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赤い砂漠
「何があったって言うんだ!」
おじさんは叫んで、空気穴の枠に、拳を打ちつけた。
手にしていた瓜が割れた。
が、しぶきも上げず、下部に滴り落ちる程度の水滴が絞られただけだった。
「・・・どういうことだ?」
なんていいながら、おじさんは瓜の尻に食らいつくと、たちまち咽喉に手を当て、苦い顔を精一杯僕に向けたんだ。
苦さに血の気が引いていたんだと思うけど、すごい勢いで血潮が眉間を駆け上がっていくのが見えた。
それで、かすれた叫び声が、地下に響き渡ったんだ。
「どういうことだ!」
らくだ口の、あの笑いが聞こえていた。
徐々に遠ざかっているのがわかったよ。
「続きはまた今度。それまでご達者で、ぁたしゃぁんたらの無事を、心から願っておりますよぉ!」
僕はいつの間にか足元を埋め尽くしていたたくさんの瓜の中の、一番色の濃いやつを選んで、思いっきり握りつぶしてみた。
瓜は見かけによらずスカスカで、すぐにつぶれ、変わりにエスプレッソ用のカップを一杯にできないくらいの水滴がこぼれるだけだった。
僕はあわてて瓜のお尻に吸い付いた。
途端に口の中に、ひどい苦味が広がった。
ぼくの顔は、多分きっと、ひどく歪んでいたな。
らくだ口から買った瓜は、瓜は瓜でも、スカスカで、苦ったらしい、カスばっかり一杯でる、ニガ瓜だった。




