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赤い砂漠

「もしかして、幽霊でも出るの? 僕、さっき幽霊の正体突き止めたよ。あれはきっと光だね。絹の薄布みたいな光がなびいて、おっかなびっくりしたい人たちを驚かせているに違いないよ」


そういえば、ぜんぜん気付かなかったけど、夜だからか、地下だからなのか、ピラミッドの中は、いたって快適だったんだな。


僕は砂山に腕を突っ込んでひんやりした感触を確かめていたんだけど、あわてて引き抜くことになった。


おじさんが砂山を踏みつけてきたんだ。


「おれ達はここのことを、赤い砂漠、としか聞いていない」


「そうですか、確かに、赤いですなぁ。でも、赤いのは、砂漠ではぁりません。ピラミッドそのものが赤いんです。正確には、赤い砂岩が積まれてできたピラミッド。しかも、未完成と来ている。」


「未完成?」


「ええ、先程は半壊していると言ってしまいましたが、それは、ぁたしがミスタ・レイクの仮説を信じているからに他なりません」


「仮説? ピラミッドは未完成ではなく、完成したものが壊れたのだと、ボスは考えていたのか」


「定説では、ここには相当な規模の、わかりやすく言えば王族クラスの墳墓が建設される予定だったのですが、大規模且つ、特別な砂岩を使用したことから費用が嵩んだこと、また、ちょうど王政の転換期でぁったことなど、何らかの事情が重なり、結局建設を断念したってことになっています。根拠としては、王族クラスの墓標でぁるにもかかわらず、柩の間にまったく文明文字が刻まれていなかったことが挙げられています」


 

おじさんは暫く考え込んでいたんだ。


なんとなくいつの間にか正気を取り戻していたみたいで、結構うっすら見える顔が、精悍な感じに見えた。


「要するに、ボスは、その仮説を立証できないまま、定着させられないまま、視力を失ったって言うことだな?」


「まぁ、そんなところです。ミスタ・レイクは熱心な方でね、もうすっかり見なくなりましたが、彼は自ら遺跡に入り、発掘をする、現場にこだわる学者でした。今思えば、他の弛んだ頬をしている学者のように、現地人を雇い入れて、大掛かりな作業をしていれば、もう少し有力な手がかりが発見できたのかもしれませんが、もう後の祭りでさぁ」


「定説が未完成となっているのは、ボスの仮説を証明する証拠が出てこなかったからか」


おじさんは何処かに隠してあった瓜を取り出してから


「ボスが視力を失ったから、仮設を立証できなくなった。これは筋違いだな」


「ええ」


「たとえボスが死んだとしても、他の誰かがそれを立証しようとしたはずだ。当時は信奉者も多くいたようだしな」


「そういうことです。が、それができなくなっちまったんでさぁ」


らくだ口は自嘲気味に笑い、なんとなく間を置いてから


「見えないでしょうねぇ」


なんてため息交じりの声を出した。


「ここは、不気味ではぁった。確かにねぇ。でも、ぁたしぁ、黄色い砂漠に浮き出した巨大なこの墓標に、少なからず惚れていたんでさぁ」


「何があったって言うんだ?」」


瓜を丹念に拭く手を休め、おじさんは聞いた。


「・・・おっといけねぇ、もう日が昇っちまう。ぁたしゃ日が昇るうちに家へもどらにゃならんのですよ。今頃家族が、首を長くして待っているに違いねぇんだ」


らくだ口はなんとなくあわててそういった。


らくだかなんかの蹄鉄が砂に埋まるような音が聞こえると同時に、外に微かに感じ取れていた人の気配が消えた。


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