恥ずかしくなるくらいの
「あたしゃ、こんな細いガキ、拾ってくるなんて関心せんね」
腕を組んだ中年くらいの人がそういうんだな。
でもその人も僕に気持ちのいい笑顔を向けていた。
「んでもな。あそこに放られたままじゃよ?」
始めの笑顔の人がそういって中年くらいの人の顔を窺うんだな。
段々視界がはっきりしてきて、その人が真っ白な頭をしたおじいさんだってことがわかった。
「そうじゃ。あそこであのままこいつに行き倒れられちゃ、俺たちまであそこにおれなくなっとった」
その声の主は、僕と同じくらいの年代だと思うんだけど、こういっちゃ何だけど、びっくりするほどみすぼらしい格好をしていたんだ。
「そんでもな、わざわざここまで連れてこんでもええべさ。地下鉄の外に放っちまえばすむことだ?」
中年の人は、どうやら女性なんだな。
けど、あんまり他の二人と違いがわからなかった。
唯一女性らしいところって言えば、ぼろぼろに擦り切れた黄色いスカーフを首にしているところくらいだった。
僕は痛む頬を押さえながら起き上がった。
それで、驚いたね。
その人たちは僕の様子を窺うために屈んでいるんだと勝手に思い込んでいたんだ。
けど、そうじゃないみたいなんだな。
その人たちは、屈んでいなくちゃならなかったみたいなんだ。
正確には、背筋を伸ばして立つことができなかったんだ。
なぜって、それくらい天井が低かったからなのさ。
それに、横幅も狭かった。
僕を含めた四人は、そんな窮屈なところにいたんだ。
「ここはどこなんだろ? ぼくはどうして? おじさんたちは?」
僕は片目を瞑って頬を擦りながらそう聞いた。
「坊やは、地下鉄の改札に向かって突進していったんだ。憶えてないんかい? あきれたね。見てるこっちはハラハラもんだったよ」
そう答えたのはおばさんだった。
「何をしていたんだい? あんなに頭を振っちまって。まるで気違いだったじゃないか」
「ちょっと夢中になってしまったんだよ。いつも、ああ、なわけじゃないんだ、決してね。だから心配しないで」
僕はそう言って肩を竦めて見せた。
「あたしゃ、坊やの心配なんて、これっぽっちもしてなかったね」
よくわからないけど、おばさんはやけに照れているようで、腕を組みながらそっぽを向いて、遠くへ行っちゃった。
「サミーラはいつもあんな感じなんじゃ、笑えるじゃろ?」
そういった少年は笑った。
ぼくも笑ったんだけど、おばさんがおかしかったんじゃないんだな。
僕は、専ら少年の眼鏡に笑っていたんだ。
窮屈な室内は尋常じゃなく湿度が高いようで、ぼく達全員髪がぬれていたんだ。
それに、室温もランプのおかげで少しは高かったから、少年の眼鏡は本当に真っ白になっていたんだ。
見せてやりたいくらいにね。




