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ピラミッド

らくだ口の隊商はもう直ぐ日が昇るなんていっていたけど、ぼく達が閉じ込められている空間には何時になっても光なんか降りてこなかったんだ。


せいぜい、薄っぺらい煙みたいな光が、時々億劫そうに閃いたりするくらいだった。


カリプソおじさんは優しくってね。


山積みになるくらいの苦瓜の半分をぼくにくれるって約束してくれたんだ。


でも、あんまりぼくが考えなしに食べるといけないからって、もし食べたくなったときは、食べてもいいか訊いてからにしてくれって言われた。


でもぼくは、もう二度とそれを口にしないって心の中に誓っていたりもした。

 

隊商が去ってしまって、何にもすることがなくって、できることもなくって、ちょっと厄介な病気がまた顔を出しそうになっていたんだけど、なんとなく背が伸びた感じのおじさんが空間を下り始めたから、丁度良かった、ぼくもそれについていくことにしたんだ。

 

坂はどんどん下っていって、その分空間も底に詰まった闇なんかも広がっている気がした。


ぼくには、遠くのほうで煙っている光しか見えなかったんだ。


でも、それがかえって空間の広さとか、闇の濃さだとかを教えてくれたみたい。

 

おじさんはどんどん坂を下っていた。


ぼくは、なんとなく見えない目を凝らしながら、淡い光にはさまれた闇の中を、何にもいないはずなのに、得体の知れない何かがいるような気がして眺めたりしていた。


何時からかはわからないけど、ぼくの耳がおかしくなっていなかったなら、空間からひどく清らかな音が聞こえてきたんだ。


きっとおじさんもそれに気付いていたはずだよ。


だって、ちょっと立ち止まったりして、軽く深呼吸をしたんだもの。



「水だ!」



ぼくは思わずそう叫んで、そこに駆け寄り、ひざまずき、水を両手で掬った。


「やめるんだ」


そんな声と同時に、おじさんの手はぼくの両手で作ったお皿を割っていたよ。


目の前にあった光に手をかざすと、見事な赤銅色がぼくの目に映った。


「赤いのはおそらく鉄のせいだろう。この赤は恐らく、鉄が酸化した色だ。それに、見ろ」


おじさんは僕の手のひらの側面を見せると、


「赤のほかにも良く見ると、黄緑やこげ茶も見受けられる。間違いなく飲めるレベルの水じゃない」


おじさんは手を離すと、


「死にはしないが、余計のどがかれるのが落ちだ」


なんて言葉を吐いた。


「ねえ聞こえる?」


ぼくは手をズボンにごしごししてから、能天気に訊いたんだ。


「ああ、さっきから聞こえていた音は、恐らくこの音だろう」


足元にある水溜りは一見ぜんぜん動いていないように見えたんだけど、顔を近づけてみてみると、微かに水面を波立たせていたんだ。


なんだか面白いじゃないか。スーっていう綺麗な音が多分鳴っているんだ。


だからぼくは、夢中で辺りを掘っていった。



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