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門柱に辿り着いたぼく達は、立ち止まらないまま大分先まで見渡せる草原地帯の急勾配を駆け上がった。


実際僕がしていたことといえば、ジェラールの足がつくたびにお腹に来る振動に耐えることくらいだったんだ。


彼の後ろにはユダを含めて三人がついてきていた。


僕にはどれがユダだかわからなかった。


辺りはそれくらいの暗闇だったんだな。


でも、分厚い雲から搾り出された僅かな光が、夜露をためた草原を銀色にきらめかせたりしていた。


草原は初め気味が悪いくらいのまだら模様だったんだけど、上にいけば行くほど毛並みが整ってきて、吹く風にも行儀よくそよいでいた。


「ねえあなた、結婚してくれる?」


ジェラールが躓いて投げ出された僕は、腰から地面に落っこちていたんだ。


「ねえ、あたしをお嫁さんにしてくれるんでしょ?」


草原のクッションに助けられて頭はそれほど強く打っていないはずだったんだけど、起き上がると視界が一面ピンクの花びらで覆われていた。


「さあ、立ち上がってお顔を見せて」


頭を締め付けていた何かが取り除かれると、自然に頬にちっちゃな手が差し伸べられた。


僕は咳き込むくらい甘い匂いに頭がやられちゃったらしく、その子の顔なんかをボンヤリと見上げながら立ち上がったんだ。


「あたしはルーディー。あなたは?」



青白いくらいの肌に真っ赤な短髪を微かに揺らしながら、その子は僕の瞳を楽しそうに覗き込んできた。


目を離さなくても、ルーディーの口にたくましいひげが着いているのはわかった。


ひげは真っ黒で、不自然に直毛だったんだ。


「やわらかいねルーディー、君の手は本当に柔らかい。僕は・・・スミシーって名乗ってる、よろしく」


なんとなく自分で気取っているのには気付いていたんだけど、その方が彼女の手をとり、甲に口づけするには都合が良かったんだ。


「失礼なことをしちゃったね」


「いいのよ、気にしないで。でも結婚はしてね」


ルーディーはおっきな瞳を細め、如何にもなれていないような笑顔を作って見せた。


彼女は捲りあがったスカートをゆっくり下ろすと、僕に背を向け


「サンディの地へようこそ。あたしはルーディー・オブライト。何しに来たのかは知らないけれど、楽しんでいってね」


なんて女の子っぽいしぐさで言った。


「待ってくれ」


ユダが息も絶え絶えで追いついてきた。


「君は、俺たちが何しに来たのか聞かされていないのかい?」


彼は鬱陶しそうにフードを剥ぎながらルーディーを窺った。


彼女は


「ええ」


とだけ言ってすんなり肯いた。


顔の半分をフードに隠されて口元しか見えないジェラールは、振り向き、ユダと無言で何かを確かめているみたいだった。


「それなら君は、案内役を頼まれてもいないのか」


「・・・そういえばそんなこと、言われていた気がしないでもないわね」


少し頭の中を捜索してからルーディーは、再び振り返りながらそういい、


「でも、ここに知り合い以外が上がってくることなんてなかったから、それに、あたしは人が来るかもしれないとは聞いていたけれど、案内をしろだなんていわれてなかったもの」


言い訳をしているのに彼女はなんとなく楽しそうな表情をしているんだ。


「第一、そう聞いたのはもう一昔前のことだし」


「つまり、君は案内役ではないけれど、ぼく達を邪険に扱おうって気もないんだね?」


立ち上がり、お尻に付いた草の露を払いながらそういった。


「当たり前じゃない。あたしの旦那様になる人に意地悪なことなんてしたくないわ」


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