民謡
全ての節を歌い終えると、ルーディーは立ち止まり、押し黙ったりなんかして、そのくせひどく頑なな目で、森の終わりのほうを指差したんだ。
そこには一方的に傾いている真っ青な屋根があった。
ぼくらは残りの上り坂を登りながら、その全容を確かめていった。
でもどうだろう、屋根は何時になっても屋根ばっかりだったんだ。
それは、ぼく達が道を上りきっても代わらなかった。
屋根は、直接地面から突き出していたんだよ。
「下、横、上。今度は数字を表しているわけではないな」
「ええ、しかも第四節からは、調子が変わります」
ユダとツェッペリンはルーディーのちょっぴりしゃがれた声の歌を聴くと、何の感想もなしに、また謎解きなんかを楽しみ始めたんだ。
ぼくの歌は、誰にも聞かれなかったみたいだった。
「まるで屋根が天に向かって伸びているようだな」
屋根の先を仰ぎ見ながらジェラールが行った。
森の裂け目を埋めるようになっているこの建物は、なんだかとってものっぺりしていて、意地悪な感じがした。
「おれ達の視界を遮っていやがる。どうあっても天辺は見せないつもりらしいな」
いつの間にかジェラールの横にぴったりついていたルーディーは道のど真ん中に隠されていた土蓋を探り当てると、全身を使って器用に引きずらし、
「さあ、入って」と
彼を見上げながらはにかんだ。
ぼくらははしごを使って地中に潜って言った。
どうやらそれが屋根の中に入る唯一の方法だったみたい。
でも梯子だから、後から降りてくる人の靴から乾いた土がとめどなく落ちてきて、それに光なんて全く無かったから、その音とか、感触とか、嫌な重さに、なんだか無性に恐ろしさを感じたんだ。
「ルーディー、いるのかい?」
ぼくは梯子を半分飛び降りると、うっすらランプかなんかの心もとない明かりがある部屋に向かって呟いた。
「―――一番が二番にかかるのかもしれないぞ? 一番の数字が、二番の数字にそれぞれ掛かるのかもしれない」
ぼくがなんとも心細い気分でいるのに。
暗闇なんかへっちゃらなんだね、ユダは。
「その場合、どれがどれに掛かるのでしょう。その方法を示唆する節があるのだとすれば、やはり後半の四節でしょうか」
ツェッペリンは梯子を下るとき、ラバの順番を最後にさせるって聞かなかったんだ。
それなのに、梯子を降りてしまえば、そんな頑なな態度は微塵もなくなっていた。
当のラバといえば、一人黙って悠々と梯子を降りてきていたよ。
「むすめ、ここは安全なんだろうな」
ジェラールが明かりに浮き出た空間を一通り見渡してから、そういった。
「ええ、あたしも年に何回かしか来ないところだけど、土地の人も、決まった人意外はみんなこんなところには近寄らないわ」
空間は閑散としていて、土だか石だかわからない床に、長い間蒸発しては凝固を繰り返してきたような水溜りが点在していた。
地下は涼しかったから、冷たい湿度を感じさせた。
「ねえラバ。君、ラバって言うんだね。君、綺麗な肌をしているね」
ぼくがこんなことを言ったのは、松明に照らし出された彼の浅黒い肌が、何かの金属みたいに艶々していたからなんだ。
彼の瞳は霞ひとつ無い緑色だった。
ぼくは、室内に入ってフードをとった彼の髪が綺麗な金髪だったのを見て、声を掛けずにはいられなかったんだ。
でも、ラバはこっちの気分を悪くさせない程度に微笑んだりして、何も言わずに奥へ進みだしたジェラールたちの後を追った。




