民謡
埋もれることって、あると思うんだ。
何か一等なものがあって、でもそれが天辺に来ないことなんて、さほど珍しいことでもないよね。
だからじゃないけど、当たり前に、一等じゃないものが本来の場所に留まっていることなんて、滅多に無いんだと思うよ。
埋もれているものがあるから、それを掘り起こす人もいるんだ。
サルが大層お上手に歌い上げた歌の中にも何かが埋もれていそうなんだって、初めに言ったのは、スリムな人だった。
彼、ジェラールとユダには、ラバって呼ばれてて、ツェッペリンって人には、ワカサマなんて呼び方をされていた。
「あの歌、あたしも知っているわ。ちっちゃいころからよく聞かされてきたのよ。多分土地の人なら全員知っているはずよ」
ぼくはちょっと離れたところからルーディーの声を聞いた。
あんまり長く険しい山道が続くもんだから、ちょっと息が続かなくなってきて、みんなに遅れをとっていたりしていたんだ。
ぼくにべったりだったルーディーも、手を離してみんなの先頭に立って歩いて言っちゃった。
「わかりやすい歌だ」
なんてラバが言うと、当然のごとくみんなは頷いた。
「一節ごとに数字が隠れております」
ツェッペリンがそういうと、
「いや、隠してもいないんだろう」
なんてジェラールが言って、
「このむすめがさっき言ったように、この歌は土地の歌だ。代々伝えられている歌に違いない。無論、何かを示唆しているんだろうがな」
「とんがりほしがた・・・」
ユダはそういいながら、指を空にかざして、星型に動かして見せた。
「他の節にも五はないし、この場合、とんがりが五つ、五と考えていいだろう」
「対についてはどうでしょう。一対を二と考えるべきでしょうか」
なんて宙に向かってツェッペリンが言葉を放ると、
「一対は一だろう。二番目の節に、ご丁寧に『二段構えの・・・』なんてのがあるからな」
ってジェラールが顎の傷を指でさすりながら行った。
「・・・となると、節の順に数字を抜き出すと、三、二、五、一、四、七、六、となる」
ラバはすんなりそういうと、
「何を表している?」
なんてちょっとだけ考えるそぶりを見せた。
勾配がきつくなったからってわけでもないんだろうけど、みんなはそれから暫く塞ぎこんでいたんだ。
「アレッサンドロは忘れているんだわ」
ルーディーは何処か見えないところにいるだろうサルのことを、アレッサンドロなんておしゃれな呼び方をした。
ぼくは何時からか、なんだか頭の中が真っ白になってきていて、だからじゃないけど、なんとなく知っていた歌の続きなんかを歌ってみる気になったんだ。
苦しかったから、独り言みたいに、途切れ途切れにね。
「したからみれば・・・しん、しんげつ」
「歌は、こう続くのよ」
ルーディーは漸く緩やかになってきていた山道の先を見ると、綺麗な咽喉を伸ばした格好で、ゆっくり歌いだした。
「下から見れば真新月・・・」
したからみれば――――真新月
横から見れば――かげんつき―
上から――みればみつるつき―
ブルームバーグの谷底で―――
かかる―――獲物を待っている
陽―いずるとち――サンディで
月満つ時を――――まっている




