ミスタ・レイク、その過去
ぼくは大体、ピラミッドに閉じ込められたころから、首を痛めるようになったんだな。
だって、日が暮れるまでずっと空気穴の向こう側を覗いていたんだからね。
初めは自分の好きで相していたんだけど、さすがに飽きてきたんだ。
なんたって、いっくら角度を変えてみても、肝心の、一番裸の暉は、絶対ぼくに届かなかったんだもの。
せいぜい、三回くらい反射したのが漸くこっちに届くくらいだったんだ。空気穴も意地悪に、ところどころに凸凹なんかをわざわざ付けていたのさ。
首も痛かったし、空気穴から顔を離そうとするんだけど、結局おじさんはそれを許してくれなかった。
実はぼく達、いつの間にか取引をしていたらしいんだ。
おじさんが雇い主で、ぼくが労働者って所。
ぼくの仕事は、もっぱら空気穴の外を見て、誰かが通りすがるのを待っていることだった。
おじさんも、ぼくがサボっていないか見ている重要な仕事があったみたいだよ。
悪くない仕事だよ。
だって、ぼくは仕事がなかったなら、あの苦瓜をおじさんから分けてもらえなかったんだからね。
それに、ぼくが疲れて眠ってしまっているときは、おじさんが代わりをしてくれていたようだし、らくだ口の隊商が来たときなんかは、無条件でぼくを解放してくれた。
そのときだけが、ぼくが自由に動き回れる時間だった。
らくだ口は、日が六度昇り、沈んだ後、新たな陽が顔を出さないうちにピラミッドに来た。
大体が夜、何の前触れもなしに苦瓜がひとつ、空気穴から落とされたんだ。
「―――なけりゃ仕方ありませんねぇ」
せせら笑いをしながら、らくだ口はそういうんだ。
「この売れ残った苦瓜は、他の誰かに譲るとしやしょう」
おじさんはらくだ口にそういわれると、かさかさになった口の中を血が出るほど噛んで、震える手でポケットの中から紙幣を取り出すと、三十回くらい慎重に枚数を確かめてから、一枚だけ空気穴の奥に押し込むんだ。
「・・・足元見やがって」
っておじさんは隠さないではき捨てると、次は必ずらくだ口に食って掛かっていくんだ―――それがおじさんがらくだ口と話すときのお決まりだった。
「さあ、話してもらうぞ。今度役に立たない情報を垂れ流したら、ただじゃ置かないぞ」
って斜め上を必死に見上げながら言うんだけど、咽喉がかさかさで、うまく声を荒げられていないんだ。
「どこまでお話したでしょうねぇ」
らくだ口はお決まりの一言を言っておじさんを苛つかせてからゆっくりと話し始める。
らくだ口は、苦瓜を買ったときのお釣りを絶対に払わない代わりに、決まって白い人物の昔話をしていったのさ。
「当時の発掘チーム内から、こんな声が上がり始めていました。『ボスはおれ達を信用していない』と。大層魅力的であられたミスタ・レイクも、やはり一人の人間でして、欠点とは言わないまでも、不満の対象になる性格を持ち合わせていたんです」
話している最中にも苦瓜を落っことしているもんだから、ちょっぴり声が聞き取りにくいんだ。
「ぁたしが思うに、その性格は、一人走りって呼ばれてるもんで、なんでも、才気に溢れる人がよく持ち合わせている性質らしいんでさぁ」
隊商はかき消されるくらいの小さな口調で
「確かにミスタ・レイクは才気に溢れていましたもんねぇ・・・」
なんて呟いた。
「ボスの性格なんかに何の手がかりが―――」




