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ツェッペリンがみんなに分けた松明は、すぐに消されることになったんだ。


洞窟は勿論暗かったんだけど、その中には確かに、彷徨い、浮遊する無数の光があったんだ。


だからぼくは真っ先に松明を消すよう頼んだ。


炎では却ってその静かで冷たい光を隠してしまっていたんだもの。

 

「ほら、見てみなよ」


みんなはどういうわけか素直にぼくの頼みを聞き入れてくれて、手際よく炎を消してくれた。


蛍火のようなぼやけた光は、辛うじてみんなの顔を浮かび上がらせていた。


ぼくは近くに降りてきたその中のひとつを手に乗せようと待ち受けながら、ジェラールなんかのようすを伺ったんだ。

 

「来た道がなくなっている」


振り向いた彼は、なんとなく目をむいて、そのくせ小さな声でそういった。


「もう戻れない・・・」


洞窟の中は、比較的広かった。


浮遊する無数の光のせいもあってか、ぼく達は実際、進んでいるのか、戻っているのか、上っているのか、下っているのか、ちゃんと地面を歩いているのかさえ、確認できていなかったんだ。


「おれ達は浮いているのか」


足元に目をむけても、無数の光が当たり前にあって、ぼくらの遠近感覚は完全に麻痺していた。


ならどうして歩けているのかって? 


「ほら、キャンピーがあっちへ跳ねていくよ」


答えは、ひとつの、ちょっと変わった光だったんだ。


ひとつだけ、なんだかぼくらの目の前を盛んに飛び跳ねて、自分の存在を確かめさせようとしている、変な光があったんだ。


ぼくはその光に勝手に名前を付けた。


それが、キャンピーってわけ。


ユダは慎重に歩を進めていったんだけど、それでも何度も躓いたりするんだ。


実際あると思っていた地面が無かったり、若しくは、ちょっと前や上にあるだけでも、人って簡単につまずいてしまうものなんだよね。


「やはりあの光が我々を先導しているようだ」


ラバとぼくは、素直にキャンピーに従って進んでいたから、余り慎重にならなくってもスムーズに進めていた。


キャンピーはぼくらの結構先で飛び跳ねたり、時折急激に膨張したりしてこっちの気を引いた。


ぼくの手に触れそうなくらいに近づくときもあるんだけど、後ちょっとのところで必ずとり逃した。

 

小さな滝のような光の傍をとおっているときだった。


本当の水みたいに綺麗に、音も立てずに滴る光に手をかざしてみたんだけど、どうやらそれは、ぼくが勝手に目の前にあるって勘違いしていただけで、本当はずっと、手の届かないところにあるみたいだった。

 

ラバがツェッペリンをキャンピーの見張り役に任命したから、ぼくらはツェッペリンの背中を追っていれば迷わずに済みそうになっていた。 

 

「ねえ、ぼくらは今、本当に僕らだけなんだよね」


恐る恐る近づいた光に握手を求めながら、ぼくはこう切り出したんだ―――その時光は、目の前で見る見るうちに、まるで人間のような姿かたちになりを変えていたんだからね。


「なんでだろう、ぼくはいつも、こんなボンヤリとした、それでいて奥深い暗闇の中にいると、何処か、例えば首筋辺りをジーっと誰かに見られている気がして来るんだ」


辺りを見渡したんだけど、底にはやっぱり無数の光があるだけだった。


「おいおい、気味の悪いことをいってくれるな」


ユダはいぶかしんでからそういうと、


「こんなところにおれ達以外、誰がいるっていうんだ?」


って。


ちょっと冗談めかして、


「しかし、他に誰もいないという確証もないがな」


なんていって、ぼくの肩をつついたりした。

 

「おれ達は、本当にきちんと前へ進めているのか?」


ジェラールはぼくらの話しなんか耳にも入れず、そう呟くと、


「近づけているのか?」


なんてお構いなしに繰り返した。

 

「誰かに足を引っ張られているとでも」


ユダは冗談半分にそういったんだけど、あんまり楽しい雰囲気でもなかったから。

 

「あの光はどこへ向かっている」


ジェラールは答えないでそういった。

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