仲違い
「あれは?」
ぼくらはわざわざ冷風が吹き付けるほうへ足を運んでいた。
しらみつぶしに進んでいたもんだから、そこだけ飛ばすことなんてできなかったんだ。
「アレは送風機の口だろう。中はきっと埃だらけだぞ」
嫌な顔までしてユダは冗談をいった。
「おれはそっちへは行きたくないね」
「おれ達はなんのヒントも持っていない。だが幸い、クーベルタンが用意してくれていた粉のおかげで、どうやら道に迷うことはないようだ」
ジェラールはユダを諭した。
「そいつと行動するのがいやだって言ってんだ」
彼はちょっとシャに構えて、とうとう歩くのもやめてしまった。
だから仕方なくみんなも歩を止め、暗闇の中のユダの顔なんかを窺ったんだよ。
「・・・それなら、お前とはここでお別れになるな」
なんてジェラールが言い出したもんだから、
「何言っているのさ。ついさっきみんな一緒にいるって話がまとまったばかりじゃないか」
ぼくは慌てて彼に駆け寄った。
「そいつの何がそんなに気に入ったんだ?」
ユダが皮肉っぽくそう訊くと、ジェラールは、
「彼の何がそんなに気に食わん?」
となんだか悲しそうに答えた。
「おれより、そっちの新入りのほうを選ぶんだな?」
「選ぶ? おれ達には彼が必要だと判断したからいてもらっているんだ」
「おれは必要じゃないんだろ?」
ユダの問に、ジェラールは口をつぐんだ。
そして
「わからんやつだ」
と言い捨てると、一人で冷風口のほうへ歩き出した。
それにラバが続き、クーベルタンも振り返りながら無言で続いた。
ぼくも仕方なく続いたんだ。
それで振り返って、次は君の番だよってユダに知らせた。
でも彼はうつむいたりして、その場を動こうとしなかった。
「スミシー!」
松明の陰が見えなくなるころ、ジェラールは奥でそう叫んだ。
実際ぼくは立ち止まって、やっぱりユダのほうへ戻ろうとした。
「来るな!」
でもユダはぼくを寄せ付けず、何故か少し落ち着いた感じで、
「お前はジェラールたちと一緒にいるんだ」
なんていったんだ。
「でも、ジェラールには、ラバやツェッペリンだって付いているんだ。なのに君には・・・」
それ以上近づかせてもらえず、ぼくは立ちすくんでいたけど、彼はなんだか笑っているように思えたから、ますますどうしていいのかわからなくなった。
「スミシー、来るんだ!」
ジェラールの声が着々と遠くなっていた。
きっと立ち止まらずに進んでいるんだろう。
「さあ、いってやれ」
ぼくがジェラールの声に気をとられていると、ユダは徐に、
「俺は一人で大丈夫だから」
といって影に溶け込んでしまった。
だからぼくは急いで彼が立っていたくらいの場所まで走ったんだ。
でももうそこには何も無かった。
息遣いが聞こえているようにも思えたんだけど、松明の明かりには、ごつごつした壁しか移らなかった。
「ユダ! いるんだろう? 出ておいで? 出ておいでよ!」
ぼくは叫んだ。
でも、その音も、壁に何度も跳ね返り、徐々に吸収されていった。




