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もったいぶる光

僕の持っている病気は数知れないんだけど、その中でも一番厄介なのが、飽きっぽいって事なんだ。


退屈が何より我慢ならないんだよね。


それを打ち破れるのなら、僕は何だってやっちゃうんだよ。


街灯の燈を辿っていた僕は、やっぱりその病気が顔を出してしまったんだな。


仕方ないんだよ。


だって、

街灯は道に沿って、気が遠くなるほど続いていたんだもの。


嫌になっちゃうよ。


でも、

いい事だってあったんだ。


僕は少し身軽になっていたし、大分歩いたおかげで随分暗闇に慣れ始めていたんだな。


それで、僕は思い切って街灯の明かりの外へ出ていくことにしたんだ。


ちょっと街灯が憎らしくなっていたところだったしね。


だから最後の街灯をやり過ごすとき、僕はそれを力の限り蹴っ飛ばしてやったのさ。


笑えたね。


根元は頑丈で微動だにしていないように見えるんだけど、頭を垂れる先っぽは、ちょっと地震が来たときくらい揺れるんだ。


震えているんだよ、きっと。


案外笑えたね。


それで僕は、街灯にサヨナラしたんだ。


おかしかったから、却って名残惜しくなっちゃっていたんだけど、実は、その時には既に次の目標を見つけていたんだな。


その目標って言うのは、下から凄い突風を噴出す地下鉄への入り口だったんだ。


実は僕、

ずいぶん前から手足の感覚を無くしていてね。


それで、取り敢えず避難できるところが欲しかった。


夜遅くでもその時は地下鉄が空いていたんだな。


僕はそこから吹き出す、生臭いけど暖かい風に押されていると思っていた。


でも気付いたら、そこへ吸い込まれていたんだ。


それは、どうしてなのかはわからないけど。


敢えて言うなら、そこはやっぱり明るかったし、第一に暖かかったからね。


地下鉄のホームへ行く途中には、結構長い地下通路があった。


電燈がついていたことはついていたんだけど、何年も取り替えていないんだろう、嫌に黒ずんだ黄緑色の光を出しているんだ。


でも僕がもっと嫌だったのは、その電燈が何度と無く不定期に点滅していることだった。


光を灯すのをもったいぶるんだよ。


僕はそれを見ているだけで気が急いてきてね。


目を何度もしばたかせたりした。


何度も瞬きを繰り返すと、視界が活動写真みたいになるだろう?


僕はそれが面白くなっちゃって、頭を振りながら何度も何度も目をしばたかせた。


電灯が切れそうで小刻みに点滅していたから、余計にそれが上手くいったんだな。


それで、天井が下になったり、地下通路の脇で寝ている汚い格好をした老人や子供達が飛んで見えたりした。


僕は目がチカチカして気持ち悪くなっても止めなかった。


次第に地下鉄の改札が見えてきて、駅員さんみたいな人が近づいて来たんだ。


勿論駅員さんは逆さになっていたり、横の壁を歩いてきたりした。


ぼくはそれでもやめられないんだな。


実は、

これも病気の一つなんだ。


僕は楽しいことを見つけてしまうと、時間を忘れてしまうのさ。


首を振るのに精一杯で、その時は足を蟹股にしながら進んでいたんだ。


確かに、

傍から見たら結構な格好をしていたと思うよ。


でもそんなことには気付かないじゃないか、その時は。


だからやめなかった。


それで、

駅員がどんどん近づいてくる。


悪いやつなんだ。


ネクタイなんか締めちゃってさ。


紺色にオレンジと赤のラインが斜めに入っている帽子は中々なんだけど、差し伸べられる手が、如何にも横柄だったんだな。


勿論僕は、そのまま進んでいった。


実のところ、その時にはもう、目の前が捩れてしまって何も見えていなかったんだ。


怖いね、病気って。それで僕は、真っ暗闇の中、ある種の直接的な衝撃を被ることになったのさ。


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