人も見えたって言ったんだから、やっぱり近くにあるもんなんだって思った。


「でも、ぼくには見えないな」


そういって、首を伸ばそうとしたんだけど、ジェラールはそれを許してくれなかった。

 

「そうだ。本当にあのおばさんの家とそっくりなつくりをしている」

 

「それなら、またご馳走にありつけるかも」


ぼくは何の気なしにそういったんだけど、ジェラールや、傍によってきていたみんなは、なんだか白々しい顔をしていたな。


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