赤い砂漠
「た・だ・し」
なんてわざとらしい声におじさんの精一杯の声が掻き消された。
「ここはぁたしの隊商ルートの最終地点でして、はじめ万全に取り揃えていた品物も、殆ど売り切れてしまいます」
らくだ口は、早口で、
「水も、食料も、らくだも」
なんて言い連ねた末、
「売れ残っているものといえば・・・そうさねぇ、今ぁなたが手にしている瓜くらいのもんなんでさぁ」
らくだ口はらくだにまたがっているに違いなかった。
でも、それ以外にわかることなんてなにもなかったんだ。
「おい隊商。この瓜、後何個残っている」
「はい、今回はひどいもので、大量に売れ残ってしまいやした。ざっと見積もって、五十はぁるでしょうか」
おじさんは握り締めてくしゃくしゃになった紙幣を一枚空気口に差し入れると
「これで全部くれ」
なんて気前のいい感じを出したんだ。
すると、
「さようでございますか、まいど、ぁりがとうございます」
なんて急にらくだ口の態度が変わったんだ。
でも、
「おつりはきっちり払ってもらうぞ」
なんておじさんが言ったもんだから、暫くの間、空気口の付近に沈黙が下りたんだ。
僕は気が気じゃなかったな。
だって、せっかく誰かが外にいて、万一助けてくれる状況になるかもしれないってのに、おじさんのけち臭い一言で、それを台無しにされたんじゃたまったもんじゃないだろ?
「申し訳ぁりませんが、お釣りはございません」
空気口の外から聞こえた次の声は、そんなことをきっぱり言っていたな。
らくだ口はさも申し訳なさそうにそういったんだ。
「ふざけ―――」
「で・す・が」
って声でやっぱりおじさんの声は塞がれた。
「お釣りをお返しできない代わりに、その分取って置きの情報をお耳に入れましょう」
あの笑いをはばからずやって見せると、らくだ口は意味ありげにそういった。
「情報だって?」
おじさんの咽喉に唾が下る音が聞こえた。
「僕は、あの白いおじいさんが言ってた、死んでもほしいものってのが気になってるんだ。僕がほしいものでもあるっていってたし、実は、そのことをずっと考えていたんだよ」
「そのことでしたら―――」




