行く先
僕はユダの質問に答えられないでいた。
だってスミシーって言うのは、僕の本当の名前じゃないんだもの。
「今から行く選定場の血族は、オブライト一族っていってな。相当変わり者の一族らしい。この国が始まる前から存在しているらしくてな、純粋に直系血族だけで成り立っているって話だ。少なくとも三百年間、社会との関係を持っていなかったらしい。三百年だぜ?」
ユダの声が少し上ずっているんだな。
僕はそれが心配だった。
「何処かの王族の末裔らしい。こんなうまい話、あるとこにはあるもんだな? 世間知らずの一族が、血縁選定だなんて」
ユダは鼻で笑っていた。
「でも、その一族って、三百年も他から家族を迎えなかったんでしょ? それなのにどうして外から家族を探そうって思ったんだろ? だってそうだろ? そんなの、見つからないに決まっているじゃないか」
「そこが今回の味噌なんだ」
ユダは舌で唇をなぞった。
「これは噂だが、三百年の歴史を誇るオブライト一族も、次第にその数を減らしていったんだとよ。何しろ、直系のみで一族を構成していたらしいんだから。無理もないよ。それで、仕方なく血縁限界を広げようってことになったって分けさ。要するに、はじめからおれ達の中に、オブライト一族の血を引くものなんかいないって事を知っていながら、選定をやることになったってことさ」
僕はなんとなくでしか理解できなかった。
僕はあんまり人の話を真剣に聞けない病気を持っていたんでね。
それでも、そのオブライト一族ってのを少しかわいそうには思えたんだ。
それきりユダが話さなくなったのは、次第に霧が晴れてきたってのもあるんだけど、その先に松明かなんかの灯りが見えてきたからなんだ。
それで、その燈が明らかになっていくと共に、今まで霧に隠されていた城壁が見えてきたんだな。
僕は勿論、口をあんぐり開けて、それを見上げた。
「一つだけ言えることは」
ユダがそういったのは、ぼく達が閉ざされた城門の端にある小さなドアから城内へ入っているときだった。
「一つだけいえることは、狂った世の中になっちまったってことさ」




