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欲望

気がついたらおじさんはぼくの汚れた服さえも剥ぎ取ろうとしていた。


勿論僕は抵抗したさ。


だって、あの時の僕の服はあれ一枚きりだったんだもの。


「やめておくれよ、ねえ、やめておくれったら!」


そう叫ばずにはいられなかったな。


咽喉が辛くて、痛くてもだよ。


でも彼は僕の言うことなんかに耳を貸さないんだな。


大分前から彼は自分の声しか聞こえないようになっていたんだと思うよ。

 

恥ずかしい話だけど、間も無く僕の下半身は晒されたんだ。


人前でそんな格好になったことがないから、僕は顔から火が出るくらいだったんだけど、なんとなく頭がボンヤリしてきて、だんだん声を出すのも億劫になってきていた。


ちょっと力も抜けてきていたんだと思うよ。


時々こっちを伺う彼の顔には、ひん曲がった純粋な笑顔がたたえられていた。


多分僕のお尻の穴に赤いスープがたらされたときだったと思う。


お尻が熱くてたまらないんだ。


僕は体をねじってみるんだけど、奥まで入り込んだスープは容赦なく皮膚を焼いて、だんだん力が入んなくなってきて、全身がゆるゆるになっていくような気がしていた。

 



僕は朦朧としながら、もどかしげにはずすのに手間取っているスラックスのベルトを強引に引くおじさんを見ていた。


おじさん、涎なんてたらしてやがんだな。

もう彼が僕の顔を見ることなんてなかったよ。


照準が一点に絞られてて、そこから視線が外せなくなっているみたいだった。


僕は熱さと寒さと痛さでちょっと痙攣していたから、自分のことを熱せられた鉄板の上に置かれた蓑虫みたいだなんて思ってた。

 

おじさんが最後に僕の顔を見たのは、体が覆いかぶさってくるときだった。


その重さに僕は咳き込んだんだけど、咽喉が痛くて仕方なかった。


彼は覆いかぶさってきた勢いのまま一瞬うめいて、目を飛び出すぐらいひん剥くと、すぐに瞼を閉じてしまった。

 


僕は薄れ行く意識の中にアンワルとティラードの姿を見つけていたんだ。


おじさんが僕の上から転げ落ちたその先にね。


アンワルのやつが、こげが厚く覆っている鍋を手に持っていたのを憶えているよ


―――ほら、サミーラが作ってくれたスープが入っていた鍋さ。


でもね、


そこから先が思い出せないんだな。


どうやら僕、また気を失ってしまったらしいんだ。






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