前へ前へ
「俺たちを導いている?」
そう何かを押さえつけたようにいった。
「おれ達を本当の道からはぐらかしている?」
「確かにその可能性も否定できません」
ツェッペリンが振り向かないでそういった。
「しかし、今は信じて進むべきなのではないでしょうか」
「信じる?」
ジェラールはちょっと向きになった声を上げ、
「始めて通る、薄気味悪い洞窟にフラッと現れた、得体の知れない、回りと少しばかり違った特徴を持つ光を信じろと?」
なんて問をツェッペリンの背中に突き刺した。
「光を・・・信じろと?」
「ジェラール、落ち着いてよ」
彼の憔悴振りは、目に余るものがあったから、ぼくはそういわずにいられなかったんだ。
そして
「信じるんだ」
と、いわずにいれなかった。
「・・・ジェラール、君は僕の役目を奪う気かい?」
少しの沈黙の後、口からこぼれた言葉がこれだった。
だから、ぼくはあわてて、
「君は僕と出会ってから、何時だってみんなを先導してきたじゃないか。みんなを、まとめてきたじゃないか。口には出さないけど、みんな、君の事を信頼しているんだ。君は、みんなをまとめて、迷いを断ち切って、押し進んでいける人だよ。うん。ぼくはそう思うな」
なんてわけもわからず付け足した。
「ねえ、みんなもそう思うだろ?」
それで、周りに声を放った。
何の返事も無かったけれど、みんなぼくと同じ気持ちなんだよ、きっと。
「だから・・・だから、君は僕とは違うんだ。迷いながら進むなんて、君らしくないよ。君は、迷うことが遭ったなら、それを解決して、始めて前に進む人だよ。それで、後悔なんて一回もしない人なんだよ」
「昨日今日あったやつを、お前は信頼しているというのか・・・」
ジェラールは力ない声でそういい、尚弱気の虫に取り付かれているようだった。
「そうだよ」
ぼくは自信を持っていったね
「ぼくはここに宣言する、ぼくは、君を信頼している」
と。
「ぼくらは実際、短い付き合いだけれど、ぼくは確信している、君が信頼に足る人だ、と」
なんだか粋がった言い方をしてしまったんだけど、実はこの言葉、何処かで誰かに聞いたことがあったから、それを受け売りしてしまったんだ。
ぼくらのやり取りに、みんなは殆ど入り込んでもこなかった。
でも、案外みんな、その後の歩調に力強さが戻っていたから、きっと何かいいことでもあったんだと思うよ。
その時には、ぼくの病気がやっぱり顔を出していたから、正気に戻るまで、どのくらいの時間が過ぎていったのかもわからない。
でも、大分息が切れていたから、それで、腰に手を当て、前かがみになって進んでいたんだから、きっと、ずいぶん長い間光の闇の中を進んでいったんだと思う。
「どうしたんだい、キャンピー?」
何度と無く近づいては離れていった光が、今度こそ本当にぼくの手に触れようとしていた。
だからぼく、ちょっと戸惑って、差し出した手を止めてしまったんだ。
キャンピーはぼくらの目線の斜め上で飛び跳ねていたのを急にやめて、例の、急激に膨張するくだりに入っていた。
ツェッペリンは留まるキャンピーの前で立ち止まり、どうしたものか、とこちらを伺ってきた。
光の影には、口ができていて、まるで笑っているように端を持ち上げて、ついでににょろにょろと、手を伸ばしてきた。
「キャンピー、ぼく達、ここでお別れなのかい?」
そう聞くと、光は、口の端を一層持ち上げて、ゆらゆら揺らめきながら、ぼくに手を伸ばしてきた。
膨張が急激過ぎて、人型も、辛うじて保っているようだった。
ぼくは、キャンピーがいなくなる前に差し出された手に答えようと、付かれきった腕を再び持ち上げた。
そして、丁度光の端が、ぼくの薬指かどこかに触れたときだった。
持ち上げられた口の端と端がくっついて、まん丸を描いた瞬間、光が爆発して、ぼくに襲い掛かった。
余りに一瞬のことで、目を隠そうにも、その暇すらなかった。
だから、ぼくは手を差し出したまま、その場に固まるしかなかった。
その光の洪水に視界を奪われながら、頭の中まで真っ白になって、ただただ、立ち尽くしていた。




