浜辺の兄弟
すると青年は結構深刻な顔をして、
「そうか・・・」
と呟くと、
「それで、車も・・・」
なんて妙に一人で納得してみせて、もう一本串を差し出してきたりなんかした。
「行くところがないのか?」
彼はいくつかの質問を飛ばしてそう聞いた。
ぼくは実際、そんなことを聞かれたことがなかったし、改めて考えたことがなかったから、何も思いつかなくって、取り敢えず肯いてみることにしたんだ。
そしたらやっぱり彼は深刻そうに
「そうか・・・」
なんて呟いて、次の言葉を見つけようとしていた。
「嘘だよ、きっと近くからちょっと遠回りして来たに違いないんだ」
ヨークと呼ばれた少年は、ぼくを見ながら青年にそういったが、
「ヨーク・・・お前は生まれて漸く十になったばかりだろう。十年なかったことが、十一年目に起こることなんていくらでもあるんだ。よく覚えておけ」
青年はそういってぼくと同い年だと判明したヨークを諭した。
「なら、兄ちゃんは、砂漠のほうから来た人間にあったことがあるのかい?」
少年はいじけてそう訊いた。
「・・・いや、おれもない。しかしそれより以前のことはわからないからな」
「なら、砂漠からは人は来ないのと一緒じゃないか」
少年は食い下がったが、青年は、
「とにかく、お前はこいつと仲良くするんだ、いいな?」
なんてわけのわからないことを言ってごまかした。
「あんたも見たところヨークと同じくらいだろう? 意地っ張りなやつだが、悪いやつじゃない。仲良くしてやってくれ」
「ぼくは仲良くなんかしないからな」
ヨークはそういって波打ち際のほうへ掛けていってしまった。
それを目で追っていた青年は、
「すまん。あいつは人と接したことが少なくってな。気付けば人見知りになっちまった」
静まりかけた火を棒でおこしながらそういうと、
「俺は、シルベスタ」
そういって、チラッとこっちにはにかんできた。
ちょっと潮に焼けた、素敵な感じの笑顔だった。
彼は徐に立ち上がると、
「疲れが取れるまででも、家にいるといい」
といってくれた。
それで、
「近くに我が家があるんだ。狭いが、そこには毛布もあるぞ」
なんていって、一人で勝手に歩き出した。




