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深い溝

尋常じゃない揺れが幸いして、ツェッペリンを引っ掛けていた帯は運良く取れたんだ。


でも、それが災いして、彼は今にも落っこちそうなくらいに体を宙ぶらりんになってしまった。

 


通路はなんとなく、空に向かっているように思えたんだ。


でも、すぐにそんな感覚もなくなって、替わりに体が、前傾姿勢をとらないで澄むようになり始めていた。


 

―――六つの目玉で見上げてる―――



「ツェッペリン!」


ラバがそう叫ぶと、彼はびっくりするくらい体を仰け反らせて、その勢いで一気に飛び起きた。


おかげで足を引っ張っていたぼくは、後ろへ吹き飛ばされる災厄をこうむる羽目になったんだ。


間も無くガガ―ンって物凄い大きな音がして、それと同時に振動が止んだ。


どうやら、通路は殆ど水平になっていたんだ。ラバの前に跪いたツェッペリンは、乱れた息を無理やり取り繕って、平然そうな顔を下に向けていた。


「・・・」


ぼくは振り向いたりなんかして、来た道の先に耳を欹てた。


もうルーディーの歌声は聞こえなくなっていた。


きっと、ぼくがタップをやめたからなんだろうけど。


ね。


「ここからどうすればいい」


ユダがそう途方にくれた感じに言った。


彼は口をぽかんと開けちゃって、ちょっぴり可笑しかった。


ジェラールも途切れた通路の先を歯噛みしながら見ていたんだ。


ぼくは彼のごつい肩越しにそこを覗いたんだけど、なんだろ、面白いものなんかひとつもなかったんだな。


なんたって、わかったことといえば、眼下にまた、今までと同じような森と平原が広がっていたってことくらいなんだもの。


それで、足元に目を落とすと、いやになっちゃったな。


また底のない崖が見えた。


いやに凸凹した土地だよ、全く。


「もしかすると、これ、罠だったんじゃないのか?」


ユダはそういうと、


「それとも、岩を押す順番を間違ったのか」


って呟き、


「そもそも、岩を押してよかったのか」


なんて、もう引っ張っても出てこなさそうな岩と、とてもじゃないけど一っ跳びで飛び越えられそうにない通路と森の間のどっちかをみながらいった。


「そんなことはないだろう。あの歌は古くからある土地の歌だと聞いただろう」


ジェラールがそういうと、


「むすめが嘘をついたのかも知れんな」


とラバがそっけなくいった。


かれは、森から吹き上げられてきた一枚の枯葉なんかの閃きを首を振りながら追ったりなんかしちゃって、のんきなもんなんだ。



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