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魅惑のスープ

「ところでみなさん。私のスープの味はいかがなものでしょうか」


実は僕、僕だけじゃない、多分誰もがジョルジュの話なんかに耳を傾けていなかったんだな。


だって、何種類もの奇妙な色形をしている綺麗なきのこが入ったスープに夢中になっていたんだもの。


初めはおなかが空っぽだったから中身なんかに目もくれずに口に入れてしまったけれど、このスープ、見た目とは裏腹に大した味をしていたんだ。


僕、これでも舌には自身があるから間違いないよ。


お腹が空いていたのを差し引いてもジョルジュのスープは一品だったね。


というより、ぼく達を盲目的にさせる味だったんだ。


だからなのかはわからないけど、スープが皿からなくなってしまったら、ひどい喪失感を感じるんだ。


なぜだろう、満足感が一向に顔を出さなかった。


だから僕らは、何度も何度もお替りをもらって、その合間だけしか彼の話を聞いていなかった。


「光栄ですね。何杯もお替りしてくださって。大丈夫です。そうだろうと思いまして、大量につくり込んでおきました。ですからゆっくりと召し上がっていただいて結構ですよ」


彼は穏やかな微笑を湛えていた。


優しいおじさんなんだよ、きっと。

 

「―――少し待ってくれないか、スミシー、きのこが底に溜まっているから、一度掻き回したほうがよさそうなんだ」


そういってユダは、柄杓を取りたい僕を肩で制したんだ。彼の肩にあごを乗っけて、鍋の底を覗き込もうとしたんだけど、それすらさせてくれないんだ。


ユダってやつはわからないんだ。


どうして嫌がらせみたいなことをするんだろう。


「見たいのか? 食べたいんだろう?」


意地悪なんだな。


「どうして食べたい? おまえ、自分が何杯お替りしたのか覚えているのか?」


食べたいから食べたいんだよ。


僕はユダの声なんて聞きたくなかったんだ。


「第一、自分のおなかを見てみろよ。パンパンに膨れてるじゃないか」


お腹を突付かれる度に胸が苦しくなって、徐々にではあるけど、彼の声をまともに受け止められるようになった。


「ほらみろ、今にも吐き出しそうじゃないか。だが無理もない。とにかく、今はこのまま黙っているか、自分で決着を付けるんだ」


ユダは訳のわからないことを言って、さりげなく僕を鍋から遠ざけたんだ。


だから暴れてやろうと思った。


でもね、


彼はそんなこともお見通しだったんだな。


彼、鍋に駆け寄ろうとした僕のパンパンになったお腹を容赦なく叩いたんだ。

 

「何するんだよ・・・」


なんて言ってみたんだけど、多分声にはなっていなかったね。


苦しくって、咽喉からビックリするくらい大量の、肌理の細かい泡を発したきのこが飛び出してきた。


涙で前が見えないんだ。


頭に血が上って、首がちょっぴり太くなるくらい血管が膨らんだよ。




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