綺麗な音
がっかりしちゃったんだ、申し訳ないけれどね。
暗闇を抜け出たところを照らしていたのは、太陽の光じゃなく、蛍光灯のそれだったんだな。
こっちが勝手に思い込んでいたんだから仕方ないんだけど、やっぱりがっかりしちゃったよ。
「この辺にするか、おまえはおまえ、目立たんようにすわっとるんじゃ」
どのくらい歩いただろう。
少し肩を落としていた僕にささくれが目立つ水筒を差し出したアンワルは、気付いていない風を装っていった。
ぼく達はいつの間にか少しだけほかより明るい薄ボンヤリとした蛍光灯に支配されている街頭の隅っこに来ていた。
僕はアンワルの言うことが理解できなかったんだ。
なぜって、彼は湿って黒光りしている固いアスファルトの上の、何の目印もない、勿論椅子なんてあるはずもないところに坐れって行ったんだもの。
思わずもう一度聞き返しちゃったほどだよ。
でもアンワルはやっぱりそこへ坐れって言うんだな。
それで、自分が手本になって先に腰掛けて見せた。
何の気なしにそういうことをやれちゃうんだ。
ちょっとうらやましくなって僕も急いで隣に座り、彼と同じように片方の手の親指を噛みながら、もう片方の手に持った何も入っていない水筒を正面にかざした。
気が遠くなるほど時間が過ぎた気がしたね。
アンワルはその姿勢のまま―――
正確には、爪を噛んだ歯をぎりぎりと揺らしながら、一向に動く気配も見せずにただじっとしていたんだ。
僕は肩の感覚がなくなってきて
「ねえ、これはいったい、何なんだろ? 面白いのかい?」
こう訊かずにはいられなかった。
街頭は夜も深いというのに比較的人通りが多かった。
派手な服を着飾った人や、やたらと胸が肌蹴た服を見せ付けるように着た厚化粧の少女や、顔色が全く伺えない石みたいな服を着た人や、きちんとした身なりをした親子とかが交互にぼく達の前を横切った。




