出会い
老婆の外套を抜け出そうとした僕は、すぐに簡単にひっとらえられた。
結局、作戦は失敗だったって訳さ。
僕はただ、綺麗な月を拝めればそれで十分だったっていうのにね。
正確には、老婆の外套の直ぐ両脇にもう二人ほど人がいたのさ。
実は、僕はそんなことにも気付いてはいたんだけど、それでもやらなくちゃ気が済まない時ってあるだろう?
それがその時だっただけなんだよ。
でも老婆を含む数人にとっては、僕の事情なんて知ったこっちゃないんだよね。
それは誰にだって一緒だけど。
それで僕の待遇は一気にがた落ちさ。
その後わかったことなんだけど、僕は他の人たちとは違う待遇を受けていたんだな。
他の人っていうのは、要するに、僕だけって思っていた引越しをする人が、実は他にも何人かいたってわけなんだ。
それで僕は、その人たちと同じ待遇に落とされたってわけ。
その待遇って言うのが、これまたひどくってね。
僕のそれまでの生活は、それは厳しいものだったんだけれど、そんな生活が恋しくなっちゃうほどの待遇だったんだ。
具体的に言うと、それまでは一人だけの移動で、車だって、船だって、僕の周りは監視役みたいな人たちと付き添いの老婆以外には誰も乗っていなかったんだ。
でも
―――僕がそんな大それた事をしたのは船から馬車に乗り換えるときだったんだけど―――
その後は、わかっているとは思うけど、その他の人たちと一緒の馬車へ詰め込まれたんだな。
付き添いの老婆ともそこでお別れだった。
僕はきちんとお礼をしたくて老婆へ振り返ろうとしたんだ。
でもそれさえ許されなかった。
ひどいもんだよ。
でもね、
それでも僕にはちょっとうれしいこともあったんだ。
僕は寂しいのが一番嫌いだろう?
やっぱりぼくには、老婆がいたからって一人みたいなもんの引越しなんて味気なさ過ぎたんだ。
それに比べれば、多少窮屈でも同じ境遇であろう他の人たちと一緒のほうが気が楽だったんだな。
だからじゃないけど、僕は馬車が出発するくらいのとき、早速隣に坐る一人に声を掛けたんだ。
実はこれも僕の病気の一つなのさ。




